拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
116 / 604
叙勲の日

PHASE-04

しおりを挟む
 男爵様、手を掲げてる。振り下ろすと、それを合図として、僕に暴行を働くつもりかな。困ったな~。
 痛いのは嫌だけど、ここで僕が制裁を受ければ、それで体裁は取れるから、素直にここから去ってくれるかな?
 よし、一発殴られて、派手に飛んでから気を失ったふりをしよう。そうしよう。 

「おやめください」

「黙れ!」
 局長の発言を一言で断つと、口角を上げて、腕を振り下ろそうとする。

「止めろと言っているのだ」

「黙れと言ってい――――るぅ……?」
 すっごく、体幹に届く低音でしたね、男爵様。僕も久しぶりに聞いたけど、やっぱ怖いよ、この御方の声は、拳を僕に向けていたお付きの方々も直立不動。ついでに整備長も、ワイン瓶をテーブルに戻して同じような姿勢。

「大公様!?」
 男爵様の声が見事に裏返る。
 まさか、下々も参加するような食事会に姿を現すとは思ってもみなかったのかな? 脂汗が凄いですね。

「如何にも、元大公だ」
 元を付けないでください。不死王さんの忠臣様。

尾籠びろうであるな。貴族でありながら、国のために尽くす者をいたぶろうとは」

「しかし、私の子を泣かせたのです」

「黙れ!」
 ひ~。古都の城でも聞いた大音声。本日も灰色髪を髪油でぴっちりオールバック。モノクルがギラリと煌めいております。その奥は猛禽の如き瞳。怖いよ~。

「親の出来が悪いから、子も凡愚に育つのだっ」
 ド直球で言い放ちましたよ。
 詰め寄って、我が儘を口にするような子など育ておって。それで、お前の子は後を継げるのか? 下の者たちを路頭に迷わせない自信は? と、詰問。
 後退りしようものなら、逃がさず追撃。
 男爵様、涙目。

「そもそも、卿は誰だ!」
 うわ~い。誰か知りもしないでお怒りになっていますよ。

「モルドーを治めます、男爵のペアニト・ドゥール・ハワードでございます」

「モルドー?」
 いやいや、大公様。領地くらいは知っておきましょうよ。
 僕が耳元まで移動して、王都の南東の領地であり、麦がよく取れる肥沃な土地です。と、説明してあげる。
 この方、古都以外には興味ないのかな?

「そうか――――肥沃か。前線基地の場に適しておるな」
 おい、大公。やい、大公。
 なんだ? 王都に来たのは敵情視察か? 古都から進軍するつもりか。ダメだぞ。禁止だぞ、侵攻なんて。貴男は古都の内政にだけ力を入れてください。

「とにかく、ここいる者は我らの知り合いだ。下がれ――下衆め。――――カスが!」
 ぼろくそだよ。
 男爵様は不憫だけど、ここまで気持ちよく言い切っていると、笑えてくるよ。

「さあ、皆。これ以上おじさんを怒らせない為にも、向こうで遊ぼうね~」
 深紅のフードを脱いでからの、ホーリーさんの子供たちに向ける優しき言葉。
 でもさ……、それはダメですよ。
 ――――というか、貴男も来てたんですね。

「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ」」」」
 フードの奥は髑髏しゃれこうべのアンデッド、ワイトのホーリーさんのご尊顔。
 恐怖によって立ち尽くす子供もいれば、一目散に泣いて逃げ出す子もいる。あ……、派手に転んでる。可哀想に……。

 ――。

「解せぬ……」
 いや、貴男。鏡を見てくださいよ。初見で貴男を見て逃げに転じる子供は優秀ですよ。いきなりアンデッドが昼の最中に出現したら、大人でも怖いよ。
 
 僕たちも、古都で地面から現れた幽霊兵レヴェナントさんに驚いて、叫んだのを思い出した。

「まあ、ホーリー殿。ここは古都ではないので」
 励ますように大公様が肩に手を当ててる。
 ありえない、古都だと、肩車をせびられてくるのに。子供たち、皆、笑顔で近づいてくるのに……。
 独白なのかな? 聞き取りにくいけど、そんな感じの事をずっと口にしている。よほどショックだっようだ。
 古都では子供たちの憧れの対象ですもんね。王都の子供たちの反応に暗い影を纏っている。
 でも、なんだろう。おかげでアンデット感は出ている。

「子供を襲っていたのですか!?」

「そんなわけがない! 世界の宝にその様な事はしない」
 と、アンデッドの幹部が言っております。もう、さっさと転生して、聖なる存在になってくださいよ。
 心清らかなアンデッドさんに問いかけたのは、サージャスさん。
 護衛を行う立場の彼女がここにいるという事は、もちろんキドさんと、ケサランパサランがいるわけだ。

「やあ、やっとゆっくり話せるね」
 なぜに、ロールさんにだけ話しかけるのかな。あれ? やっぱりシスコンと同じ匂いがする。
 先ほどもまでとは打って変わって、僕たちの周りにはそうそうたるメンバー。
 大公様に、ホーリーさんからなる不死王さんの幹部に、キドさんと、ルガールさん。ちびっ子妖怪ケサランパサランと、お付きの長身美人。
 流石の男爵様の存在も曇ってしまっている。

「いや~見てたよ。この方に無理矢理なにかされそうになってたね」
 ちびっ子が、ロールさんに怖くなかったかい? と、心配な表情を向けての言葉。そんな顔も出来るんだね。点数稼ぎか?
 僕たちがいた場所は光の当たらない場所だったけど、お歴々の登場で、一気に豪勢なものとなり、こちらに対して、相手にもしていなかった貴族の方々が、なぜ、あそこに集まるのか? あそこにいる者達は名のある者達なのか? と、公務員を見下していた視線が、羨望の眼差しに変わっていた。
 隙あらばと、ただ立っていただけの男爵様も、僕たちの会話を聞き取り、誰に対して口を開けば、ここにいる方々に名前と存在を覚えてもらえるのか、高速で目を動かして、対象を見つけ出している。

「しかし、卿は少し変わったな」

「僕ですか?」
 モノクルを整えてから、僕の雰囲気の違いを指摘。それにホーリーさんも首肯で同調。
 そんなつもりはないけども、男爵の不当な行いに屈する事なく、謝罪をしつつも、自分を捨てずに、心に決めている思いを折る事なく対応した姿は素晴らしかった。と、褒めてくれた。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...