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ITADAKI-頂-
PHASE-27
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「なんて速さだよ」
「素晴らしき精神力」
腫れ上がるほどの激痛を与えたというのに、木斧は右手から離れる事はなく、左手にそのまま移動。床に落とした物を拾い上げるという行動が省略されているので、即座に反撃出来る状態をとれるドレークに賞賛を送る。
「おら!」
遠ざけるように振り回す。そこに精細さはないが、即座の反撃は牽制にはなったようで、ムツが下がる。
それを確認して、痛みを外へと出すように長い呼気を行うと、
「とてつもなく速い一撃だな」
「これが小生の切り札」
無駄を省き、最速で打ち込む。研鑽を積み重ねて手にした技。
「小生。これを絶影と名付けている。この大会では貴殿とエルン殿にだけ使用した。いかんせん全神経を瞬発力に使うので、体力の消耗が著しくてな」
「ハハハ――――」
「なにか?」
「喋々だな。本当によく喋る」
「だから、小生は無口とは言っていない」
「だが、やはり――――」
再度、弓なりとなり、左手に持ち替えた木斧をムツへと投げつける。
得物を投げつけるとは、気でも違ったか、それとも捨て鉢なのか、あきれ果てるムツは迫る飛翔物を他愛無しと躱す。
「だから駄目なんだよ」
「背後ががら空きになるからと?」
投擲に合わせて後ろを取るのは分かっていると、振り返る。
振り上げられた右腕。
丸太のような豪腕に対して、ムツは横一閃。
右肩に直撃し、ドレークの筋肉に木刀が食い込む。
筋繊維が断裂し、砕ける骨の音を耳にしながら、
「だから駄目なんだよ」
同様の発言を口角を上げてから口にする。
打ち込まれた右腕がだらりと力なくぶら下がる。そんな右腕の痛みも気にも留めないとばかりに一歩踏み込み、下方より常人の頭くらいはありそうな拳が、ムツの腹部へと突き刺さる勢いで打ち込まれた。
「ぶふっ!?」
くの字になり、宙を舞い、総髪が乱れる。
「背後を何度もとってんだ。それが対応される事に対応するのは当然だろう」
だからこその右。腫れ上がった右手首は攻撃には使い物にならない。だが気を引かせる事には使える。
右を贄へと捧げて、がら空きの腹部に渾身の左。
見事に決まった。
「油断はしねえ」
落下してくるムツに更なる一撃をと、捕捉して、どんぴしゃで拳を見舞おうと構える。
ムツは軽業師のような曲芸が出来るような状況ではない。
次の一撃を受けて、勝利はドレークの物になる。
知人の勝利に拳を握りしめるピート。
だが、その見つめる先では、くの字から体勢を整えようと苦悶でありながらも、手にした木刀を強く諸手で握り、自分に拳を向けようとするドレークを捉えて、先ほどまでの姿であるように、くの字に戻るように体を曲げつつの縦一文字。
研鑽された技と呼ぶようなものでなく、醜くあろうとも生き残りたいと、生に執着したかのような一振りだった。
その一振りが、ドレークの額にめり込む。
突き上げられた左拳はムツの体の横を通過――。
勝ちへの執念の差か、時の運なのか、攻撃を見舞う事が出来たのはムツだった。
巨体が両膝を突いて崩れ落ちる。
「それまで!」
モンジが割って入る。
全身全霊の一撃に集中したムツは、着地の事までは考えきれず、受け身も取れずに床に打ち付けられる。
ここから試合を見れば、どちらが勝利者なのか分からない状況である。
――。
「あれはまずくないか?」
ニーズィーの独白。
ロールはドレークの凄惨な姿に目を塞いだ。
「医者を!」
ピートの大音声。
だがそれよりも速く動いたのはサージャスだった。跳躍で闘技場に倒れる二人の元へと降り立つと、危険な状況のドレークに、
「治癒聖杯」
燦然と輝く暖かな金色の光が、ドレークの体全体を包み込む。
「上位回復の魔法か――――」
少女が、無詠唱での大魔法を唱える事に、モンジは驚きの表情。
「ん、おぉ……」
意識の無かったドレークが瞬く間に目を覚まし、むくりと大きな体を起こす。
何が起こったのかいまいち理解出来ないでいるが、額に走った衝撃はスッキリと無くなっているし、右肩、手首の痛みもなく、見れば腫れも完全に引いていた。
「素晴らしき精神力」
腫れ上がるほどの激痛を与えたというのに、木斧は右手から離れる事はなく、左手にそのまま移動。床に落とした物を拾い上げるという行動が省略されているので、即座に反撃出来る状態をとれるドレークに賞賛を送る。
「おら!」
遠ざけるように振り回す。そこに精細さはないが、即座の反撃は牽制にはなったようで、ムツが下がる。
それを確認して、痛みを外へと出すように長い呼気を行うと、
「とてつもなく速い一撃だな」
「これが小生の切り札」
無駄を省き、最速で打ち込む。研鑽を積み重ねて手にした技。
「小生。これを絶影と名付けている。この大会では貴殿とエルン殿にだけ使用した。いかんせん全神経を瞬発力に使うので、体力の消耗が著しくてな」
「ハハハ――――」
「なにか?」
「喋々だな。本当によく喋る」
「だから、小生は無口とは言っていない」
「だが、やはり――――」
再度、弓なりとなり、左手に持ち替えた木斧をムツへと投げつける。
得物を投げつけるとは、気でも違ったか、それとも捨て鉢なのか、あきれ果てるムツは迫る飛翔物を他愛無しと躱す。
「だから駄目なんだよ」
「背後ががら空きになるからと?」
投擲に合わせて後ろを取るのは分かっていると、振り返る。
振り上げられた右腕。
丸太のような豪腕に対して、ムツは横一閃。
右肩に直撃し、ドレークの筋肉に木刀が食い込む。
筋繊維が断裂し、砕ける骨の音を耳にしながら、
「だから駄目なんだよ」
同様の発言を口角を上げてから口にする。
打ち込まれた右腕がだらりと力なくぶら下がる。そんな右腕の痛みも気にも留めないとばかりに一歩踏み込み、下方より常人の頭くらいはありそうな拳が、ムツの腹部へと突き刺さる勢いで打ち込まれた。
「ぶふっ!?」
くの字になり、宙を舞い、総髪が乱れる。
「背後を何度もとってんだ。それが対応される事に対応するのは当然だろう」
だからこその右。腫れ上がった右手首は攻撃には使い物にならない。だが気を引かせる事には使える。
右を贄へと捧げて、がら空きの腹部に渾身の左。
見事に決まった。
「油断はしねえ」
落下してくるムツに更なる一撃をと、捕捉して、どんぴしゃで拳を見舞おうと構える。
ムツは軽業師のような曲芸が出来るような状況ではない。
次の一撃を受けて、勝利はドレークの物になる。
知人の勝利に拳を握りしめるピート。
だが、その見つめる先では、くの字から体勢を整えようと苦悶でありながらも、手にした木刀を強く諸手で握り、自分に拳を向けようとするドレークを捉えて、先ほどまでの姿であるように、くの字に戻るように体を曲げつつの縦一文字。
研鑽された技と呼ぶようなものでなく、醜くあろうとも生き残りたいと、生に執着したかのような一振りだった。
その一振りが、ドレークの額にめり込む。
突き上げられた左拳はムツの体の横を通過――。
勝ちへの執念の差か、時の運なのか、攻撃を見舞う事が出来たのはムツだった。
巨体が両膝を突いて崩れ落ちる。
「それまで!」
モンジが割って入る。
全身全霊の一撃に集中したムツは、着地の事までは考えきれず、受け身も取れずに床に打ち付けられる。
ここから試合を見れば、どちらが勝利者なのか分からない状況である。
――。
「あれはまずくないか?」
ニーズィーの独白。
ロールはドレークの凄惨な姿に目を塞いだ。
「医者を!」
ピートの大音声。
だがそれよりも速く動いたのはサージャスだった。跳躍で闘技場に倒れる二人の元へと降り立つと、危険な状況のドレークに、
「治癒聖杯」
燦然と輝く暖かな金色の光が、ドレークの体全体を包み込む。
「上位回復の魔法か――――」
少女が、無詠唱での大魔法を唱える事に、モンジは驚きの表情。
「ん、おぉ……」
意識の無かったドレークが瞬く間に目を覚まし、むくりと大きな体を起こす。
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