195 / 604
ITADAKI-頂-
PHASE-15
しおりを挟む
これから先はまだ想像しか出来ないけど、決勝総当たり戦。
もし、ドレークさんが白色胴着の勝者として、ムツ氏が紺色胴着の勝者として決勝に出てくれば、初戦でこの二人がぶつかってくれる事を祈る。
サージャスさんのために、ムツ氏に手傷でも……。
「悪い顔ですな。悪代官のようだ」
と、お奉行様。
「成敗!」
「いてっ」
チョップを見舞われてしまった。
それにしても、この肩の触れあう狭き席はいいものだ。
ロールさんの成敗チョップも小気味のいい痛み。
楽しくてたまらない。
席順は僕がセッティング。
一番左端がロールさんで、その隣が僕、そしてお奉行様、整備長の並びだ。
完璧なるセッティングに自画自賛したくなる。おっさんの脅威が無いのがいい。
ロールさんが僕以外とは接触しないような配置。
密着独占のロールさんと食事が出来る。美味いおでんの美味しさが、更に増すというもの。
「整備長、どんどん飲んで下さい。美味いんでしょ」
さっさと潰れていただければ、憂いなく食事が出来るってもんだ。酔えば始まる自慢話。他人のそれは聞くに堪えないからね。
お奉行様、もっとお酒を勧めてあげて下さい。
「ささ、どうぞ」
僕の意思が伝わったかのようだ。時宜よく注いでくれている――――。
「サージャスさんに優勝してもらいたいな~」
「全力で応援しないとね」
「もちろんですよ。実力と認知度が比例してませんから。認知度がもっと実力に追いついてくれないと」
「おしてるね~」
うん。笑顔の奥に嫉妬めいたものが潜んでいると感じるのは、気のせいじゃない事を祈りたいところ。
「どんどん励んで、違反金の支払いを終えて、自由になってもらいたいですよ。のびのびとした勇者ライフをおくる事を願ってます。その為には僕も全力で応援しますよ」
喋々と情熱を持ってロールさんに伝えてみる。
あえて煽ってみてもいいのではないかと画策。
さあ、嫉妬Come here!
「前も言ったけど、公務員だからね。肩入れも、ほどほどにね。追々、問題になっても嫌でしょ。まあ、早く違反金の支払いが済むのはいい事だけどさ」
あ……、嫉妬を通り越して不愉快になったかな……。
枡に注ぐお酒が、表面張力に耐えきれずに溢れているじゃないか。
まるで――、今の感情を表しているような。
まずい! これは怒っているのでは?
「はい、ロールさん。このマスタードをつけると味が引き締まって、また違う味わいで美味しいですよ」
「それカラシっていうんですよ」
「だそうです。付けてみてください」
「ふ~ん」
マスター助けて。フォローいれて。
――流石は、対面指呼の距離で接客しているだけあって、今の状況を読み取る事が出来るのか、僕のアイコンタクトに首肯で返すマスターは、カラシだと教えてくれるだけでなく、
「この大根がいいですね。鍋底のヤツです。出汁が染みてて美味しいですよ」
どれだい。僕が手ずから取ろうじゃないか。
マスターに代わって、指し示してくれている物を長い箸を使い、透き通る白い円形の食べ物をキャッチ。
――カブっぽいな。
苦手な箸に更に長さがあるから悪戦苦闘する中、場を持たせるためにマスターが説明。
――――口に入れれば熱々で、ホロリと崩れて口内を幸せにしてくれるそうだ。
僕も食べたいじゃないか。
――――よし! 取れた。
「ありがとう。随分と箸を使うのが上達したね」
「向上心は存外高い方なんですよ。人生満喫するために、様々な事を貪欲に学んでいきますよ」
ロールさんに負けないくらい、自分が負けず嫌いである事を伝えてみると、笑顔になってくれた。
頑張る者には優しい。
それに、サージャスさん関連になると嫉妬も覗かせるし、好意を持たれていると考えるだけで、僕の人生は、いま正に黄金期だ。
「俺にもよそってくれ」
いや~遠いな~。二つ隣なだけだけど、なんだろう、遠くに感じるよ。お奉行様か、マスターに頼んで下さい。
「ささ、もういっぱい」
ロールさんのご機嫌をよくしないと。それにだけ尽力する事こそが、今の僕の成すべき事!
おいしいお酒ですよ~。
「ありがとう」
うん。笑みが可愛くてたまらない。
「女性の気持ちをもう少し理解しないといけませんな」
小声でお奉行様から助言を頂いた。
全くその通りですよ。
でも嬉しいよな~。こんな風に不機嫌になるってさ。
最初の頃なんて僕の事、ただの後輩でしか見てなかったもの。
お祭りの時の破滅の魔法【ただの後輩】あの死の宣告は未だに忘れられないよ……。
よかったよ。甲鎧王に殴られて――。その前から一生懸命やってたけどさ。人間、ひたむきに頑張る事が大事だね。
これ以上は嫉妬を楽しむのではなく、双方の歩み寄りに尽力した方がいいかもね。
「あっ、この巾着モチっての美味しいですよ」
「そうなんだ」
ハハハハ――――。あ~楽しい。
「いやだから。俺のもよそえよ!」
「ご自由にお取り下さい。僕の手じゃ届きませんから」
楽しい夕食が出来て最高だった――――。
もし、ドレークさんが白色胴着の勝者として、ムツ氏が紺色胴着の勝者として決勝に出てくれば、初戦でこの二人がぶつかってくれる事を祈る。
サージャスさんのために、ムツ氏に手傷でも……。
「悪い顔ですな。悪代官のようだ」
と、お奉行様。
「成敗!」
「いてっ」
チョップを見舞われてしまった。
それにしても、この肩の触れあう狭き席はいいものだ。
ロールさんの成敗チョップも小気味のいい痛み。
楽しくてたまらない。
席順は僕がセッティング。
一番左端がロールさんで、その隣が僕、そしてお奉行様、整備長の並びだ。
完璧なるセッティングに自画自賛したくなる。おっさんの脅威が無いのがいい。
ロールさんが僕以外とは接触しないような配置。
密着独占のロールさんと食事が出来る。美味いおでんの美味しさが、更に増すというもの。
「整備長、どんどん飲んで下さい。美味いんでしょ」
さっさと潰れていただければ、憂いなく食事が出来るってもんだ。酔えば始まる自慢話。他人のそれは聞くに堪えないからね。
お奉行様、もっとお酒を勧めてあげて下さい。
「ささ、どうぞ」
僕の意思が伝わったかのようだ。時宜よく注いでくれている――――。
「サージャスさんに優勝してもらいたいな~」
「全力で応援しないとね」
「もちろんですよ。実力と認知度が比例してませんから。認知度がもっと実力に追いついてくれないと」
「おしてるね~」
うん。笑顔の奥に嫉妬めいたものが潜んでいると感じるのは、気のせいじゃない事を祈りたいところ。
「どんどん励んで、違反金の支払いを終えて、自由になってもらいたいですよ。のびのびとした勇者ライフをおくる事を願ってます。その為には僕も全力で応援しますよ」
喋々と情熱を持ってロールさんに伝えてみる。
あえて煽ってみてもいいのではないかと画策。
さあ、嫉妬Come here!
「前も言ったけど、公務員だからね。肩入れも、ほどほどにね。追々、問題になっても嫌でしょ。まあ、早く違反金の支払いが済むのはいい事だけどさ」
あ……、嫉妬を通り越して不愉快になったかな……。
枡に注ぐお酒が、表面張力に耐えきれずに溢れているじゃないか。
まるで――、今の感情を表しているような。
まずい! これは怒っているのでは?
「はい、ロールさん。このマスタードをつけると味が引き締まって、また違う味わいで美味しいですよ」
「それカラシっていうんですよ」
「だそうです。付けてみてください」
「ふ~ん」
マスター助けて。フォローいれて。
――流石は、対面指呼の距離で接客しているだけあって、今の状況を読み取る事が出来るのか、僕のアイコンタクトに首肯で返すマスターは、カラシだと教えてくれるだけでなく、
「この大根がいいですね。鍋底のヤツです。出汁が染みてて美味しいですよ」
どれだい。僕が手ずから取ろうじゃないか。
マスターに代わって、指し示してくれている物を長い箸を使い、透き通る白い円形の食べ物をキャッチ。
――カブっぽいな。
苦手な箸に更に長さがあるから悪戦苦闘する中、場を持たせるためにマスターが説明。
――――口に入れれば熱々で、ホロリと崩れて口内を幸せにしてくれるそうだ。
僕も食べたいじゃないか。
――――よし! 取れた。
「ありがとう。随分と箸を使うのが上達したね」
「向上心は存外高い方なんですよ。人生満喫するために、様々な事を貪欲に学んでいきますよ」
ロールさんに負けないくらい、自分が負けず嫌いである事を伝えてみると、笑顔になってくれた。
頑張る者には優しい。
それに、サージャスさん関連になると嫉妬も覗かせるし、好意を持たれていると考えるだけで、僕の人生は、いま正に黄金期だ。
「俺にもよそってくれ」
いや~遠いな~。二つ隣なだけだけど、なんだろう、遠くに感じるよ。お奉行様か、マスターに頼んで下さい。
「ささ、もういっぱい」
ロールさんのご機嫌をよくしないと。それにだけ尽力する事こそが、今の僕の成すべき事!
おいしいお酒ですよ~。
「ありがとう」
うん。笑みが可愛くてたまらない。
「女性の気持ちをもう少し理解しないといけませんな」
小声でお奉行様から助言を頂いた。
全くその通りですよ。
でも嬉しいよな~。こんな風に不機嫌になるってさ。
最初の頃なんて僕の事、ただの後輩でしか見てなかったもの。
お祭りの時の破滅の魔法【ただの後輩】あの死の宣告は未だに忘れられないよ……。
よかったよ。甲鎧王に殴られて――。その前から一生懸命やってたけどさ。人間、ひたむきに頑張る事が大事だね。
これ以上は嫉妬を楽しむのではなく、双方の歩み寄りに尽力した方がいいかもね。
「あっ、この巾着モチっての美味しいですよ」
「そうなんだ」
ハハハハ――――。あ~楽しい。
「いやだから。俺のもよそえよ!」
「ご自由にお取り下さい。僕の手じゃ届きませんから」
楽しい夕食が出来て最高だった――――。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる