拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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異文化

PHASE-08

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 美人は万国共通のようで、ロールさんに向けられる視線の凄い。
 打ち水を行っている男性の動きが止まり、美しい銀色の髪と、エメラルドグリーンの瞳に完全に心を奪われているようだ。
 柄杓からダラダラと水が落ち、自分の足を濡らしている。

「ピート殿はあまり疲れてないご様子」

「まあ、慣れてますから」
 石畳に比べれば歩きにくい砂利道ではあるけども、それが問題無いくらいの悪路を演習で走り回ってたし、王都に戻った後も、夜に走ってたり、重い物を担いで鍛えてたりしてるからね。
 タモンさんみたいなムキムキは嫌だけど、細くて、筋肉質ってのを目指して、ロールさんに僕の肉体美をいつでも見せて良いようにね――、へへへへ…………。
 トリップが表情にも出てしまっていたようで、ライゴウさん、若干、僕から距離をとった。
 しっかし、おっさんは体力ないな。つなぎを脱いだと思ったら、もう、足取りが重そうだもの。
 少しは鍛えましょう。
 
 ――ん? 何だろうか? ミンミンミーンって?
 耳をすませば方々から聞こえてくるぞ。
 音の源に目を向ける。

「木が鳴いている? ジュラルミンさんのお仲間が市井にいる!?」
 まさか魔王軍の方々と生活を共にしているのだろうか? 
 そう考えると、僕たちと同じで、魔王軍に対しても寛容な考え方を持っている方々が多いかも知れないな。

「どうも、こんにちは」
 とりあえず、木の方に移動して、挨拶をしてみる。
 返事はない。ミンミン言っているだけだ。
 普段なら、快活の良い返事があるんだけども。

「こんにちは」
 もう一回、言ってみる。
 ――でも、返ってこない。

「ピート君……」
 寂しげな声のロールさん。
 それに呼応するかのようにライゴウさんをはじめ、デジマにお住まいの方々が、僕に怪訝な視線を向けてくる。
 怪訝というか――――、まるで、残念な人を見るような感じだな。
 って! 僕は残念な人間じゃないぞ!! ただ、挨拶をしていただけだ。

「何をやっているので?」
 恐る恐る、ライゴウさんが僕に聞いてきた。

「いや、このかたが声を出していたので、魔王軍の方かと」
「いえ、それ……ただの木ですよ」
「木が鳴くんですか!? なんて、変わった木なんだ」
「いや、あの……」
 なんだろう? 僕の一言一言で、周囲の目がどんどんと、おのぼりさんを見るような視線に変わってきているように見える。
 田舎の何も知らない人間みたいな扱い。あ――、いま、奥の方で僕の事を笑っている方を発見しましたよ。
 馬鹿にしてる? これでも大陸の王都在住なんですが? ここも栄えてはいますが、僕の住んでるところからしたら全然なんですけど。超都会っ子に対して向ける視線じゃないですよ。失礼ですよ。


「ピートよ、コレは木が鳴いてるんじゃない。蝉という虫が木に止まって鳴いてるんだ」
 ――……そんな大事な事は早くに言ってもらいたいもんですな! 整備長よ!! 何をほくそ笑んでから教えてますかね。
 全くもって、恥をかいてしまった。
 何よりもだ、ロールさんなら仕方ないとして、整備長が知っている事を知らなかった自分が情けない!
 誤魔化しようもない。

「そんな昆虫がいるんですね。驚きです」
 顔を真っ赤にしながら返しましたよ。
 蒸し暑いのに、更に暑さが増しました。

「涼む場所とかないですかね」
 急いでこの場所から離れたい。周囲のクスクスとした笑みが耳朶に届いてくるのが心に刺さってくるから。

「じゃあ、少し甘い物でも食べますか?」
 さっき、茶室で一ついただきましたが、このさい避難出来るなら何処でも良いです。
 ライゴウさんの背中を押しつつ移動を開始。
 クスクスと、周囲からでなく背後から聞こえてきた。
 語調は可愛いものだ。普段なら癒やされるけども、恥ずかしい僕は、
「笑わないで下さいよ」
 と、振り向いてロールさんに返す。

「ごめん。ちょっと可愛かったから」
 あれ? 可愛いって言われたよ。こういう茶目っ気もロールさんにはポイント高いのかな? ならば、今度からこういうドジッ子てきなものも含めていくか。
 ――いや、狙ってやれば、直ぐに見通す目を持つロールさんにはマイナスだな。
 狙ってキャラを作るほど、寒いものはない。
 今回はたまたま僕が無知で、それで得られた笑みにすぎない。今後もコレに過信する事なく、まぐれ当たりより、実力で得られるようにならねば!
 
 ――――コメディアンの反省みたいになってしまった……。

 ――。

「ここで、涼みましょう」
 大通りとなる水路に繋がるせせらぎに沿って進むと、ひっそりとした場所に茅葺き屋根の小さな建物。
 側では水車が回っていて、道なりには苔と草木が織りなす色彩。
 何とも幻想的で、先ほどまで喧騒だったのが嘘のような世界が現れた。
 綺麗な水と緑だ。

「エルフが出てきそう」

「そうだね」
 僕の独白にロールさんが相槌を打ってくれる。
 かんざらし? 看板にはそう書いてある。 
 何かを晒しているのかな?
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