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異文化
PHASE-12
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「次はやったる」
へへ、やれるもんなら、やってみな。
勝者だぜ。
――……くそ、それでも股間の痛みは未だにズキズキだ。
軽く飛んでみる。落ちてこいと思いを込めつつ…………。
そんな僕の姿を目にした途端に、
「へ、今回は引き分けにしといてやる」
敗北を認めないで、とんだ負け惜しみだ。
追撃したいけども、まあ、今回は大目に見ときましょう。
まったくさ、本気で股間を殴ってるよね。毎度。
子供作れなくなったら、まじで呪うからな。
ロールさん。腰をさすって下さい。
「まったく、わんぱくになっちゃって」
いや、そんな感想いいんで、さすって下さい。
――……ぷ~ん。
笑みだけ見せて、家の中に入っていくんだもの。
僕に好感を持っているのかどうか不安になってくるよ。
「肩を貸しましょう」
ありがとうございますライゴウさん……。しっかりとした、ごつい体だな。
柔肌が良かった……。
――。
ふい~。
まさか食事まで作ってくれたりするお手伝いさんを、わざわざ雇ってくれるなんてね。
和食だと思ってたのに、普段から食べ慣れた物ばかりだった。こうなると、ワギョウということもあって、口が和食を受け入れる態勢だったからか、些か口が我が儘になっているな。
明日ゆっくり出来たら、和食の食べ歩きでもしてみたいな。
「酒うめ~」
庭からおっさんが、ワギョウの酒をとっくりから直に飲んでる。
なにやら〝独特な感じが良いね~〟と、知ったかぶった事を口にして、一人で寂しく飲んでるよ。
アルコールなら何でもいいくせに。
ハハ……、可哀想な人だ。
薄暮の中で、おっさんの、哀愁を漂わせる背中を見ていると、こっちが辛くなってくる。本人はご満悦みたいだけどさ。
満腹にもなったし、後は風呂に入りたい。
混浴の温泉宿も探してたけど、まさか一軒家を宛がわれるとは思ってなかったからね。
まあ、それはまた今度だ。それよりも一週間、洋上だったからね。拭くだけじゃ体が辛い。
それに、今日の蒸し暑い陽気のせいで体中が汗だらけ、頭もかゆいから、早く湯船に浸かりたい。
いろんな意味で早く入りたい。
――――。
カチャリと、リビングのドアノブが開く。
「ふ~。お先にお湯をいただいたよ」
ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。なんて素敵なんでしょう。
太夫様がいますよ。
「着物ですか」
「浴衣って言うんだって。お手伝いさんに着付けしてもらったよ。意外と簡単だったから、今度は自分一人で出来るかな」
団扇を片手に、ワギョウスタイルを満喫じゃないですか。
やだ~。浴衣の破壊力やだ~。
リビドーが破裂しそうだ。
団扇に扇がれて揺らめく長い銀髪。石けんの香りがここまで届いております。
「おう、ロールちゃん。こっち来なよ」
あん? 僕の安らぎタイムを奪うな。
なんだよ。僕もお供しようと思ったら、こっち来なくていいみたいに、手で追い払う所作をしてきたよ。
また、足に極めてやろうか?
「ささ、こちらへ」
「綺麗なガラス瓶ですね」
青いガラスの瓶を、木製の桶から取り出してくる。
表面から水が滴るので、水で冷やしていたというのは目で見て理解出来る。
「もっと綺麗なのを見せてあげるよ」
得意げなおっさん。テーブルの上に、表面の水気を拭き取った青い瓶を置くと、諸手にグラスを持って、青い瓶に続いてテーブルに置く。
「綺麗――」
先ほどの綺麗よりも、うっとりとした綺麗発言だった。
ロールさんがうっとりするのもしかたがない。
そのグラスは幾何学模様のようなデザインで、赤い装飾の――、まるで宝石から作り出したのかとも思える物だ。
「デジマ切子グラスって言うらしい。今度、これを大陸の方に売りに出そうと考えてるみたいだよ。ライゴウ氏がくれたんだ」
「本当に綺麗ですね」
「これで飲む、この冷酒が最高らしい。湯上がりからの一献」
「いただきます」
え~。付き合うの……。向かい合っているのは四十代のおっさんなのに……。風呂入ってない臭いおっさんなのに……。
きゅぅぅぅって飲んでる。
辺りも暗くなる中で、赤い切子グラスを手にしたロールさんが、あっという間に飲み干した。
「独特の味ですね。キリッとしててフルーツのような香りと甘み」
「な、この和酒って美味いよね。グイグイいけるんだよ。ささ、もう一献」
楽しそうですな。
――…………僕は完全に空気じゃないか!
あ……、おっさんが今、僕を見てニヤリと口角を上げましたよ。くそ~。どれだけ頑張っても、貴男になんか靡かないですよ、ロールさんは!
――……でも、楽しそうに飲んでる。
「ピート君も」
「は~い」
「いいのいいの。あいつは飲めないし、今から風呂だから」
なんだァ? てめェ。
本気でぶっ飛ばすぞ。僕も仲間に入れなさいよ。仲間はずれはよくないよ。いじめにつながるよ。告訴するぞ。
「じゃあ、先にお風呂に入ってきなよ。お茶、冷やしといてあげるから」
「は~い」
スッキリさせてきます。
そうだよ。今日はいっぱい汗をかいたからね。
おっさんじゃあるまいし、汗臭い体で隣に座るのは失礼だ。
どうせ、おっさんはあのペースだ、先に潰れる。
二人きりで、夜景を見ながらお話を楽しもう。
それに……。いろんな意味で早く入りたい、最たる理由――――。
ロールさんが僕の前に、お風呂に入ってたんだ……。
入ってたんだ……。
入ってたんだ……。
入って――――、たんだ……。
――――蘇る、森での入浴。
――――安心して下さい。飲みませんよ!
へへ、やれるもんなら、やってみな。
勝者だぜ。
――……くそ、それでも股間の痛みは未だにズキズキだ。
軽く飛んでみる。落ちてこいと思いを込めつつ…………。
そんな僕の姿を目にした途端に、
「へ、今回は引き分けにしといてやる」
敗北を認めないで、とんだ負け惜しみだ。
追撃したいけども、まあ、今回は大目に見ときましょう。
まったくさ、本気で股間を殴ってるよね。毎度。
子供作れなくなったら、まじで呪うからな。
ロールさん。腰をさすって下さい。
「まったく、わんぱくになっちゃって」
いや、そんな感想いいんで、さすって下さい。
――……ぷ~ん。
笑みだけ見せて、家の中に入っていくんだもの。
僕に好感を持っているのかどうか不安になってくるよ。
「肩を貸しましょう」
ありがとうございますライゴウさん……。しっかりとした、ごつい体だな。
柔肌が良かった……。
――。
ふい~。
まさか食事まで作ってくれたりするお手伝いさんを、わざわざ雇ってくれるなんてね。
和食だと思ってたのに、普段から食べ慣れた物ばかりだった。こうなると、ワギョウということもあって、口が和食を受け入れる態勢だったからか、些か口が我が儘になっているな。
明日ゆっくり出来たら、和食の食べ歩きでもしてみたいな。
「酒うめ~」
庭からおっさんが、ワギョウの酒をとっくりから直に飲んでる。
なにやら〝独特な感じが良いね~〟と、知ったかぶった事を口にして、一人で寂しく飲んでるよ。
アルコールなら何でもいいくせに。
ハハ……、可哀想な人だ。
薄暮の中で、おっさんの、哀愁を漂わせる背中を見ていると、こっちが辛くなってくる。本人はご満悦みたいだけどさ。
満腹にもなったし、後は風呂に入りたい。
混浴の温泉宿も探してたけど、まさか一軒家を宛がわれるとは思ってなかったからね。
まあ、それはまた今度だ。それよりも一週間、洋上だったからね。拭くだけじゃ体が辛い。
それに、今日の蒸し暑い陽気のせいで体中が汗だらけ、頭もかゆいから、早く湯船に浸かりたい。
いろんな意味で早く入りたい。
――――。
カチャリと、リビングのドアノブが開く。
「ふ~。お先にお湯をいただいたよ」
ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。なんて素敵なんでしょう。
太夫様がいますよ。
「着物ですか」
「浴衣って言うんだって。お手伝いさんに着付けしてもらったよ。意外と簡単だったから、今度は自分一人で出来るかな」
団扇を片手に、ワギョウスタイルを満喫じゃないですか。
やだ~。浴衣の破壊力やだ~。
リビドーが破裂しそうだ。
団扇に扇がれて揺らめく長い銀髪。石けんの香りがここまで届いております。
「おう、ロールちゃん。こっち来なよ」
あん? 僕の安らぎタイムを奪うな。
なんだよ。僕もお供しようと思ったら、こっち来なくていいみたいに、手で追い払う所作をしてきたよ。
また、足に極めてやろうか?
「ささ、こちらへ」
「綺麗なガラス瓶ですね」
青いガラスの瓶を、木製の桶から取り出してくる。
表面から水が滴るので、水で冷やしていたというのは目で見て理解出来る。
「もっと綺麗なのを見せてあげるよ」
得意げなおっさん。テーブルの上に、表面の水気を拭き取った青い瓶を置くと、諸手にグラスを持って、青い瓶に続いてテーブルに置く。
「綺麗――」
先ほどの綺麗よりも、うっとりとした綺麗発言だった。
ロールさんがうっとりするのもしかたがない。
そのグラスは幾何学模様のようなデザインで、赤い装飾の――、まるで宝石から作り出したのかとも思える物だ。
「デジマ切子グラスって言うらしい。今度、これを大陸の方に売りに出そうと考えてるみたいだよ。ライゴウ氏がくれたんだ」
「本当に綺麗ですね」
「これで飲む、この冷酒が最高らしい。湯上がりからの一献」
「いただきます」
え~。付き合うの……。向かい合っているのは四十代のおっさんなのに……。風呂入ってない臭いおっさんなのに……。
きゅぅぅぅって飲んでる。
辺りも暗くなる中で、赤い切子グラスを手にしたロールさんが、あっという間に飲み干した。
「独特の味ですね。キリッとしててフルーツのような香りと甘み」
「な、この和酒って美味いよね。グイグイいけるんだよ。ささ、もう一献」
楽しそうですな。
――…………僕は完全に空気じゃないか!
あ……、おっさんが今、僕を見てニヤリと口角を上げましたよ。くそ~。どれだけ頑張っても、貴男になんか靡かないですよ、ロールさんは!
――……でも、楽しそうに飲んでる。
「ピート君も」
「は~い」
「いいのいいの。あいつは飲めないし、今から風呂だから」
なんだァ? てめェ。
本気でぶっ飛ばすぞ。僕も仲間に入れなさいよ。仲間はずれはよくないよ。いじめにつながるよ。告訴するぞ。
「じゃあ、先にお風呂に入ってきなよ。お茶、冷やしといてあげるから」
「は~い」
スッキリさせてきます。
そうだよ。今日はいっぱい汗をかいたからね。
おっさんじゃあるまいし、汗臭い体で隣に座るのは失礼だ。
どうせ、おっさんはあのペースだ、先に潰れる。
二人きりで、夜景を見ながらお話を楽しもう。
それに……。いろんな意味で早く入りたい、最たる理由――――。
ロールさんが僕の前に、お風呂に入ってたんだ……。
入ってたんだ……。
入ってたんだ……。
入って――――、たんだ……。
――――蘇る、森での入浴。
――――安心して下さい。飲みませんよ!
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