拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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お兄様Incoming

PHASE-05

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 ――――イーロン整備局の馬小屋まで移動して、グライフ君に跨がる。

「あの、乗った事なんですが?」

「だったら、整備長の後ろに」
 ロールさんの後ろなんて絶対に許しませんからね。
 おっさん、すっごくいやな顔だったけども、耐えてくださいね。美女の柔肌は守られました。
 
 ――――。
 
 終始、ペトロム整備長の恐怖に染まった声が、深々と降る雪の空を支配した。
 グライフ君に始めて乗る時は皆そんなもんですよ。
 過剰に怯えていると、馬鹿にされますけどね。僕の場合は未だに馬鹿にされてますけども、以前に比べればましにはなってる。
 最初のころは、おちょくって、僕を落とすような仕草をして、僕が悲鳴上げたら、馬鹿にした目を向けてきたもんだ。
 現在は撫でようとしても、鼻で笑うかのような態度で、僕の手の届かないところに頭を移動させるくらいだね。
 うん……、未だに見下されてるね…………。

 ――。

「うるさかった……」
 耳をさすりながら、不機嫌に目を吊り上げる整備長の横で、大地のありがたみに感謝しているのか、五体投地にも似た姿で、全身で雪肌を堪能しているペトロム整備長。
 
 雪山だからもっと険しいのかと思ったら、中々に平らな部分が続いてるな。
 銀世界の美しい風景を僕の目に届けてくれる。見下ろせば、イーロンの街。
 雪の白と、岩肌の黒の二色のみが支配している世界だけども、これはこれで、シンプルでよい。
 
 ――――もう! そんな風景を楽しんでいる最中なのに、遠くから乱痴気騒ぎが聞こえてくるよ。
 ヒャッハーと聞き取れる大音声。
 頭が軽い感じが伝わってくる。

「きた……」
 五体投地でうつ伏せになったまま、頭だけを上げるペトロム整備長の視線に沿っていけば、濛々と雪煙が上がっており、徐々にこちらに接近してくる。

「あれが甲鎧王さんの雪中訓練的なものですか?」
 ついに来たと、声を震わせて整備長が説明を求めると、ペトロム整備長は首肯で返す。よほど怖いのか、雪の中に潜るようにして、姿を隠そうと懸命になっている。
 その姿を目にして、整備長も腰が引けている。そして、ここで最も頼りになるであろう、自分が乗っていたグライフ君の影に隠れつつ、雪煙を眺めている。
 雪煙を背にして、人影の集団が視界に入ってきた。

「ヒャッハー」
「イーハー」
「ホウホウホウ」
 って、大音声。
 声の質からして楽しんでいるような感じだ。
 訓練というより、雪山を走り回って楽しんでいるご様子。

「犬橇みたいだね」

「ですね」
 頼りにならない二人の整備長をよそに、僕とロールさんはきちんと相手の確認を行う。
 大型の犬――、というより、カグラさんとこのヘルハウンドさんの同族といった感じの大型の狼さんが橇を引いて走っており、僕たちの前で止まると、
「グルルルルル――」
 って、唸ってくる。
 ヘルハウンドさんとはえらい違いだね。あの狼さんも、最後は僕に馬鹿にした視線を向けてきたけども、こちらは牙を見せて、今にも喉元に食らいついてきそうな感じ。
 怖い……。
 体は正直なもので、意志とは関係なく、僕も整備長みたく、グライフ君に近づいている。

「ヤーハー! 女だ! とんでもねえいい女だ! 攫っちまえ」
 さらっと、過激な事を言い出す。
 何なのこの集団は……。
 全身を金属の鎧で包み、兜にはモヒカンのようなデザイン――、兜飾りクレストとかいうんだっけ? 馬の毛なのかな? 顔全体を隠す兜に、肩の部分はる気に充ち満ちたトゲトゲ。
 皆が皆、似た兜を被っているから、表情は分からないけども、声からして、有頂天といってもいいだろう。
 センチュリーも末な恰好とテンションである。

「女こっちこいや!」
 いや~。これはペトロム整備長が怖がるの分かるし、アームラン局長の心が折れるのも頷ける。
 高圧的で、とても下品だ。
 カグラさんが目にしたら、間違いなく炎でこの集団を包み込むね。
 ロールさんを見ながら、腰を振るなよ。セクハラもいいところだ。

「どうも、王都整備局員のロール・ジャイロスパイクといいます」
 どんな状況でも、ぶれないロールさんが凄い。
 普通に挨拶を行って、近づいて行くものだから、馬鹿みたいに腰振ってた方は、その行為が恥ずかしかったのか、ゆっくりとした動きになり、そして、腰を動かすのを止めた。

「王都から何用だ!」
 それでも、テンションが壊れ気味の張り上げた声で話すスタイルは変わらない。
 逆に落ち着き払った対応で、ロールさんがイーロン整備局に代わって、こちらに雪中訓練の停止をお願いしに来たと伝える。
 双方の口調の温度差がかけ離れすぎだ。

「駄目に決まってんだろうが。こちとら現在、イーロン・クエスト。ロトト杯やってんだよ」
 なんだよそれ? 聞いた事ないよ。
 ロールさんが説明を求めると、
 甲鎧王さん主催でやっている犬橇レースだそうで、このロトト山脈を一周する大規模なレースをやってるそうだ。
 妨害工作なんてのもありだそうで、魔法の使用も許可されている。
 その衝撃が原因で、雪崩が発生して、麓に影響が出ている。
 はなはだ迷惑なレースだ。
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