拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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お兄様Incoming

PHASE-04

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「おはようございます。整備長」
 寒さに飛び跳ねた整備長は、周囲を見渡している。
 そして、自分の掛け布団が無い事が原因で起きたんだと、寝起きの頭で答えを導いたようだ。

「駄目ですよ。いくら暖房が効いてたからって布団をのかしては、床に落ちてますよ」

「おお、本当だ」
 まったく、風邪でもひいたら大変だ。
 まったく、笑いを堪えるのは大変だ。
 
 支度を調えてから、宿屋一階の食堂で朝食を軽めに取ろうと考えていたけども、
「今から雪山だからね。しっかりと食べておかないと」
 テーブルが隙間なく料理の乗った皿で埋め尽くされている。
 これを全部食べるのは酷ですよロールさん。

「俺、朝からはあんまり食べない人なんだよね」
 その割には、古都でガッツリとした朝食を食べ損ねてガッカリしてましたよね。

「駄目ですよ。食べてください」
 フォークに刺さったソーセージを口元まで運んでもらっている状況。

「はい、あ~んしてください」

「あ~ん」
 おい! 何してくれてるの!? そんなの僕がしてもらいたいよ!
 僕も、あ~んしてください。

「ここにあるのは全部食べますよ。一つも残しては駄目です。物流が大変なんですから。イーロンは」
 こんなに頼んで、申し訳ない気持ちになってしまうんですけども。
 この食事は不退転の決意の表れなんですかね? 物流を復活させるから、ここではたくさんいただきます的な。
 決意も大事ですけども、僕にもあ~ん。

「しっかり食べようね」
 あ~ん……。

「へっ」
 何がおかしいんだよおっさん。
 勝ち誇った顔をするなよ。
 くそ! 食ってやるさ!
 ――片っ端から手にしていって。食べきってやった。
 豪快だね。と、感心されたのが、うれしかった。
 
 ウシャンカ被って、コート着込んでから、雪降る大通りを歩く。
 やはりというべきか、人通りも少なければ、活気も無い。
 本当に死に体だな。
 こんな感じで街を衰退させて占領しようとしている甲鎧王さんの計略なのかな? とも思ってしまう。
 勇者御一行もこんなに寒いところにいる魔王軍には手を出す気が無いんですかね~。
 頑張れよ勇者。僕たちがこんな所に来なくていいようにさ。

 ――。

「ペトロム整備長。おはようございます。ウィザースプーンです」
 返事が無いな。寒いから開けて欲しいんですけど。
 ドアに設けているベルを鳴らしても反応も無い。
 居留守かな? 昨日、相当に嫌がってたもんな。
 無理矢理こじ開けますよ? 寒いんだから。中に入れてもらわないと、山に行く前に凍死しそうだ。

「開けてください」
 ベルが壊れるんじゃなかろうかと思うくらいに叩き鳴らす。
 近所迷惑ですよ~。出てきてくださいよ~。いるんでしょ~。
 ――――あれ、何だろう。
 後ろを見れば、右頬に傷のある強面。
 端から見ればこれはあれではなかろうか。暴利な金貸しの回収に見えるような気がするんだけど。
 うちは十日で五割とごだ。利息だけでも払えよ。今回は元金の支払いは伸ばジャンプしてやるよ。
 みたいに見えているような気がする。
 
 ――……見えてるね。ご近所の家の窓の方向から視線を感じたから、目を向けると、凄い速さでカーテンが閉められた……。
 違いますよ。整備局員です。可愛いものでしりとりなんてしませんからね。

「本当にお願いします。出てきてください」
 恥ずかしいです。いたたまれないです。助けてください。勘違いで窓向こうから向けられる視線が辛いです……。
 
 ――願っていると、ドアノブが動く。
 ようやく観念してくれたようだ。

「どうも」

「どうもじゃないですよ!」
 急いで中に入る。
 なんで、まだ寝間着姿なんですか?

「早く着替えてください」

「行かなきゃならないかな」

「案内だけでいいんで」

「家族がいるんだ」
 別に死にに行くわけじゃ無いんですよ。道案内ね。
 あのね! そもそもね! 

「いい加減にしてくださいよ! 貴方方で対処出来ないから、我々がここまで来たんでしょうが! 案内ぐらいやりやがれぃ!」
 それ今、僕が言おうとしたんだけども。
 久しぶりに見た、整備長の凄み。やはり輩スタイルだ。
 顔の傷に表情。それで凄まれたら、従うしか無い。そもそも、正論だし。
 こっちは貴方方の為に来てるんですからね。怒られて当然ですよ。

「あなた」
 奥様登場。
 整備長が、馬鹿みたいに大声出すもんだから不安な面持ちだよ。
 その後ろには小さなお子様がお二人。これまた不安な面持ち。
 完全に僕たちが悪役のポジションのような気がする。
 聞いてください。ただ、道案内をお願いしたいだけなんです。それがすんだら、帰ってもらって結構ですから。後は、僕たちで何とかするんで、ここまでしてあげるって、正直ないですからね。

「行ってくるよ」
 今生の別れみたいに言わない。
 貴男がそんな態度を取るとですね、僕たちも怖くなってくるんですよ。死を覚悟しないと行けないくらいの場所なのかと……。
 
 あの、お願いですから、僕たちが旦那さんを奪っていく輩みたいな目で見ないでくださいね。
 こちらの整備局のために我々は来てるんですから。 

「行きましょう」
 やっとだよ。ようやく、目的の場に行けるよ。行きたくないけど!
 
 ご近所の方々は、家の住人であるペトロム整備長の姿を目にし、可哀想に。これから何をされるんだろう? みたいな悲壮に満ちた視線と、僕たちには、悪い奴らめ! みたいな怒りの視線が織り交ぜられております。
 このまま、甲鎧王さんに会わずに帰ってやろうか? そうなると、貴方方の物流に対する不安は、いつまで経っても払拭されませんよ。
 どれだけ頑張っても報われない正義の味方みたいな気分だ……。

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