拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
208 / 604
ITADAKI-頂-

PHASE-28

しおりを挟む
「こいつぁすげえ」
 何が起こったか分かっていなかったが、横にいるのが魔術学都市クリネア出自の少女だということから、根治させたのがサージャスだと理解は出来た。

「ありがとよ。助かったぜ」
「ボクとの試合も残ってますからね」
「ほっとけば不戦勝だったぜ」
「正々堂々と戦いたいので。ですから――――ムツさんも」
「小生も?」
 自分も治療してもらえるのかと、驚きから食指で自身を指してしまう。

「当然です。負傷者なんですから」

「ああ……」
 邪がいっさい混じっていない笑みを受けて、その純粋さに驚きを隠せないままに治療を受けた二名は、小柄な少女に計り知れない大器を見た。

「体に異常がないならば、半刻後に次を開始するがよろしいか?」
 大事に至らなかった事を安堵するモンジ。
 自身最後の大会でもあるから、死者だけは出さずに無事に終わらせたいと願っていたからか、サージャスの魔法には、心底から感謝の念を抱く。
 
 次はサージャスとドレークとの戦い。

「俺は辞退する!」
 大音声であった。
 突然の事に場内がざわつく。
 ドレークの辞退発言。

「本来なら危ない状態だった。とてもじゃないが俺に次はなかった」
 と、辞退する理由を二の句で継ぐ。

「ボクとしては、戦いたいんですけど」
「いや――やめとく。そもそも器の差ですでに負けてる」
「ですが……」
「応援させてもらうよ。同じ大陸の代表としてな」
 傷を癒やしてくれた礼を述べると、巨体を起き上がらせて、闘技場から下りていく。

「あ……ああ」
 急な事にあっけにとられるモンジであったが、
「急遽ではあるが、次戦が最終戦となる。双方いいかな?」

「ボクはかまいません」

「異を唱えれば無粋。かまいませぬ」
 双方からの承諾を得ると、
「では――合意とし、半刻後と言ったが、最終戦の開始時間は、これより一刻後に変更する」

   *    *

「いきなりの最終戦か~」
 唐突だな。
 サージャスさんが最後まで残る事を願っていたけどさ。
 怪我の治療しなくてもよかったのに……。
 刀剣の技量だけならムツ氏が有利だろうからさ。まあ、どのみち、試合が終われば回復魔法を両方に唱えるつもりだったんだろうけど……。
 他人の事を真っ先に思いやる。だからこそ、勇者なんだよね。
  
 魔法ありきなら総合的にサージャスさんが上だと、依怙贔屓する必要もなく、大声で言い切れるんだけど。
 剣術だけならな~。
 しかも、ここはムツ氏のホーム。決勝ともなれば、ムツ氏に対する応援の熱は最高になるだろう。

「勝って下さいと願うだけだ」

「直接、言ってやれよ」
 独白に返す御仁の声。
 ――――なんでここにいるのかな? ドレークさん……。ここ、一応ね、特別席なんですけども。

「ご友人と聞きまして」
 セキュリティあまいぞ! なにやってんの!! 
 ご友人と言ったらここに入れてもいいのですかい。この上の方には将軍様いるんでしょ? 
 もし――、ドレークさんが殺し屋ならどう対処するつもりなの! まったく!
 ライゴウさんよ、さっきまで闘技場で戦ってた戦士だから大丈夫だろうという根拠のない信頼か? 
 それとも、ワギョウ初日の港でのやり取りを見てたからかい? だから僕たちの友人だと判断したのかい? だとしても駄目だぞ! 与力だろ、しっかりしろ!
 その辺の遠謀深慮を磨きなせい!

「行って元気あげてきなよ」
 と、ロールさんまで賛同するのはちょっと寂しい。
 僕の事を思ってくれてないの?

「モテ期が! ずっと手を握ってたな。終わるまで! さっさと出て行け!!」

「いったいなあ!」
 ああ、そうさ。握ってたさ。羨ましかろう。最高の手触りだったよ。ロールさんの手はさ!
 そんな心地のよい気分に支配されてたのに、頭を思いっ切りどついてさ! 貴男に送り出されるのも癪だけども、決勝だし、僕なんかで勇気あげられるなら、ちょっくら行ってきますよ――――。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...