81 / 604
ブートキャンプへようこそ♪
PHASE-11
しおりを挟む
――――あ~。
「耳の奥がキンキンするニャ……」
シナンさん。可愛らしく猫耳を動かしての代弁、ありがとうございます。
付け加えるなら、頭もクラクラする。
この銃の大音は何とかしてもらいたいもんだ……。
――――全員、撃ち終えた後は、顔を引きつらせて、耳を揉んでいる。
そして、なんと、一番命中させたのが僕という……、おかしな状況。
射撃の才能でもあるのかな? 公務員には全くもって必要ないけども。
「次の説明だ」
終わると、淡々と進めていく百人長。
ああ、そう言えば、この片方だけ耳当てがついてる代物の説明がまだだったね。
慣れたもので、僕が、最初に何でもやる事になっている――。
指示を受けて、手渡された右耳にだけある、耳当てみたいな物を付ける。
付けると、百人長が右手を挙げた。何かしらの合図のようだ。
『こちらレーヴェ。聞こえるなら返答を、オーバー』
ふぇ!? 耳当て部分から声が聞こえてきた。
どうやら、離れた位置にいる。獅子の獣人の方の声のようだ。
僕の、カグラさんに言うぞ発言で、恐々としてしまって、聞こえる声は震えが混じっている。本当に申し訳ないと思ってます。
――じゃなかった。え~と、ようはこれは魔石鏡を応用した代物かな。
顔は映らないけど、声だけでやり取りをする道具のようだな。
『ゴアヘッド』
あ? なんだ、ごあへど?
さっきから何だ。オーバーだ、ごあへどだ? 専門的な言葉を使うな。自分たちが当たり前でも、周囲では当たり前じゃないってのはよくあるんだぞ。
「返信するんだ」
と、百人長がジェスチャーで教えてくれる。耳当ての上部分にあるボタンを押す。
ツーって音が発生した。
「あ~聞こえます」
「言い終えたら、オーバーって付けろ」
「オーバー」
『了解。通信テスト良好。アウト』
「アウト」
「それは言わんでいい」
いや、だからね。知らないから。言わなくていいとか言われても。オーバー?
『あの……』
「ん?」
獅子さんがなんか、言いたげだ。
「どうした?」
通信は今ので終わりのはず、なのに僕がまだ続けるような所作だったから、百人長が通信機を取り上げようと、近づいてくる。
『二人で少し……』
語気は暗い。僕は掌を百人長に見せて、制止を促した。百人長、獅子さんの方向に目を向けている。
見える位置でもあるから、呼びつけようとしているが、獅子さんの拝む姿に何かあると察し、少しの間、時間を与えてくれるようだ。
――――。
「なんです?」
皆から少し離れた位置で、通信機を介して話す。
『自分。ジャジャイ・カテューと言います』
うん、本当にさ、最初の頃の迫力がなくてね……。完全に僕が悪いよね……。
「で、そのジャジャイさんが僕に何のご用でしょうか?」
ついつい、公務員丸出しな、事務的な返しをしてしまい、感情がこもってなかったようで、相手からしたら、木で鼻をくくる行為と思われてしまったようで、耳当ての部分から、はっきりと緊張から来る唾を飲み込む音が聞こえた。
『ウィザースプーン様。炎竜王様に自分の問題発言を告発する事は本気でお考えなのでしょうか……』
様て…………。
「ですので、じょうだ――」
『自分ですね!』
最後まで言わせてくれる……。
『婚姻したばかりでして、まあ、顔は美人って訳じゃないんですよ。ただ、何というかフィーリングってやつですかね? そいつといると、安心すると言いますか。一緒に笑って、泣いてくれる、いい女なんです』
それはよかったですね。
で?
『それと――――お恥ずかしい事に、できちゃった結婚でしてね。今年中には父親になるんですよ』
「それは、おめで――――」
『ですので!』
おい、断つなよ。台詞を――、
『もし、炎竜王様に問題発言が知れたら、自分、どうなるのかと……かねてより、王都の整備局の方々とは懇意な関係と窺っており、何かあれば馳せ参じるとまで聞いております』
まあね、それは嘘じゃないよね。本人も言ってるし。実際、邪神が来た時、直ぐに察知して来てくれたもの。
『お怒りを受ければ、自分、粛正されるのではないかと……。きっと、目を向けられただけで、滅却なんて事も……』
カグラさんをどんな風に思ってるの? 化け物みたいに思ってます? すっごい美人様ですから。目を向けられたら滅却じゃなくて、心奪われますからね。
『もし、粛正を避けられたとしても、ここでの職を解かれれば、家族を養うのも難しく、生まれてくる子供に苦労を…………お願いです! ウィザースプーン様! 食っちまうぞ発言はなかった事にぃぃぃぃ! 平に、平にご容赦を! ご慈悲を!』
この方は、人の話を聞くという事をしないのだろうか……。
どちらかというと、僕の方が、あの発言をなかった事にしたいわけですよ。
「気にしないでください。僕はカグラさんにも言わなければ、あの時の事は一切、誰にも口にしないので」
『本当ですか!』
耳当ての部分からの大声で、鼓膜が壊れそうになる……。
「本当の本当です」
『ああ……ウィザースプーン様は、歴史上の誰よりも大徳な御方だ~』
泣かないでいただきたい。カグラさんに言いつけてやる発言を口にした者にとって、大徳って言葉は対極の言葉ですから……。
このままだと、自分が小物だという事に向かい合わないといけないので……、これ以上、僕を追い込まないでいただきたい。
「じゃあこれで――」
『ありがとうございます! ありがとうございます! ありが――――』
「通信終わり。アウト」
聞いてると、永遠と続きそうだったので、無理矢理に終わらせた。
長い息をついて体を弛緩させる。
ほぼほぼ一方通行の語りに、疲れてしまった…………。
「耳の奥がキンキンするニャ……」
シナンさん。可愛らしく猫耳を動かしての代弁、ありがとうございます。
付け加えるなら、頭もクラクラする。
この銃の大音は何とかしてもらいたいもんだ……。
――――全員、撃ち終えた後は、顔を引きつらせて、耳を揉んでいる。
そして、なんと、一番命中させたのが僕という……、おかしな状況。
射撃の才能でもあるのかな? 公務員には全くもって必要ないけども。
「次の説明だ」
終わると、淡々と進めていく百人長。
ああ、そう言えば、この片方だけ耳当てがついてる代物の説明がまだだったね。
慣れたもので、僕が、最初に何でもやる事になっている――。
指示を受けて、手渡された右耳にだけある、耳当てみたいな物を付ける。
付けると、百人長が右手を挙げた。何かしらの合図のようだ。
『こちらレーヴェ。聞こえるなら返答を、オーバー』
ふぇ!? 耳当て部分から声が聞こえてきた。
どうやら、離れた位置にいる。獅子の獣人の方の声のようだ。
僕の、カグラさんに言うぞ発言で、恐々としてしまって、聞こえる声は震えが混じっている。本当に申し訳ないと思ってます。
――じゃなかった。え~と、ようはこれは魔石鏡を応用した代物かな。
顔は映らないけど、声だけでやり取りをする道具のようだな。
『ゴアヘッド』
あ? なんだ、ごあへど?
さっきから何だ。オーバーだ、ごあへどだ? 専門的な言葉を使うな。自分たちが当たり前でも、周囲では当たり前じゃないってのはよくあるんだぞ。
「返信するんだ」
と、百人長がジェスチャーで教えてくれる。耳当ての上部分にあるボタンを押す。
ツーって音が発生した。
「あ~聞こえます」
「言い終えたら、オーバーって付けろ」
「オーバー」
『了解。通信テスト良好。アウト』
「アウト」
「それは言わんでいい」
いや、だからね。知らないから。言わなくていいとか言われても。オーバー?
『あの……』
「ん?」
獅子さんがなんか、言いたげだ。
「どうした?」
通信は今ので終わりのはず、なのに僕がまだ続けるような所作だったから、百人長が通信機を取り上げようと、近づいてくる。
『二人で少し……』
語気は暗い。僕は掌を百人長に見せて、制止を促した。百人長、獅子さんの方向に目を向けている。
見える位置でもあるから、呼びつけようとしているが、獅子さんの拝む姿に何かあると察し、少しの間、時間を与えてくれるようだ。
――――。
「なんです?」
皆から少し離れた位置で、通信機を介して話す。
『自分。ジャジャイ・カテューと言います』
うん、本当にさ、最初の頃の迫力がなくてね……。完全に僕が悪いよね……。
「で、そのジャジャイさんが僕に何のご用でしょうか?」
ついつい、公務員丸出しな、事務的な返しをしてしまい、感情がこもってなかったようで、相手からしたら、木で鼻をくくる行為と思われてしまったようで、耳当ての部分から、はっきりと緊張から来る唾を飲み込む音が聞こえた。
『ウィザースプーン様。炎竜王様に自分の問題発言を告発する事は本気でお考えなのでしょうか……』
様て…………。
「ですので、じょうだ――」
『自分ですね!』
最後まで言わせてくれる……。
『婚姻したばかりでして、まあ、顔は美人って訳じゃないんですよ。ただ、何というかフィーリングってやつですかね? そいつといると、安心すると言いますか。一緒に笑って、泣いてくれる、いい女なんです』
それはよかったですね。
で?
『それと――――お恥ずかしい事に、できちゃった結婚でしてね。今年中には父親になるんですよ』
「それは、おめで――――」
『ですので!』
おい、断つなよ。台詞を――、
『もし、炎竜王様に問題発言が知れたら、自分、どうなるのかと……かねてより、王都の整備局の方々とは懇意な関係と窺っており、何かあれば馳せ参じるとまで聞いております』
まあね、それは嘘じゃないよね。本人も言ってるし。実際、邪神が来た時、直ぐに察知して来てくれたもの。
『お怒りを受ければ、自分、粛正されるのではないかと……。きっと、目を向けられただけで、滅却なんて事も……』
カグラさんをどんな風に思ってるの? 化け物みたいに思ってます? すっごい美人様ですから。目を向けられたら滅却じゃなくて、心奪われますからね。
『もし、粛正を避けられたとしても、ここでの職を解かれれば、家族を養うのも難しく、生まれてくる子供に苦労を…………お願いです! ウィザースプーン様! 食っちまうぞ発言はなかった事にぃぃぃぃ! 平に、平にご容赦を! ご慈悲を!』
この方は、人の話を聞くという事をしないのだろうか……。
どちらかというと、僕の方が、あの発言をなかった事にしたいわけですよ。
「気にしないでください。僕はカグラさんにも言わなければ、あの時の事は一切、誰にも口にしないので」
『本当ですか!』
耳当ての部分からの大声で、鼓膜が壊れそうになる……。
「本当の本当です」
『ああ……ウィザースプーン様は、歴史上の誰よりも大徳な御方だ~』
泣かないでいただきたい。カグラさんに言いつけてやる発言を口にした者にとって、大徳って言葉は対極の言葉ですから……。
このままだと、自分が小物だという事に向かい合わないといけないので……、これ以上、僕を追い込まないでいただきたい。
「じゃあこれで――」
『ありがとうございます! ありがとうございます! ありが――――』
「通信終わり。アウト」
聞いてると、永遠と続きそうだったので、無理矢理に終わらせた。
長い息をついて体を弛緩させる。
ほぼほぼ一方通行の語りに、疲れてしまった…………。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる