拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
159 / 604
異文化

PHASE-01

しおりを挟む
 ――――ふむ。全くもって、見る物全てが新鮮だ。
 ズボンじゃないぞ。あれが噂に聞く着物という物か? 男の人なのに、スカートみたいなのを履いてるんだな。
 そして、あの有名な、チョンマゲスタイル。
 なんであんな感じで、頭頂部を剃っているのだろう?
 
 ――いかんいかん、笑ってしまったら大変だ。
 僕の想像じゃ、男の人って皆チョンマゲスタイルだと思っていたけど、存外、普通に髪を伸ばして、ポニーテールみたいにしてる方もいるんだな。
 
 足下を眺めれば――、靴じゃないな。サンダルか? あんなので疲れないのかな? この道の状況で? 足の裏が強靱なのだろうか? 
 
 下船してからは正に別世界だ。砂漠に雪山。それはそれで別世界だったけども、服装や建物の造りは、材質は違っていても似ている物だったからね。親近感はあった。でも、ここはそんなの全くないね。
 
 ――――申し訳ないけど、あんまり発展してるとは言えませんね~。
 ワギョウの貿易都市であるデジマ。
 今現在、僕が立っている場所は港。そこから見える目抜き通りは大陸と共通で、商店が並んでいて、大いに賑わっている。
 船からの積み荷を降ろして運び、船に新たな積み荷を積み込む荷役作業の方。
 商人さんの活気の良い声も響いてくる。
 でもな~。なんか、垢抜けてないよね~。

「何をさっきから珍妙な顔してるんだ? あ――元からか」
 ハハ――、チンピラ代表みたいな顔つきの貴男には、何も言われたくないですよ。
 見てくださいよ。この道。目抜きですよ。
 なのに――、石畳じゃない。土ですよ土。この道を人や馬が歩いて踏み固めただけの道。雨が降ると、足下が大変になるような道ですよ。大丈夫ですか? 言っちゃ悪いですが、文明が遅れてませんか? 野蛮人とかじゃないでしょうね。
 怒ると直ぐに斬りかかったりしないか心配ですよ。
 僕が目にするだけでも、結構な割合で帯刀している方々が目に入ってくる。
 信じられない。
 兵士が警邏などで、街中を刀剣を帯びて歩き回っているのは理解出来るけど、普通に帯刀して、普通に歩き回ってる人が凄く多い。傭兵さんの類いか? にしても、多すぎる。大会があるからなのか? でも、服装はボロだよ。ぱっと見、野盗みたいだ。大会なんだから、服装くらい整えてくればいいのに。
 大丈夫なのこの国? 治安とか行き届いてるのかな。

「ロールさん。用心しましょうね」

「え? うん。用心?」
 もう、心配だな~。全然、用心してないじゃないですか。いくら、新鮮な風景だからといって、危険性のあるものを見逃してはいけませんよ。

 ――。

「お~い」
 ん? なんだ?

「お~い」
 段々と声が近づいてくるような。

「お~い」
 声の方向に目を向ければ、総髪の髪型をした男性の方がこちらに手を大きく振りつつ、もの凄い勢いで走ってきている。
 怖いの来たよコレ……。
 まずいよ。帯刀してるよ。通行人が勢いに驚いて、道を空けてる。
 というより、なんでそんなサンダルみたいな履き物で、スカートみたいなの履いて、裾を掴んでの挨拶カーテシースタイルで、そんなに早く走れるのかが知りたい。

「どうも! 整備局の方ですな」

「はい、そうです」
 ロールさん対応しない。こういうのはおっさんがするもんだ。
 整備長に目を向ければ、いつの間にか僕たちの後ろに待機。このおっさん、刀もってる方がいきなり走って接近して来たものだから、怯えてやがる。

「それがし、ライゴウ・イワクニと申します。お奉行の命により、案内役を務めます、与力でございます」

「与力?」
 なんだ与力って? 案内役だから、使いっ走りみたいな立ち位置か? お奉行ってなに? 命を受けたという事は、局長みたいな役職か?
 文化が違えば階級も分からないもんだ。ちゃんと勉強しとけば良かった……。
 
 とりあえず、僕たちも挨拶を返して自己紹介。
 元気よく走ってきたから、それに目を奪われていたけど、ライゴウさんの着る着物は良い生地だな。触るのは失礼だろからやらないけども、厚手のしっかりとした安物ではない作りは、目にするだけで分かる。
 役職の高い方なのかな? でも、使いっ走りっぽいし。
 上半身は黒色で、下半身は僕たちのつなぎと同じ灰色。蛇腹折りっぽいスカートのような履き物。
 材質が良い物だから、同色なのに安物とは違って、落ち着いた雰囲気を醸し出した色だ。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

処理中です...