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働く方々
PHASE-08
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「その鎧、タイラントデスストーカーの外骨格で作られてますね。しかも作りからして一級を飛び越えて――、特級と考えていい品。なぜ、そんな代物を装備してるんです? それはオークションにかければ六千万は行くでしょう。差し押さえ――――いいですか?」
はわわわわ……。とんでもない事を口にしてますよ。慈悲なんてなければ情もない。まだ少女なんですよ。ゲイアードさん。むしり取り方がえぐいんじゃ~。
「剣もありますね。同じ材質。セットなら更に跳ね上がる。うん、いいね」
いやいや、よくないよ。
今にも大粒の涙を流しそうなサージャスさんに代わって、席から立ち上がる。
「これ、僕の所有物なんで」
「は?」
怪訝な顔をしないでいただきたい。
「鎧と剣の事ですよ?」
「ああ、職権乱用して、ふしだらな事を考えていたのかと」
なんちゅう想像。
僕が、そんな鬼畜な考えを抱いてサージャスさんを手込めにしようと思うような人間に見えますかね。
ちょっと、エッチな十代後半ですよ。
――……そこそこ? …………かなりかな?
ロールさんの残り湯ではしゃいだ事を思い出すと、僕は弩変態なのかな?
――――て、そんなのどうでもいい!
「僕の所有物ですから、渡せません」
これまた怪訝な表情で返される。
なぜに、僕みたいな一年目公務員が、そんな代物を持っているのか? 疑惑の眼差しだ。虚言を吐くにしても、もっと現実味のあるものを。と、言いたげだ。
なので、僕が外骨格を手に入れた経緯を説明し、サージャスさんに貸し与えている訳も続けて口にした――――。
「なるほど、実戦での試験運用のクエストですか……。これだけの代物。生産の安物とは違います。無論――持ってますよね?」
証拠でしょ。つなぎのポケットから、羊皮紙を一枚出す。
サージャスさんも続いて、丸筒から羊皮紙を取り出す。
「僕のが所有者である証明書と、サージャスさんのが、クエストのために装備を貸し与えた認可状です」
「ウィザースプーン君……。貴重品ですから、せめて封筒なり丸筒なんかで保管してもらいたいですね」
嘆息を打たれてしまった。
確かに、ポケットは乱雑だね。以後、注意します。
二枚の羊皮紙を手にして、背もたれに体を預けつつ目を通している。
いいな~。柔らかそうな革製の椅子。
僕のトネリコ製のウィンザーチェアなんて、背もたれに体を預けると、ギイギイと軋み音が凄いんですよ。交換して欲しいな。
「確かに――――君と、カラキリ第二研究所主任のサインも入ってますね。しばし、お時間を」
まだ、何か疑っているのかな?
――――。
待ってる間、トレーを持つ女性が奥からこちらに来ると、僕たちに紅茶を出してくれた。
フルーティな香りからして、普段、僕たちが局内で飲んでる業務用の安物では無い。いいのを飲んでますね、官庁の方々は。
サージャスさんも、ゲイアードさんが離席して緊張がほぐれたのか、おいしそうに飲んでいた。
一口一口を大事に口に含んでは笑みを見せる。何とも可愛らしい。装備している物が似つかわしくないよ。
普通に女の子らしい服を着てほしいと、願望を抱いてしまう。
――。
「お待たせしました」
その低い声に、サージャスさんが紅茶を口に運ぶ行為を止めて、一気に強張る。
「申し訳ありませんが、裏を取らせてもらいました」
これだけあっても、信頼してもらえないのか……。
単純に疑い深いんだろうけども、ここまで徹底するんだね。違令管理課は、
――――整備局員として、違反金を支払わせる為に、バラクーダの二人に脅されても、心折れなかった僕も、徹底しているといえば徹底しているのか……。偉いな僕。
そう考えると、ゲイアードさんと僕は公務員の中でも似たもの同士かも。
「今、連絡を取り、カラキリ第二研究所主任の確認を得ました。疑って申し訳ありません」
僕たちに深く頭を下げてきた。
姿勢を戻して、椅子に座ると。
「ウィザースプーン君。君も中々に悪いね」
と、クスリとした笑みを見せた。
何が悪いのかと問うと、サージャスさんに装備一式を、無償で渡していれば、ここに来た時点で差し押さえが出来る。
しかし、所有者が貸し出して、しかもクエストとする事で正当化。これで、違令管理課は差し押さえが出来ない。
「巧みに法をすり抜けましたね」
いや~、大したことないですよ。
きっと、お金儲けを考えてる一部の貴族や、政治屋の方々が、これ以上の事をやってますよ。
あくどい方々の一端に触れた気分ではある。
サージャスさんは胸をなでろして安堵の表情。
「これからも、支払いは抜かりなくお願いします」
些か表情を崩したものだから、安心したんだろうけど、即座に口を一文字にしてからの語り口に戻ると、サージャスさん、居住まいを正して、強く頷いて返す。
慈悲って無いな。違反金を支払い終えるまで、違令管理課の方々は、違反者たちには慈悲なんて一切見せないのかもね。
「い、行きましょうか」
いたたまれないのか、払う物も払ったし、さっさとこの重苦しい場から立ち去りたいようだ。
「紅茶、ごちそうさまでした。とってもおいしかったです」
そう言ってカップを整えると、一礼して、足早に離れる。
しかたがないので、僕も追従するように、ゲイアードさんに頭を下げてから席を立つ。
「不憫には思いますが、規則なのでね」
立ち去ろうとするサージャスさんの背中にかけられる台詞に、僕は足を止めて反転。
「厳しいですよね」
「ですが、規則なんで」
足を止めても、振り返る勇気がないようで、背中で台詞を耳にするサージャスさんに代わって、僕が対応。
サージャスさんは被害者と言っても過言ではないと思うし、もう少し恩赦があっても。と、口にしてみても。
規則という言葉でしか返してこない。
「整備局も使用するでしょ?」
そう言われれば何も言い返せないのが事実。この公務員最強の真言を僕も多用しているからね。さっきの某二人にも使用したし。
でも、ひたむきな彼女に、少しは何かあってもいいんじゃないのか? とも思ってしまうよね。
「まあ、頑張ってください」
素っ気ないな。一言そう言って、カウンターから立ち去っていった。
まあ、同情なんてしちゃうと、違令管理なんて職は出来なくなるんだろうけどさ……。
世知辛いよな~。
はわわわわ……。とんでもない事を口にしてますよ。慈悲なんてなければ情もない。まだ少女なんですよ。ゲイアードさん。むしり取り方がえぐいんじゃ~。
「剣もありますね。同じ材質。セットなら更に跳ね上がる。うん、いいね」
いやいや、よくないよ。
今にも大粒の涙を流しそうなサージャスさんに代わって、席から立ち上がる。
「これ、僕の所有物なんで」
「は?」
怪訝な顔をしないでいただきたい。
「鎧と剣の事ですよ?」
「ああ、職権乱用して、ふしだらな事を考えていたのかと」
なんちゅう想像。
僕が、そんな鬼畜な考えを抱いてサージャスさんを手込めにしようと思うような人間に見えますかね。
ちょっと、エッチな十代後半ですよ。
――……そこそこ? …………かなりかな?
ロールさんの残り湯ではしゃいだ事を思い出すと、僕は弩変態なのかな?
――――て、そんなのどうでもいい!
「僕の所有物ですから、渡せません」
これまた怪訝な表情で返される。
なぜに、僕みたいな一年目公務員が、そんな代物を持っているのか? 疑惑の眼差しだ。虚言を吐くにしても、もっと現実味のあるものを。と、言いたげだ。
なので、僕が外骨格を手に入れた経緯を説明し、サージャスさんに貸し与えている訳も続けて口にした――――。
「なるほど、実戦での試験運用のクエストですか……。これだけの代物。生産の安物とは違います。無論――持ってますよね?」
証拠でしょ。つなぎのポケットから、羊皮紙を一枚出す。
サージャスさんも続いて、丸筒から羊皮紙を取り出す。
「僕のが所有者である証明書と、サージャスさんのが、クエストのために装備を貸し与えた認可状です」
「ウィザースプーン君……。貴重品ですから、せめて封筒なり丸筒なんかで保管してもらいたいですね」
嘆息を打たれてしまった。
確かに、ポケットは乱雑だね。以後、注意します。
二枚の羊皮紙を手にして、背もたれに体を預けつつ目を通している。
いいな~。柔らかそうな革製の椅子。
僕のトネリコ製のウィンザーチェアなんて、背もたれに体を預けると、ギイギイと軋み音が凄いんですよ。交換して欲しいな。
「確かに――――君と、カラキリ第二研究所主任のサインも入ってますね。しばし、お時間を」
まだ、何か疑っているのかな?
――――。
待ってる間、トレーを持つ女性が奥からこちらに来ると、僕たちに紅茶を出してくれた。
フルーティな香りからして、普段、僕たちが局内で飲んでる業務用の安物では無い。いいのを飲んでますね、官庁の方々は。
サージャスさんも、ゲイアードさんが離席して緊張がほぐれたのか、おいしそうに飲んでいた。
一口一口を大事に口に含んでは笑みを見せる。何とも可愛らしい。装備している物が似つかわしくないよ。
普通に女の子らしい服を着てほしいと、願望を抱いてしまう。
――。
「お待たせしました」
その低い声に、サージャスさんが紅茶を口に運ぶ行為を止めて、一気に強張る。
「申し訳ありませんが、裏を取らせてもらいました」
これだけあっても、信頼してもらえないのか……。
単純に疑い深いんだろうけども、ここまで徹底するんだね。違令管理課は、
――――整備局員として、違反金を支払わせる為に、バラクーダの二人に脅されても、心折れなかった僕も、徹底しているといえば徹底しているのか……。偉いな僕。
そう考えると、ゲイアードさんと僕は公務員の中でも似たもの同士かも。
「今、連絡を取り、カラキリ第二研究所主任の確認を得ました。疑って申し訳ありません」
僕たちに深く頭を下げてきた。
姿勢を戻して、椅子に座ると。
「ウィザースプーン君。君も中々に悪いね」
と、クスリとした笑みを見せた。
何が悪いのかと問うと、サージャスさんに装備一式を、無償で渡していれば、ここに来た時点で差し押さえが出来る。
しかし、所有者が貸し出して、しかもクエストとする事で正当化。これで、違令管理課は差し押さえが出来ない。
「巧みに法をすり抜けましたね」
いや~、大したことないですよ。
きっと、お金儲けを考えてる一部の貴族や、政治屋の方々が、これ以上の事をやってますよ。
あくどい方々の一端に触れた気分ではある。
サージャスさんは胸をなでろして安堵の表情。
「これからも、支払いは抜かりなくお願いします」
些か表情を崩したものだから、安心したんだろうけど、即座に口を一文字にしてからの語り口に戻ると、サージャスさん、居住まいを正して、強く頷いて返す。
慈悲って無いな。違反金を支払い終えるまで、違令管理課の方々は、違反者たちには慈悲なんて一切見せないのかもね。
「い、行きましょうか」
いたたまれないのか、払う物も払ったし、さっさとこの重苦しい場から立ち去りたいようだ。
「紅茶、ごちそうさまでした。とってもおいしかったです」
そう言ってカップを整えると、一礼して、足早に離れる。
しかたがないので、僕も追従するように、ゲイアードさんに頭を下げてから席を立つ。
「不憫には思いますが、規則なのでね」
立ち去ろうとするサージャスさんの背中にかけられる台詞に、僕は足を止めて反転。
「厳しいですよね」
「ですが、規則なんで」
足を止めても、振り返る勇気がないようで、背中で台詞を耳にするサージャスさんに代わって、僕が対応。
サージャスさんは被害者と言っても過言ではないと思うし、もう少し恩赦があっても。と、口にしてみても。
規則という言葉でしか返してこない。
「整備局も使用するでしょ?」
そう言われれば何も言い返せないのが事実。この公務員最強の真言を僕も多用しているからね。さっきの某二人にも使用したし。
でも、ひたむきな彼女に、少しは何かあってもいいんじゃないのか? とも思ってしまうよね。
「まあ、頑張ってください」
素っ気ないな。一言そう言って、カウンターから立ち去っていった。
まあ、同情なんてしちゃうと、違令管理なんて職は出来なくなるんだろうけどさ……。
世知辛いよな~。
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