拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ブートキャンプへようこそ♪

PHASE-13

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「ふぅ~」
 あんな方々と戦うのか。飛行能力って、ずるいな~。
 
 やっぱり、空飛べるっていいよね。こっちってアクシャイさんだけかな――飛べるの。あっちは最低でも五人いるわけだ。
 いや――――、こういう時は、最悪の事態を考えないといけないだろうから、五十人が五十人とも飛翔能力あるって考えるか……。
 そう考えたら、絶望しかないんだけど……。
 
 とりあえず、地図に、何とか目印になりそうな物と照らし合わせつつ、わかりやすい場所だけでも、地図に記入していく。 

「どうです? そちらは?」
 僕同様に、地図に悪戦苦闘してるかなと、少し離れた位置のロウさんに大声で聞いてみる。
 こんな時、通信機使えたらいいのに、実習戦まではお預けだ。

「一応、自分たちの匂いをマーキングしときました」

「え!?」
 マーキング……、だと…………。
 よからぬ事が脳裏によぎる。それってつまりは、雉撃ちや、お花摘みって事じゃないよね。まだ、ロウさんは分かるけども……、え、シナンさん……。ちょっと、僕、アブノーマルな考えを抱くんですけども。
 どうしよう。ドキドキする――。

「こうやって、体を木の幹にこすりつけるのニャ」
 ああ……、なるほど。
 なんだろう、ちょっと残念とか思っている僕がいるんだけど。
 ――――あれ、変態じゃないですか。やだ~。
 
 なんて、馬鹿な考えは洗い流してだね、地図を見せてもらうと、マーキングをしてくれたところに、チェックが入っている。
 これがいいなら、木に目印書いたりもよかったりするのかな?
 
 ――とりあえず、目に見えないものにだけしておくか。書いたら書いたで、逆に相手にそれを利用されるかもだし。
 
 匂いか――、それを判断出来る嗅覚は各々発達してるって事なのか。
 僕にはまったく嗅ぎ取れないけども。
 シナンさんのこすりつけた幹に鼻を近づけても、分からない。

「それは、恥ずかしいニャ……」
 はい、ごめんなさい。
 どうやら、やってはいけない種族間でのマナー違反に触れてしまったようだ。
 ――ま、まあ、嗅ぎ取れる方々に託そう……。 

 でも、これはありがたい。このチェック部分に番号や名前を付ける事で、誰がどの辺りで活動しているか、それに、相手を発見した場所を素早く特定出来る。
 
 いいね、少しずつだけど、それっぽくなってきたんじゃないかな。
 よしよし、マーキング部分をもっと増やしてもらって、それを元に皆で忌憚のない意見を出し合おう。

 ――――――。 

 ――――これだけ、地形に印が出来れば問題ないだろう。これで、通信のやり取りが簡単になる。

「さっさと、コイツを撃ってみてえな」
 やれやれ、好戦的だな龍人ドラゴニュートさんは、やっぱりそういう血筋なのかな。今まで体験した事のない武器だから、使用するのが楽しくて仕方ないのかもしれないけども、そんな考えだと、百人長にぶっ飛ばされますよ~。
 
 ――でも、その百人長は、遠くから眺めてるだけで、罵声を浴びせていた方々も、反応を示さない。
 本当にここからは、不介入のようだ。
 ただ、黙ってみてるだけ。正直、そっちの方が怖かったりする。

「では、マップにチェックを入れた箇所はアルファベット表記でいきます」
 左翼側を通常のアルファベット、右翼側にはそれに+プラスを付けたした。
 
 談笑もいいけど、ちゃんと聞いて、意見も述べていこうね。
 
 注意する感じの語気を口にしたら、アクシャイさんは流石に分かったのか、銃を置いて、首肯で返してきた。

「では、何か言いたい事ありますか?」
 僕が、こうやって皆の前に立っている事がおかしな事なんだけども、なぜか、皆は当然とばかりだから、困ったものである。
 聞きたいもんだ。僕の何処に、そこまでの徳があるのかと――。

「戦闘スタイルはどう考えてます」
 先ほど銃を台に置いたアクシャイさんが、自分はちゃんと貴男の話に耳を傾けてますよ感を出しながら、挙手してから、僕に問うてくる。
 スタイルも何も、それを素人に聞いてくる貴男の頭の中を窺ってみたいんだけども、その辺は貴方方の独壇場じゃないの?
 
 僕ではなんとも言えないので、横に立つロウさんに目を向けて助言を口にしてもらいたい。
 狼の獣人ヴィルコラクなんだから、狩りとか本能的な物が体に宿ってそうだもの。森とかでの狩りを是非とも教えていただきたい。

「現状の演習戦は、お互い手探りの状況――」
 ロウさんが語る、演習戦。
 こちらも相手も、地図を見て、現場を確認はするものの、土地勘を直ぐに頭と体にたたき込むのは難しく、突発的な遭遇戦が、各所で散発的に起こる事がもっとも多く起こる事だと想定している。
 そうなると、指呼の距離での戦闘が必然で、銃撃よりも白戦がメインとなるかもしれない。
 白戦であって、白兵戦でないのは、銃以外は武器の携帯を許されていないので、刀剣の代わりの木剣なんかの装備はない。
 接近の場合は素手で相手を拘束し、制圧及び尋問が許されている。
 素手での近接戦なら、こちらに分があると、アクシャイさんが自分の掌に残った方の手で拳を作って、パシンと音を立て、自信を見せている。
 
 可能ならば接近して、拘束が望ましいとは僕も思う。銃はその発砲音が問題だ。音で位置がばれれば、飛行能力のある方々だと、即座に音の源まで移動してきそうだからね。

「偵察隊が勝敗の趨勢を握ってると考えるべきですね」
 先手を取らなきゃ、銃撃も拘束も始まらない。
 その高い機動力を少しでも素早く察知するためにも、偵察が要となってくるだろう。どの時代においても、情報を制した者が、戦争でも、商売でも、勝利者になっていくんだから。
 僕の言葉に皆が首肯してくれる。
 アクシャイさんなんて、僕が言うならなんでも頷くみたいだ。僕の何処にそれほどのカリスマ性を見ているのか……。
 それと、貴男。あんまり理解してないでしょ。偵察が要だって言ってるのに、〝ど派手にやってやろうぜ!〟って、周囲に言わないの。
 隠密ですよ、スニーキングですよ。音も立てずに忍び寄る。これがこの視界の悪い森でも戦い方ですよ。
 まったく……、この方がもっと落ち着きのある方なら、飛行も出来るから、オールラウンダーに立ち回ってもらいたいんだけどね……。
 
 誰しも、美点と欠点は持つもの。まあ、僕が偉そうに言える事なんてないんだけども……。なんたって、この中でダントツ底辺な存在だしね――――。
 射撃の成績はよかったけどさ。心の中でちょっと誇ってみる。
 
 ――――。

 空がオレンジ色になり、本日の演習の終わりを告げる金管音色の吹鳴すいめい

「解散」
 の一言を言うと、僕たちの前から百人長や、指導役の方々が去って行く。
 結局、ミーティングの時も、注意も何も口に出す事は最後まで無かった。
 
 ――さて、戦闘が得意な方に戦闘時の気構えでも教わって、それに従いつつ、足手まといなので、後方で支援でもしますかね~。


「ピートさん」
「ピートさん」
「ピートさん」
「ピートさん」
 ピーピーピーピーうるさいな! なにを全力で僕を頼ろうとしてるの? 馬鹿なの? 僕は素人なの! OK? てことで、ここは、部隊一の強さであろう――、
 アクシャイさんに質問だね!

「俺はピートさんに従うだけです」
 コイツは本当に、エリートな存在の種族なんですか? 頭悪いのも大概にしていただきたいんですがね。
 百人長の【栄えある馬鹿】って言葉が蘇る。ついでに偉大を付け足してやりたいくらいだ。
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