拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
154 / 604
洋上

PHASE-07

しおりを挟む
「おはよう」
 女神の声で起こされる。でも、心は晴れる事はない。まさか、むさいおっさんと添い寝になろうとは……、しかもそれをロールさんに見られるとは、
「仲いいね」
 死の宣告にも似た台詞だ。

「そもそも、なんでそこで寝てるの?」
 追撃が厳しいです。

「あの、トイレに行ったら、寝ぼけたままでして、知らないうちにここで寝てました」

「そうなんだ。早く起きて、ご飯にしよう」
 この弁明は、ロールさんのベッドの中で使いたかったのに……。
 くそ、涙が出て来る。
 精神的なダメージから来ているのか、腕に中々に力が入ってくれない。
 生まれたての子馬の如くプルプルとしつつ、体を起こし上げる。
 隣を見れば、おっさん深酒が原因で、未だに起きやしない。このまま永遠に眠ってくれ。
 というか、夜中もそのくらい深く眠っとけよ!
 
 ――――。

「元気ないね」
 ラウンジに移動して、二人で食事。
 シリアルにミルクを入れた簡単な物だ。気分的にそれしか口に入りそうにない。ロールさんはベーグルをカプリと一口。食べる所作だけでも癒やされる。
 その癒やしの対象に添い寝をしようとした事への罪悪感も起床と共に生まれてきて、なんかもう凹みっぱなしなんだけども……。
 まあ、自分が十割で悪いんですけども。

 ――。

 青空だ。甲板で仰向けだ。
 正直、こんなところで仰向けで寝てたら、邪魔でしかないだろうね。でも、大空を眺めて、自分の小さな邪な心を、蒼天に清めてほしいんだ。

「何やってんだ?」
 ドレークさんが細長い物を担って覗き込んでくる。
 担ってる物を見ると、それは釣り竿だった。
 立派な物だ。

「ドレークさんこそ何しようとしてるんです? 護衛でしょ」

「護衛仲間にいい物を食わせてやりたくてな」
 下手な言い訳ですけども、要するにサボって釣りがしたいわけですね。
 怒られますよ。本日も物見台で頑張ってますよ。昨日と同じ方だ。代わってあげればいいじゃないですか。
 もしかしたら、ローテーションのサボタージュですか?

「トローリングやるぞ」
 まあ、船の上で何もする事がないので、暇つぶしにはなりますけどね。ラウンジにいた方々も、ポーカーやらジン・ラミーで時間を潰してたな~。
 もっと、娯楽が欲しくなるね。これだけの客船なのに不満が出るとは……、満ちたりると、次を欲しがる。僕って欲深だな~。
 流石、添い寝を画策していた助平だ……。
 
「行こうぜ」
 の、声に起き上がって、二人して船尾へと向かう――――。

「ていや!」
 豪快にロッドを振って、疑似餌の付いた釣り糸が勢いよく船から離れていく。
 ロッドを船端に固定してから上下に振っている。あんまり動かさなくても、船体が動いてるから、疑似餌は泳いでるように見えるんじゃないですかね?
 雰囲気を楽しんでいるのかな?
 
 リールを巻いては疑似餌を手元に戻し、また遠投。
 この一連の動作ばかりを行っている。
 気がつけば周囲にはギャラリーが出来ていた。皆さんも暇なんだろう。釣果ちょうかはどれほどなのか? と聞いてくる方もいたけど、ドレークさんは〝これから、これから〟と豪快な笑い声で返す。

「いないと思ったら、こんな所にいたんだ」
 船端に肘を付いて釣りを眺めてたら、横に来て僕を覗き込む。
 ドレークさんの覗き込んでくる物とは訳が違う。動悸が一気に加速する。

「暇で」

「誘ってくれればいいのに」
 洋上ではロールさんも暇をもてあましてしまうようだ。
 誘う事も出来たんでしょうけども、罪悪感もあり、声をかけれなかった。こんな事なら変な事を企てなければよかった。なんだよOperation-SOINE-って! 脳内の七人って! アホか僕は!

「釣れねえな~」
 早く釣らないと、本格的に護衛仲間の方々に怒られますよ。
 サボったあげく、釣れないって何だよ! ――って。

「私もやってみたいです」

「お、いいよ」
 好奇心旺盛なロールさんがロッドに手を伸ばす。手を怪我するかもしれないからと、手袋の装着を進められると、つなぎから軽作業用のを取り出して準備万端。

「重い……」
 釣りは初めてといった感じが見ただけで分かる動き。
 ロッドの重さに翻弄されている。
 ドレークさんにコツを教わって、足下に踏ん張りを入れるように腰を落としつつ、ロッドをゆっくりと振って、数度それを繰り返してから、
「えい」
 と、可愛いかけ声と共に投げ釣りを開始。
 
 流石にドレークさんのように遠投は無理だけども、初めてで、大きなロッドを使っての遠投としてなら、センスがあるのは窺える。

「じゃあ、固定してから待機だ」

「分かりました」
 更にギャラリーが増える。
 男性陣が多い。流石はロールさんといったところ。
 釣りの経験がある方は、少しでもお近づきになりたいのか、離れた位置からコツを伝えてくる。
 近づけないのは、ドレークさんがいるからだろうね。

 ――。

「反応無いですね」

「そんな簡単にはこないさ」
 紺碧の穏やかな海に続く釣り糸を凝視しながら、動きがあるかを眺めている。
 ドレークさんがロッドに手を伸ばして、ロールさんに返答しつつ、リールを巻くように指示しようとした時に――――、
 キリキリと糸が、海中へと引かれていった――――。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...