拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
139 / 604
お兄様Incoming

PHASE-10

しおりを挟む
 おい、まだ言い切れてないよ……。
 食い気味だよ……。

「ていうか速いよ! その速さ利用して、運送業やれよ」

「黙れ! 男は喋るな」
 ああ……。甲鎧王の主だなってのが分かる台詞だ……。
 あまりの迅速さに、ついつい口に出して突っ込んだら、立ち籠める煙の中から、これまた速い返事が来たよ。

「すまんな。待ったであろう。どういう状況で救いを求めたのだ。義妹よ」
 立ち籠める埃やら瓦礫の作り出す粉塵が邪魔なんだろうね。あっという間に払いのけたね。どういう原理?

 ――。

「ぶっは!」
 王都でも吹き出したけども、今回も相当だよ。
 なんだよ、その全身真っ赤なスーツは、色が凄くうるさい。白に続いて今回の赤。あれか、以前の白を僕が目にして、これは最後は刺されて鮮血に染めないと物語が終わらない的な事を思っていたを汲んでくれたのかな? だから赤なのかな?
 目がチカチカする明るい赤だな、チクショウめ!
 
 ――まあ、なんだ。そんな事を気にしているのも束の間だ。
 地鳴りが始まったようなんですが。震える山なんですけども。大気も震えだしたよ。

「なん……だと…………」
 明らかにこの大地を振るわせている御方が、見せられているお姫様だっこげんじつに、混乱と怒りを抱いているようでございます。

「どぶいるぢうごうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁあぁっっぁあぁああっぁぁ」
 すまねえ、神聖語アカシック・ラングウィッジはさっぱりなんだ。
 冗談はさておき――、推測するに【どういう状況だぁぁぁぁぁぁ】っと、言っているのだろう。
 ロールさんがお姫様だっこされているのを目にしたものだから、地獄の釜の蓋が開いたのか、そこから聞こえてくる亡者の断末魔の如き叫びを上げていて、このまま続けさせれば、喉が張り裂けて吐血しそうな勢いだ。

「僕が説明します」
「許す」
「自由になりたいんですけども」
「許す」
 僕を拘束していた方々に向かって、はらうような動作をすると、方々、ものすっごい速度で後方に飛んでいき、壁にめり込みましたとさ。
 
 ――――説明中――。
 
 ――――説明中――。
 
 ――――説明中――。
 
 ――――説明終了。
 
 ――――更に震え出す宮殿。邪神がダイナミック参上で開けた天井の穴から、ガラガラと瓦礫が落ちてくるし、柱にヒビが走っております。
 立っているのもやっとなくらい揺れております。
 感情だけで、キドさんと、ちびっ子の合体魔法で発生した地震クラスの揺れが起こっております。
 やっぱり邪神なんだな。恰好はあれだけど……。

「へ? は? 嘘でしょ。パンゲア様?」
 驚きの顔ですな。甲鎧王さんよぉ。僕の事を殴った代償は、ロールさんがこれからどうなるところだったかを、ばっちりとお知らせしたから。きっちり支払ってもらうからな。
 ざまぁ、甲鎧王ざまぁ。

「パンゲア様。お懐かしゅうございます」

「貴様など知らんわ! その不潔極まりない蛇の腕から、さっさと義妹を放さぬか!」

「ふぁ!? 義妹!? それよりも、知らない? 私です忠臣ナーガ・ルジャ・ヌラルキアです」

「男など知らん。我が配下だとしても、男など興味ないわ! はあっゾワッ! 汚らわしい!! 早く義妹を放せ!!」
 ゾワッて。擬音を口にするとか、面白い神だな。

「そ、そんな……」
 甲鎧王は、自分の事を忘れられて、落ち込んでいるご様子。
 興味ないと言われて、凹んでるや。
 力なく腕が落ちて、必然的にロールさんが解放された。

「おお大丈夫だったか!? 義妹よ!」
 まあ、そんなに両手を大きく広げて、胸に飛び込んで来いってか。
 
 ――あら、可哀想。駆け出すロールさんは邪神を通りすぎてら。
 空しく開いた両手を誤魔化したいのか、開いて閉じて、開いて閉じてな体操を始めたよ。長い紫の髪が心なしかパサパサに見える。キューティクル死んだかな?
 
 ――…………。
 
 ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 心と口で雄叫びを上げてしまった。
 柔らかいよ。いい匂いだよ。温かいよ。
 様々な感情が一緒くたになって、今の僕は甘美の世界に没入しております。
 駆け出したロールさんの向かった先は、僕の胸板でした。ありがとうございました。 
 やったぜ!

「だ、大丈夫でしたか」
 裏返りまくる声と共に、ロールさんの両肩に手を当ててあげる。
 小さく、頷くと、
「私よりも、ピート君だよ、血が出てるよ」
 殴られて、唇が切れてたみたいで、結構な血が口から流れてるみたいだ。殴られてズキズキするところが気になって、流れてるのは気付かなかった。
 今となっては、痛みすらも吹き飛ぶ気持ちよさですけどね。
 唯一痛いと思うのは、邪神の視線だ。
 怨嗟に染まった嫉妬の視線を僕に送ってきている。自分の拇指の爪をガジガジと勢いよく噛んでるや。
 視線の痛みなんてなんのその。この心地よさに加えて、ハンカチで優しく血を拭いてくれる優しさにテンションが――、
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 何処にぶつけてやろうかというような、僕とは対極を行く、邪神、怒りの咆哮。
 ビッシビシと、柱やら金ピカの壁に更に大きなヒビが入っていく。
 なので――、
「ロールさん怖かったですよね。もう少しで、酷い目に遭わされそうになったんですからね。蹂躙ですよ。あいつだけでなく、周りの奴らにきっと、心に一生消えない大きな傷を刻まれるところでしたね」
 抑揚なく、ただ大きな声で、この玉座の間にいる方々の耳朶にしっかりと届くように口する。
 輪姦なんて言葉は使用しない。表現がストレートすぎて、ロールさんを傷つけるだろうからね。蹂躙も大分だろうけど、輪姦よりはましだろう。

「ロールさん、頷いて」
 小声で伝えて、頷かせつつ。今から言う台詞を口にして出してほしいと、案を出す。
 ――――なんか、嫌々な面持ち。
 精神的に恐怖を受けたし、イーロン整備局員の方々の為にも、ここで一気に甲鎧王を黙らせましょうと、説得。
 からの――。

「怖かったです。おにいさ――――」
我だけを見ろワン・アンド・オンリー
 ちゃんと聞きたいんじゃないの? お兄様って言葉を! 折角ロールさんが聞かせてあげてるのに、有頂天になって、思いっ切り甲鎧王をぶっ飛ばしました。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...