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叙勲の日
PHASE-04
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男爵様、手を掲げてる。振り下ろすと、それを合図として、僕に暴行を働くつもりかな。困ったな~。
痛いのは嫌だけど、ここで僕が制裁を受ければ、それで体裁は取れるから、素直にここから去ってくれるかな?
よし、一発殴られて、派手に飛んでから気を失ったふりをしよう。そうしよう。
「おやめください」
「黙れ!」
局長の発言を一言で断つと、口角を上げて、腕を振り下ろそうとする。
「止めろと言っているのだ」
「黙れと言ってい――――るぅ……?」
すっごく、体幹に届く低音でしたね、男爵様。僕も久しぶりに聞いたけど、やっぱ怖いよ、この御方の声は、拳を僕に向けていたお付きの方々も直立不動。ついでに整備長も、ワイン瓶をテーブルに戻して同じような姿勢。
「大公様!?」
男爵様の声が見事に裏返る。
まさか、下々も参加するような食事会に姿を現すとは思ってもみなかったのかな? 脂汗が凄いですね。
「如何にも、元大公だ」
元を付けないでください。不死王さんの忠臣様。
「尾籠であるな。貴族でありながら、国のために尽くす者をいたぶろうとは」
「しかし、私の子を泣かせたのです」
「黙れ!」
ひ~。古都の城でも聞いた大音声。本日も灰色髪を髪油でぴっちりオールバック。モノクルがギラリと煌めいております。その奥は猛禽の如き瞳。怖いよ~。
「親の出来が悪いから、子も凡愚に育つのだっ」
ド直球で言い放ちましたよ。
詰め寄って、我が儘を口にするような子など育ておって。それで、お前の子は後を継げるのか? 下の者たちを路頭に迷わせない自信は? と、詰問。
後退りしようものなら、逃がさず追撃。
男爵様、涙目。
「そもそも、卿は誰だ!」
うわ~い。誰か知りもしないでお怒りになっていますよ。
「モルドーを治めます、男爵のペアニト・ドゥール・ハワードでございます」
「モルドー?」
いやいや、大公様。領地くらいは知っておきましょうよ。
僕が耳元まで移動して、王都の南東の領地であり、麦がよく取れる肥沃な土地です。と、説明してあげる。
この方、古都以外には興味ないのかな?
「そうか――――肥沃か。前線基地の場に適しておるな」
おい、大公。やい、大公。
なんだ? 王都に来たのは敵情視察か? 古都から進軍するつもりか。ダメだぞ。禁止だぞ、侵攻なんて。貴男は古都の内政にだけ力を入れてください。
「とにかく、ここいる者は我らの知り合いだ。下がれ――下衆め。――――カスが!」
ぼろくそだよ。
男爵様は不憫だけど、ここまで気持ちよく言い切っていると、笑えてくるよ。
「さあ、皆。これ以上おじさんを怒らせない為にも、向こうで遊ぼうね~」
深紅のフードを脱いでからの、ホーリーさんの子供たちに向ける優しき言葉。
でもさ……、それはダメですよ。
――――というか、貴男も来てたんですね。
「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ」」」」
フードの奥は髑髏のアンデッド、ワイトのホーリーさんのご尊顔。
恐怖によって立ち尽くす子供もいれば、一目散に泣いて逃げ出す子もいる。あ……、派手に転んでる。可哀想に……。
――。
「解せぬ……」
いや、貴男。鏡を見てくださいよ。初見で貴男を見て逃げに転じる子供は優秀ですよ。いきなりアンデッドが昼の最中に出現したら、大人でも怖いよ。
僕たちも、古都で地面から現れた幽霊兵さんに驚いて、叫んだのを思い出した。
「まあ、ホーリー殿。ここは古都ではないので」
励ますように大公様が肩に手を当ててる。
ありえない、古都だと、肩車をせびられてくるのに。子供たち、皆、笑顔で近づいてくるのに……。
独白なのかな? 聞き取りにくいけど、そんな感じの事をずっと口にしている。よほどショックだっようだ。
古都では子供たちの憧れの対象ですもんね。王都の子供たちの反応に暗い影を纏っている。
でも、なんだろう。おかげでアンデット感は出ている。
「子供を襲っていたのですか!?」
「そんなわけがない! 世界の宝にその様な事はしない」
と、アンデッドの幹部が言っております。もう、さっさと転生して、聖なる存在になってくださいよ。
心清らかなアンデッドさんに問いかけたのは、サージャスさん。
護衛を行う立場の彼女がここにいるという事は、もちろんキドさんと、ケサランパサランがいるわけだ。
「やあ、やっとゆっくり話せるね」
なぜに、ロールさんにだけ話しかけるのかな。あれ? やっぱりシスコンと同じ匂いがする。
先ほどもまでとは打って変わって、僕たちの周りにはそうそうたるメンバー。
大公様に、ホーリーさんからなる不死王さんの幹部に、キドさんと、ルガールさん。ちびっ子妖怪ケサランパサランと、お付きの長身美人。
流石の男爵様の存在も曇ってしまっている。
「いや~見てたよ。この方に無理矢理なにかされそうになってたね」
ちびっ子が、ロールさんに怖くなかったかい? と、心配な表情を向けての言葉。そんな顔も出来るんだね。点数稼ぎか?
僕たちがいた場所は光の当たらない場所だったけど、お歴々の登場で、一気に豪勢なものとなり、こちらに対して、相手にもしていなかった貴族の方々が、なぜ、あそこに集まるのか? あそこにいる者達は名のある者達なのか? と、公務員を見下していた視線が、羨望の眼差しに変わっていた。
隙あらばと、ただ立っていただけの男爵様も、僕たちの会話を聞き取り、誰に対して口を開けば、ここにいる方々に名前と存在を覚えてもらえるのか、高速で目を動かして、対象を見つけ出している。
「しかし、卿は少し変わったな」
「僕ですか?」
モノクルを整えてから、僕の雰囲気の違いを指摘。それにホーリーさんも首肯で同調。
そんなつもりはないけども、男爵の不当な行いに屈する事なく、謝罪をしつつも、自分を捨てずに、心に決めている思いを折る事なく対応した姿は素晴らしかった。と、褒めてくれた。
痛いのは嫌だけど、ここで僕が制裁を受ければ、それで体裁は取れるから、素直にここから去ってくれるかな?
よし、一発殴られて、派手に飛んでから気を失ったふりをしよう。そうしよう。
「おやめください」
「黙れ!」
局長の発言を一言で断つと、口角を上げて、腕を振り下ろそうとする。
「止めろと言っているのだ」
「黙れと言ってい――――るぅ……?」
すっごく、体幹に届く低音でしたね、男爵様。僕も久しぶりに聞いたけど、やっぱ怖いよ、この御方の声は、拳を僕に向けていたお付きの方々も直立不動。ついでに整備長も、ワイン瓶をテーブルに戻して同じような姿勢。
「大公様!?」
男爵様の声が見事に裏返る。
まさか、下々も参加するような食事会に姿を現すとは思ってもみなかったのかな? 脂汗が凄いですね。
「如何にも、元大公だ」
元を付けないでください。不死王さんの忠臣様。
「尾籠であるな。貴族でありながら、国のために尽くす者をいたぶろうとは」
「しかし、私の子を泣かせたのです」
「黙れ!」
ひ~。古都の城でも聞いた大音声。本日も灰色髪を髪油でぴっちりオールバック。モノクルがギラリと煌めいております。その奥は猛禽の如き瞳。怖いよ~。
「親の出来が悪いから、子も凡愚に育つのだっ」
ド直球で言い放ちましたよ。
詰め寄って、我が儘を口にするような子など育ておって。それで、お前の子は後を継げるのか? 下の者たちを路頭に迷わせない自信は? と、詰問。
後退りしようものなら、逃がさず追撃。
男爵様、涙目。
「そもそも、卿は誰だ!」
うわ~い。誰か知りもしないでお怒りになっていますよ。
「モルドーを治めます、男爵のペアニト・ドゥール・ハワードでございます」
「モルドー?」
いやいや、大公様。領地くらいは知っておきましょうよ。
僕が耳元まで移動して、王都の南東の領地であり、麦がよく取れる肥沃な土地です。と、説明してあげる。
この方、古都以外には興味ないのかな?
「そうか――――肥沃か。前線基地の場に適しておるな」
おい、大公。やい、大公。
なんだ? 王都に来たのは敵情視察か? 古都から進軍するつもりか。ダメだぞ。禁止だぞ、侵攻なんて。貴男は古都の内政にだけ力を入れてください。
「とにかく、ここいる者は我らの知り合いだ。下がれ――下衆め。――――カスが!」
ぼろくそだよ。
男爵様は不憫だけど、ここまで気持ちよく言い切っていると、笑えてくるよ。
「さあ、皆。これ以上おじさんを怒らせない為にも、向こうで遊ぼうね~」
深紅のフードを脱いでからの、ホーリーさんの子供たちに向ける優しき言葉。
でもさ……、それはダメですよ。
――――というか、貴男も来てたんですね。
「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ」」」」
フードの奥は髑髏のアンデッド、ワイトのホーリーさんのご尊顔。
恐怖によって立ち尽くす子供もいれば、一目散に泣いて逃げ出す子もいる。あ……、派手に転んでる。可哀想に……。
――。
「解せぬ……」
いや、貴男。鏡を見てくださいよ。初見で貴男を見て逃げに転じる子供は優秀ですよ。いきなりアンデッドが昼の最中に出現したら、大人でも怖いよ。
僕たちも、古都で地面から現れた幽霊兵さんに驚いて、叫んだのを思い出した。
「まあ、ホーリー殿。ここは古都ではないので」
励ますように大公様が肩に手を当ててる。
ありえない、古都だと、肩車をせびられてくるのに。子供たち、皆、笑顔で近づいてくるのに……。
独白なのかな? 聞き取りにくいけど、そんな感じの事をずっと口にしている。よほどショックだっようだ。
古都では子供たちの憧れの対象ですもんね。王都の子供たちの反応に暗い影を纏っている。
でも、なんだろう。おかげでアンデット感は出ている。
「子供を襲っていたのですか!?」
「そんなわけがない! 世界の宝にその様な事はしない」
と、アンデッドの幹部が言っております。もう、さっさと転生して、聖なる存在になってくださいよ。
心清らかなアンデッドさんに問いかけたのは、サージャスさん。
護衛を行う立場の彼女がここにいるという事は、もちろんキドさんと、ケサランパサランがいるわけだ。
「やあ、やっとゆっくり話せるね」
なぜに、ロールさんにだけ話しかけるのかな。あれ? やっぱりシスコンと同じ匂いがする。
先ほどもまでとは打って変わって、僕たちの周りにはそうそうたるメンバー。
大公様に、ホーリーさんからなる不死王さんの幹部に、キドさんと、ルガールさん。ちびっ子妖怪ケサランパサランと、お付きの長身美人。
流石の男爵様の存在も曇ってしまっている。
「いや~見てたよ。この方に無理矢理なにかされそうになってたね」
ちびっ子が、ロールさんに怖くなかったかい? と、心配な表情を向けての言葉。そんな顔も出来るんだね。点数稼ぎか?
僕たちがいた場所は光の当たらない場所だったけど、お歴々の登場で、一気に豪勢なものとなり、こちらに対して、相手にもしていなかった貴族の方々が、なぜ、あそこに集まるのか? あそこにいる者達は名のある者達なのか? と、公務員を見下していた視線が、羨望の眼差しに変わっていた。
隙あらばと、ただ立っていただけの男爵様も、僕たちの会話を聞き取り、誰に対して口を開けば、ここにいる方々に名前と存在を覚えてもらえるのか、高速で目を動かして、対象を見つけ出している。
「しかし、卿は少し変わったな」
「僕ですか?」
モノクルを整えてから、僕の雰囲気の違いを指摘。それにホーリーさんも首肯で同調。
そんなつもりはないけども、男爵の不当な行いに屈する事なく、謝罪をしつつも、自分を捨てずに、心に決めている思いを折る事なく対応した姿は素晴らしかった。と、褒めてくれた。
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