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お兄様Incoming
PHASE-16
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祭りといっても、いい歳したおっさんが集まり、酒をがぶ飲みしているだけ。
景気よく火なんか上げて、それを囲んで片手には酒瓶もってはしゃいでるよ。
女性陣や小さな子たちは、どこから引っ張り出してきたのか、でっかい釜に家にあった具材をとりあえずぶっ込んで煮て、寒さの中で、そこに集まって口に運んでいる。
匂いからして、ビーフシチューっぽいね~。
お腹空いた……。ちょっとだけのマッケンチーズだけじゃ、胃袋刺激して、余計に空腹感に苛まれる。
「はい、もらってきてあげたよ」
深めの木皿に入った、ごった煮シチューをロールさんが手渡してくれる。
美味そうだ。ビーフにチキンにウインナーと、節操がないけども、これはこれでよし。
口に運ぶけども――、
「しみる~」
口内の傷口に痛みが走った。マッケンチーズと違って液状だからね。コツがいるな。
「ごめん。別のをもらってくるよ」
「いいですよ。右側をうまく使って食べるんで」
ほっと出来る時間の訪れと同時に、アドレナリンも沈静してくると、体の至る所が痛くてたまらない。
殴られた衝撃で、体を床に派手に叩き付けられたからね……。
何だろうか、思い込んでいけばいくほど、体がしんどい……。もう、動きたくない。というか、裸になったり、お風呂に入る時に体を見るのが怖いんだけど。絶対に青あざだらけだよね。くそ~、甲鎧王め! もう少し手加減しろ馬鹿野郎!!
「はい、あ~んして」
「え?」
「はい、あ~ん」
「あ~ん」
甲鎧王――――、よくやった! 体の痛みを理解してくれたロールさんが、僕の口にシチューを運んでくれる。
出来るだけ、左の口内に当たらないようにしながら、首を右に傾げつついただく。
元々うまいごった煮が、ロールさんの優しさという調味料で、大陸一のシチューになったよ。
幸せだ。痛みを忘れさせてくれる喜びだ。
「ヒャッハー」
幸せの時間を邪魔するおっさん達には苛立ちを覚えるけども。
甲鎧王たち謝罪行脚から解放されると、次に待ち受けていたのは、整備長たちにこき使われる立ち位置。酒に食事にと運び回っている。
雪山でヒャッハーうるさかったのにね。今ではおっさん達がヒャッハー言って、凄くうるさい。
典型的な駄目な大人達の姿が眼前にあった。
――――――。
さぶい……。
大気が澄んでいる。真っ青な空を見つめつつ、白息を吐く。渡り鳥が編隊を組んで、Vの字で飛んでる。
「おはようございます」
「おはようございます」
甲鎧王の綺麗な一礼から、朝の挨拶が始まった。
僕が一番か。
――……しかし、やられたい放題だな……。
おっさん達だけでなく、子供たちのいたずら攻撃を、無抵抗で受けた甲鎧王たちの鎧には落書きが施されている。
最早、威厳も恐怖もありゃしない。
「おはよう。早いね」
送れてロールさんが宿から出てきた。
「「「「おはようございます。義妹様」」」」
綺麗に整列して、僕に見せた一礼よりも典雅な一礼を見せる。
「本日も頑張ってくださいね」
素っ気なく返している。まあね、酷い事をしようとしていた方だからね。仕方ないね。
「はっ! これより街道の修復に赴きます――――」
ロールさんの愛想がないから、本日の忠勤の誓いを口にし、義妹様に不遜なる行為。大変申し訳なかったと、平謝りに次ぐ平謝り。威厳のない鎧姿でそこまでされると、ロールさんも困惑。
「もういいです」
って、言うと、さっさと行ってくださいと言わんばかりに背中を押して、作業へと送り出そうとする。
「で、では、これにて。何かお困りに――」
「もう、それいいです。いろんな方に言われてるんで」
甲鎧王の発言をバッサリと斬り捨ててやっていた。
寂しげな視線を向けつつも、体を浮かせると、そのまま一団は作業場へと飛び立っていった。やっぱり飛行魔法って便利だな~。
――――。
「頭、痛い」
貴男はそれしかないのかな? 整備長。
甲鎧王たちが修復に向かってから一刻ほど。
太陽が高い位置にあるところで、宿の一階に降りて来たよ。
ふらつく足と、死にかけた顔。完全なる二日酔い。
「じゃあ、起きた事だし、行きますか」
「待ってくれ~ぃ」
ははっ、英雄とは何処にいるのやら。少なくとも僕の目の前にはいないのは確かだ。
――。
――……コイツ等…………。
いっそのこと、甲鎧王にずっと恐怖を刷り込まれてればよかったのに。
イーロンの整備局員どもめ! なんだこの野戦病院みたいな現状は……。
どいつもこいつも、完全に二日酔いじゃないか!
開放の喜びから、浴びるように飲んだ結果、死屍累々である。
床に寝るんじゃないよ!
唯一、褒めていいのは、うちの整備長よりも早く起床して、職場に来ている事だけだ。
だがしかし、この状態でどうやって職務をこなすつもりなのか……。だらだらしやがって!
これが地方か。王都では通用しないぞ。
――……整備長がいるから、通用しないというのは誤りがあるか……。
しかし、情けない。
ペトロム整備長に、面々。そして復活のアームラン局長。皆、揃って、この体たらく。何が凄いって、寡黙に仕事しているって方が、一人くらいはいるかもと見渡してもいやしないって事だ。
みんな等しく二日酔いのへべれけ状態。
「あの、お別れの挨拶に来ましたよ」
その一言に、顔も上げないで、手だけを振ってきた。
よし、このウィンザーチェアで頭を砕いてやろう。
「大丈夫かよこれで……」
大丈夫じゃない方が、何を言っているのか。貴男も同類ですよ! 寝坊している分、さらに駄目なのに分類されるよ。
でも、本当に大丈夫かな……。
これから、鉄の採掘権を得るか得ないかの、魔王軍との交渉が開始されるだろうに。こんな方々で、対応出来るの?
貴方方は今回の件に関して、当事者なんですからね。これからの交渉における責任の所在は貴方方になるんですから。採掘と生産販売の権利を得てくださいよ。
「帰りますよ!!」
一応、もう一度、確認のために別れの挨拶を行ってみると、また、手だけを振って返してきた。
こいつらは全くもって駄目な奴らだ……。
――――。
広場では住人の方々が、グライフ君に乗った僕たちを見送ってくれるために集まってくれた。
丁寧なお礼の言葉をいただいた。
大部分は、捏造で誕生した英雄である整備長に向けられていたけどね。
まあ、いいけど――――――。
景気よく火なんか上げて、それを囲んで片手には酒瓶もってはしゃいでるよ。
女性陣や小さな子たちは、どこから引っ張り出してきたのか、でっかい釜に家にあった具材をとりあえずぶっ込んで煮て、寒さの中で、そこに集まって口に運んでいる。
匂いからして、ビーフシチューっぽいね~。
お腹空いた……。ちょっとだけのマッケンチーズだけじゃ、胃袋刺激して、余計に空腹感に苛まれる。
「はい、もらってきてあげたよ」
深めの木皿に入った、ごった煮シチューをロールさんが手渡してくれる。
美味そうだ。ビーフにチキンにウインナーと、節操がないけども、これはこれでよし。
口に運ぶけども――、
「しみる~」
口内の傷口に痛みが走った。マッケンチーズと違って液状だからね。コツがいるな。
「ごめん。別のをもらってくるよ」
「いいですよ。右側をうまく使って食べるんで」
ほっと出来る時間の訪れと同時に、アドレナリンも沈静してくると、体の至る所が痛くてたまらない。
殴られた衝撃で、体を床に派手に叩き付けられたからね……。
何だろうか、思い込んでいけばいくほど、体がしんどい……。もう、動きたくない。というか、裸になったり、お風呂に入る時に体を見るのが怖いんだけど。絶対に青あざだらけだよね。くそ~、甲鎧王め! もう少し手加減しろ馬鹿野郎!!
「はい、あ~んして」
「え?」
「はい、あ~ん」
「あ~ん」
甲鎧王――――、よくやった! 体の痛みを理解してくれたロールさんが、僕の口にシチューを運んでくれる。
出来るだけ、左の口内に当たらないようにしながら、首を右に傾げつついただく。
元々うまいごった煮が、ロールさんの優しさという調味料で、大陸一のシチューになったよ。
幸せだ。痛みを忘れさせてくれる喜びだ。
「ヒャッハー」
幸せの時間を邪魔するおっさん達には苛立ちを覚えるけども。
甲鎧王たち謝罪行脚から解放されると、次に待ち受けていたのは、整備長たちにこき使われる立ち位置。酒に食事にと運び回っている。
雪山でヒャッハーうるさかったのにね。今ではおっさん達がヒャッハー言って、凄くうるさい。
典型的な駄目な大人達の姿が眼前にあった。
――――――。
さぶい……。
大気が澄んでいる。真っ青な空を見つめつつ、白息を吐く。渡り鳥が編隊を組んで、Vの字で飛んでる。
「おはようございます」
「おはようございます」
甲鎧王の綺麗な一礼から、朝の挨拶が始まった。
僕が一番か。
――……しかし、やられたい放題だな……。
おっさん達だけでなく、子供たちのいたずら攻撃を、無抵抗で受けた甲鎧王たちの鎧には落書きが施されている。
最早、威厳も恐怖もありゃしない。
「おはよう。早いね」
送れてロールさんが宿から出てきた。
「「「「おはようございます。義妹様」」」」
綺麗に整列して、僕に見せた一礼よりも典雅な一礼を見せる。
「本日も頑張ってくださいね」
素っ気なく返している。まあね、酷い事をしようとしていた方だからね。仕方ないね。
「はっ! これより街道の修復に赴きます――――」
ロールさんの愛想がないから、本日の忠勤の誓いを口にし、義妹様に不遜なる行為。大変申し訳なかったと、平謝りに次ぐ平謝り。威厳のない鎧姿でそこまでされると、ロールさんも困惑。
「もういいです」
って、言うと、さっさと行ってくださいと言わんばかりに背中を押して、作業へと送り出そうとする。
「で、では、これにて。何かお困りに――」
「もう、それいいです。いろんな方に言われてるんで」
甲鎧王の発言をバッサリと斬り捨ててやっていた。
寂しげな視線を向けつつも、体を浮かせると、そのまま一団は作業場へと飛び立っていった。やっぱり飛行魔法って便利だな~。
――――。
「頭、痛い」
貴男はそれしかないのかな? 整備長。
甲鎧王たちが修復に向かってから一刻ほど。
太陽が高い位置にあるところで、宿の一階に降りて来たよ。
ふらつく足と、死にかけた顔。完全なる二日酔い。
「じゃあ、起きた事だし、行きますか」
「待ってくれ~ぃ」
ははっ、英雄とは何処にいるのやら。少なくとも僕の目の前にはいないのは確かだ。
――。
――……コイツ等…………。
いっそのこと、甲鎧王にずっと恐怖を刷り込まれてればよかったのに。
イーロンの整備局員どもめ! なんだこの野戦病院みたいな現状は……。
どいつもこいつも、完全に二日酔いじゃないか!
開放の喜びから、浴びるように飲んだ結果、死屍累々である。
床に寝るんじゃないよ!
唯一、褒めていいのは、うちの整備長よりも早く起床して、職場に来ている事だけだ。
だがしかし、この状態でどうやって職務をこなすつもりなのか……。だらだらしやがって!
これが地方か。王都では通用しないぞ。
――……整備長がいるから、通用しないというのは誤りがあるか……。
しかし、情けない。
ペトロム整備長に、面々。そして復活のアームラン局長。皆、揃って、この体たらく。何が凄いって、寡黙に仕事しているって方が、一人くらいはいるかもと見渡してもいやしないって事だ。
みんな等しく二日酔いのへべれけ状態。
「あの、お別れの挨拶に来ましたよ」
その一言に、顔も上げないで、手だけを振ってきた。
よし、このウィンザーチェアで頭を砕いてやろう。
「大丈夫かよこれで……」
大丈夫じゃない方が、何を言っているのか。貴男も同類ですよ! 寝坊している分、さらに駄目なのに分類されるよ。
でも、本当に大丈夫かな……。
これから、鉄の採掘権を得るか得ないかの、魔王軍との交渉が開始されるだろうに。こんな方々で、対応出来るの?
貴方方は今回の件に関して、当事者なんですからね。これからの交渉における責任の所在は貴方方になるんですから。採掘と生産販売の権利を得てくださいよ。
「帰りますよ!!」
一応、もう一度、確認のために別れの挨拶を行ってみると、また、手だけを振って返してきた。
こいつらは全くもって駄目な奴らだ……。
――――。
広場では住人の方々が、グライフ君に乗った僕たちを見送ってくれるために集まってくれた。
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