拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ブートキャンプへようこそ♪

PHASE-23

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 目をやれば、アズナさん。
 静まりかえるこちらとは違って、カラカラと笑いながら、凱旋気分だ。まあ、勝者だからね。いいんだろうけども、そんなのは、そちら側だけでやってくれよ。

「やあやあ」
 遅ればせながらリケルメさんも登場。鳥人タンガタ・マヌ二名がこのお通夜ムードの場に来て欲しくない。
 なんて、清々しい笑顔なのだろうか。
 その笑顔は今の僕たちには刺激になりそうなんだけど。僕はいいけども、他がね。今にも第二戦が始まりそうで怖いんですけど。

「やってくれたね」
 健やかな笑顔が凄くまぶしいよ、リケルメさん。 
 なぜに僕の前で立ち止まるのか。

「いい、射撃だった。文字通りしびれたよ」
 猛禽特有の鋭い目でウインクされても、これから狩られるのだろうかと思ってしまうのですが……。
 手を伸ばしてきたので応えると、強く握られて、これまた強く振ってくる。やばい――、不死王さんと同じ匂いがする。
 もう、熱血劇場はごめんである。

「しかし、よく、僕たちの動きが簡単に把握出来ましたね。何かしら探知出来る能力者でも」
 話をすりかえて、暑苦しいのを回避する事を画策。加えて、気になっていた事を質問。

「いい推測だけど、ちょっと違うな。見つけにくい偵察部隊が我々の強ささ」
 いちいち、さわやかだな。

「ここに来たのは何人に見える?」
 僕になぜか抱きついてくるアズナさん。悪くない。むしろいい。
 おっぱいが柔らかい。女性から積極的に抱きつかれたのは初めてだったから。驚きもあるけども、正直、うれしい。
 ここに来たのが何人とかどうでもいい。この感触ってなんて幸せになれるんだろうか。僕に好意を持ってくれているのかな?
 でも、僕にはロールさんと、カグラさんがいるからな~。まあ、ハーレムっていうのも――――、やめよう……。空しくなるだけだ。僕にそんな時代は到来しない……。

「離れるニャ!」
 シナンさんが突き放して、僕を引っ張り、抱きつく。この感触――。アズナさんに比べれば控えめだけど、これは、これで――。
 やっぱり、ハーレムって願望を考えても良いのかな。
 いま、僕の顔すっごく緩んでるよね。間違いない。
 
 突き放しても、
「嫌だ!」
 って、言って、アズナさん僕の残った腕にくっついてくる。これ、え~。本当に? 来たこれ? 僕のモテ期が到来したんじゃないの。
 頑張ったからね。負けたけど、そのご褒美なのかな。努力すれば必ず成功するって事はないけども、頑張れば、それを見てくれる方も必ずいてくれる。それが今の状況なのかも。

「いいかな?」
 なんだ、さわやかな鷲の頭を持つ者よ。僕は今、我が世の春を謳歌している所なんだけども。猫耳と、鳥ッ子だぞ。この幸福な時間を遮るほど大事な事なのかい? 
 
 どうせ、ここに来たのは何人とか、同じ事を言いたいんでしょ。

「何人に見えるかな?」
 はたして正にだね、

「二人です、二人」
 さっさと、適当に答える。
 当人は、その質問さえ受け取れれば良かったようで、得意げな表情に変わる。

「実をいうと、ここにはいま、俺たち二人を除いても、五人いるんだ」
 へ~。そうなんだ。
 で、どこにいるのかな? 透明なのか? そうなら、個人的な能力として逸脱した魔法に近いものだから、抗議させてもらいますよ。

「じゃあ、出てきてもらおうか」
 その台詞に、リケルメさんの折りたたまれた羽根の中から現れたのは――、
「あら、かわいい」
 女性が見たら、頬ずりしたくなるであろう、掌サイズの二頭身スタイルの妖精が出てきた。
 ぬいぐるみみたいな、その妖精の服装は、もちろん僕たちと同じものなんだけど、僕たちが隠蔽率を高めるために身を包んでいたギリースーツに似た物を纏っている。

「これぞ、本物のギリードゥじゃないですか!」

「その通りです。ウィザースプーンさん」
 こんな小さいのは、インチキで卑怯だという発言が脳内に駆け巡ったけども、身体的な事での異議申し立ては差別に繋がるし、小さいながら、僕たちと同じメニューの演習もこなしてきたんだろうと考えると、異議申し立てを発しようとした口元を強く閉じて、発言を堰き止めた。
 でも、こんなにも小さな存在が動き回り、偵察を行われていたら、そりゃ分からないよ。こういう種族も、この演習に参加してる訳ね……。
 亜人に対しての認識不足を補わなかった事が、一番の失態だったね。僕の思慮の浅さだ。
 
 ――そりゃそうだ、よくよく考えたら、不死王さんのとこにもバンシーさんがいたよね。
 演習参加者に掌サイズの存在がいてもおかしくなかったわけだ。
 
 この方々が、小さな体で、懸命に移動して偵察を行い、僕たち以上に情報を得て、機動力に物を言わせて僕たちを敗北に導いたわけか。

「参りました」
 両サイドに美人を侍らせて、ギリードゥの方々に頭を下げた。
 小さくても大活躍出来る。そして、その長所を生かした戦い方に、心からの言葉を贈った。

「戦いが終われば、同じ魔王軍の仲間。有事の時は、ここにいる皆と一緒に戦えると思うと、心強いよ」
 勝者のリケルメさんが語る言葉に、
「そうだな、その時は俺の強さを見せてやるよ」

龍人ドラゴニュートと共に戦えるなんて、誉れだよ」

「わかってるじゃねえか!」
 アクシャイさん。急に、明るくなってんだけど。まずいな、若干、熱血劇場っぽくなってるけども、まあよかろう。僕は今、幸せの中だから。
 皆で、仲良く握手を行ってくださいよ。

「風雷王さまの配下に、俺たち、そして司令官のピートさん。これだけ揃えば、勇者なんて怖くねえ!」
 アクシャイさん。僕をそこに入れないで。僕、この演習を終えれば、ただの公務員に戻るんで。
 ――……。
 全くだ! って、一つになるんじゃないよ! 僕はもう、関係ないから。いや、まあ、この一週間の関係を無かった事にするわけではないけど、こういうのはもうこりごりだよ。
 新兵の演習がこのレベルだったんだよね……。
 
 背筋が凍るね。正規兵の方々の演習を想像すると。
 塩のスープとか言って不平を漏らした事を、今では本当に申し訳ないと思っております。
 今なら、あのスープを、最高の笑みで飲む事が出来るだろう。
 
 ――――。
 
 はぁ~。
 なんだろうか、この安心感。
 営火えいかを前にぼ~っと、佇んでいる。高く上がる炎の柱を見ていると、妙に落ち着く。
 周囲に目をやれば、競い合っていた緑と青のベレー帽が仲良く談笑。この日ばかりはと、お腹いっぱいの食事が用意されている。
 
 長テーブルに置かれる堅パンハード・タックが堆く積まれ、その横で、大きな鍋に入ったホットミルク。
 メニューは変わらない。でも、お腹いっぱいになれる喜びは得られるからいいよね。
 僕と違って、強靱な歯を持つ方が羨ましい。豪快にいくつも食べている。
 満腹になれる幸せ。
 それに感極まって、涙を流しているオークさん。体系的によく食べるんだろうね。今までが少なかったもんね。
 
 僕は、深めの木皿に堅パンを入れてから、その上に熱々のホットミルクを注いで、柔らかくなったところを口に運ぶ。
 美味いね! 演習戦前日までは、マグカップに注がれたホットミルクだったから、こういう豪快なのは出来たなったからね。

「贅沢食いだ」
 ――これを、贅沢と思える僕は、相当にこの空間に適応している。

「久しぶりに、お腹に溜まるくらい食べましたね」
 満足げなググタムさん。細身の体だから、膨れたお腹がよく目立つ。
 お腹が満たされれば、皆、表情は安堵なものに変わるもんだね。
 
 ――――お腹満たされたら、今までの疲労が大波のように押し寄せてくる感じだ。すごく眠い……。
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