拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ブートキャンプへようこそ♪

PHASE-25

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「この演習は連帯感を――絆を強めるものなんだよ」
 分かってますよ。その辺は皆さん分かってるよ。力がなくても、連携で出来る事をやって、戦いを支えるって事は、
 でも、ちびっ子は機嫌が悪い。
 理由は、ちびっ子サイドの新兵さん達が、味方を犠牲にする戦いを最初から計画に入れていたことが原因だった。
 
 ギリードゥの皆さんを、偵察、伝令に適したポジションへの配置。
 その為とはいえ、囮役を使用し、犠牲を出させた。
 
 蓋を開けてみれば、アズナさん達も僕たち中央をたまたま発見しただけだそうで、本来の彼女たちの任務は、ギリードゥさん達を配置する為の輸送役であり。
 それを終えると、次に大げさに仕掛けて、視線を自分たちに向けさせるための、陽動部隊へと移行。
 僕たちが思うような、先駆け部隊ではなかった。
 
 でも、それなら、僕たちも相手を釣るために、オークさん達を寝かせてたけどね。
 でもそれは、戦闘が進む中で考えられた作戦であり、しかも、囮となった者たちをカバーする条件下で行われていた。
 ちびっ子はその違いに、怒りを覚えたそうだ。
 
 加えて、僕たちの最後の意地にも、感銘を受けたそうで、倒れた味方のために意地を見せた行動は素晴らしかったと賞賛してくれる。
 ――けども、結果は負けてるからね。しかも、最終的にはそちらは大多数が残ったわけだし、問題もないようなんだけども、やはり、最初から犠牲覚悟で考えた作戦がどうにも気に入らないようだった。
 意外と、熱いな、ちびっ子。
 勝ったら勝ったで、別の方法の模索があっただろうと、反省点を探さないといけないような状況になっていた。
 演習での教えをないがしろにした。それを成さなければ勝っても許さない。厳しいちびっ子であった。
 
 ――――正座させられている方々に会釈をしつつ、僕はその場を後にした。
 
 ――――。
 
 おお、あの美しき銀髪サイドテールは!
 木陰で、本を読んでる姿が芸術の域ですね~。至急、宮廷画家をつれてまいれい。
 
「まったく! 一週間も――――あれ?」
 背後からおっさんが僕に飛び乗ってくる。おっさんとしては押し倒そうと思ったんだろうけど、いや~、悪路で過ごした一週間で得た体幹で、僕の体はびくともしない。
 おっさんを黙らせるためにも、これは本気で体を鍛えていこうかな。
 力ではない、威圧で黙らせる存在になろう――。
 やめておこう、この考え方、格好悪い。力で黙らせるのと変わらない。
 ――男力で認めさせよう。

「おかえり」
 ああ――、その笑顔が見たかったんだ僕は……。
 そして、その台詞を二人でいる時に聞きたいものですね。たとえばこう、夫婦になってからとか――。

「まだ、演習しないといけないかな?」
 表情、表情。トリップしていた。

「もう、こりごりですよ」

「でも、なんか、たくましくなってるね」
 ヒャッハー! なんで、そんなに簡単に体に触れてくるんですか。嬉しい限りですよ。
 ご褒美来たコレ。腕やら胸をぺたぺたと触ってくれる。
 これだよ、この癒やしの空間がほしかったんだよ。一週間のしんどさが吹き飛ぶってもんだ。
 
 ――さあ、帰ろう。帰ってアイアンプレートなんて別称の物以外を口にしたい。
 でもさ。

 ――……。

「僕が一週間、演習をしている間、お二人は何をしてたんですか?」
 こんな何もないようなところで、一週間もいれるなんて、胆力あるロールさんは過ごせたとして、後ろで未だに僕の体幹がしっかりしている事に驚きを隠せないでいる整備長は、この環境に適応出来るわけがない。
 ――いや、初日で風呂にも入らずに寝てたから、あるのかな順応性……。

「私たちは、ちゃんと仕事をしてたよ」

「はあ……」
 こんな場所で仕事って何? 叙勲式参加やら、感謝状とか、ゲンジ砂漠の現在を調査するくらいでしょ。
 基本、最初の二日で終わったよね。調査っていっても、【砂漠に森が出来ている】ってのを目にすりゃいいだけだし。
 それ以外に何を記入すればいいのかって話しだし。

「いや~まさかね。こんな物を作ってたなんてな……」
 背後に立つ整備長が、どこから取り出したのか、手に銃を持っている。

「これは、えらいもん作ってくれたぞ。規制かけなきゃな……」
 ああ、百人長が言ってたっけ。二人にも伝えてるって。
 二人とも魔石鏡を使用して、王都にいるボドリック局長に連絡を入れてから、銃に対する今後の対策を練っていたそうだ。
 局長、銃の存在と使用方法の説明を魔石鏡の向こう側から目と耳にして、大層、驚愕していたとの事。
 パルパーナから帰ってきてからというもの、問題がまたも出来ちゃって大変ですね。
 
 とりあえず整備長たちは、今現在の銃の所有数と、生産力とコスト面など、公開出来るところは、漏らさず伝えてもらう為に、生産ラインの決定権を持っているキドさんに説明を求めて、工廠の調査やら、銃の拡散を行わないようにと、説得を行っていたそうだ。
 
 キドさんそこは倫理を持った方である。銃の転売は一切考えていないそうで、今のところは、自分の配下と、風雷王の配下にしか、使用許可を出していないそうだ。
 
 整備局員に伝えた事から、次にカグラさんにも伝えたそうだけど、〝幹部内部で、天秤を動かそうとしているのか?〟って、凄まれたらしい。
 
〝忠誠こそが我が名誉〟と、言い張る両王は、幹部内の権力闘争には一切の興味はなく、現状の立ち位置は変わらないと、必死に語ったそうだ。
 
 お二方とも、カグラさんの睨みで、全身の毛穴が馬鹿になったのか? と、いわんばかりに汗が噴き出していて、魔石鏡の前で固まる二人の姿をばっちりと、整備長とロールさんが目撃していたそうだ。
 
 なんなの? カグラさんってそんなに怖いのかな? 良い方だよ。真面目で美人で優しくて。
 不死王さんも怖がってたっけ。後、邪神もカグラさんを見て、〝げえっ、カグラ〟って驚いてたし、ジャジャイさんは、演習初日の僕の発言で完全に心折れてたもんね。
 で、この二王の畏れ方。

 もしかして、とんでもない方なのかな。まあ、立場的に幹部の筆頭なんだろうけど、実力的に天壌の差でもあるのかな。
 そんな方と普段、買い物とかしてるロールさんって本当に凄いな。

「銃とかサンプルで預かるとかいう話なんかは、話題に出ました?」

「なかったな。局長は壌獣王に生産の縮小を願っただけだ。そもそも、王都の局はゲンジ砂漠は管轄外だし、二王は自然保全の功績も大きいから強く言えないんだよ。出来る事は、頼み込むだけだ」
 なんか、そんな言い方されると、お二方がマフィアみたいに見えてくるんだけど。
 表の顔が環境保全の善人で、裏では武器を製造し莫大な利益を得てるみたいな……。

「誤解されたくないから言っておくけど。本当に邪な事は考えてないから、カグラ様にしばかれるのは御免こうむるから……」
 弱々しい声だなちびっ子。不敵な姿は何処に行った? 頭抱え込んでるし、昔なんかあったのかい? あめ玉食べるか?
 ――って、なんでいるの。説教タイム終了?

「おお、いたいた。ピート!」
 やめてくださいよ。困ったな~。アズナさん――。いきなり抱きつかないでくださいよ。無遠慮に撓わに実った物を押しつけられると、鼻の下が伸びきってしまいます。

「なあ、ピート。亜人との恋愛とか有りなのか?」
 すっごく、ドストレートだな。有りか無しかで言うなら――――。
 顔から足下まで舐めるような視線を送る――。
 断然有りに決まってるじゃないですか。

「お前、馴れ馴れしすぎるニャ」

「おっと」
 引っ掻かれそうになって、アズナさん、僕から離れる。
 離れると、その位置に今度はシナンさんが抱きついてきた。
 いや~。なんでしょう。このモテ期の再来は、整備長が僕を羨ましい顔で見ていますよ。はは、いいでしょう。
 
 ――――……。
 
 ロールさんに、この状況を見られるのはあんまりよくないような…………。
 横を見れば笑顔でこっちを見ている。
 笑顔ってなに? 僕なんて最初から恋愛対象じゃないから、微笑ましく見えてるのかな……。それとも、怒気を隠しているのかな。出来れば後者を望みたい。

「あんたも離れなよ!」
 僕の考えなんて関係なしとばかりに、なぜか僕に好意を抱いてくださるお二人が、戦闘態勢。
 シナンさんが僕から離れて、尻尾を立てて毛を逆立てさせてる。

「シャャャャ!」
 とか言ってるし。
 キャットファイトが再び起ころうとしたところで、
 パシンッと、音が間に入って、二人が倒れる。

「あのさ、新兵が僕の前で暴れないでくれる。埃が舞うから」
 ちびっ子が両手から走らせた光が原因だった。しびれたように体を痙攣させている二人は、
「「申し訳ありません」」「ニャ……」
 シナンさん、語尾をアズナさんと合わせられなかった。
 
 周囲に目をやれば、ロウさんにググタムさん、一緒に行動した方々がいる。流石にちびっ子がいるから、自重して小さく手を振る程度だ。
 周囲を見ている時に、僕に近づいてくるロールさんが目に入る。僕の方に歩み寄ってくる笑顔は、演習に送り込まれる時と同じ物に見えたのは気のせいではないよね?

 
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