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ITADAKI-頂-
PHASE-38
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「サージャスさん!!」
床に倒れて反応のない少女の姿に、矢庭に立ち上がるピートは、蒼白な表情になりながら闘技場へと足を進めようとする。
「おいおい」
ドレークがむんずと腕を掴み動きを制する。
「放してください!」
「いや、放したらお前――真っ逆さまだぞ。この高さから落ちれば死ぬぞ」
そう言われて、ピートは今自分がどんな状況なのかと、目を足下に向けると、片足が欄干を乗り越えていた。
あと少しドレークの行動が遅れていたら、常人では助からない高さから落下するところであった。
「すみません……」
「落ち着いて、ちゃんとした正規のルートで。急がば回れ」
ロールがふすまを開いてこっちからと、誘導。
二人してサージャスの倒れる場へと足の動きを加速させる。
その間にも――、
「勝者、ムツ・ノリムネ」
モンジが高らかに勝利者の名を告げており、床でピクリとも動かないサージャスを尻目に歓声がどっと上がる。
上がるのは仕方が無い。上がって当然。勝者が決まったのだから。
しかも自国の人間である。喜んで当たり前。
――――分かるが、側に倒れている少女を心配する声が上がってもいいのではないのかという思いの中、歓声を耳朶に入れるピート。
その声に不快感が芽生え、歯を軋らせ、苛立ちも覚える。
だが、それは自分がサージャスの知人だからという思いもあった。
もしこれが赤の他人なら、心配の声を上げる程度だったかもしれない。会場の銘々も単純にそうなのかもしれない。
だが、それで納得出来るほど、ピートの精神は成熟しているわけではない。
通路を走る中で、壁に拳を叩き込む。怒りの感情をその行為で紛らわせようとしていた――――。
ロールはそれを黙って見ながら、先を走るピートの後ろ姿を追いかける。
闘技場に立つムツは賞賛を浴びつつも、起き上がる事のないサージャスを気遣い、横たわる彼女にモンジと共に声をかけていた。
「サージャス殿」
「大事ないかね――――反応がないな。医療班、急いでくれ!」
ムツが首へと手を当て反応を見るが動きはなく、モンジが再度反応を確かめるように声をかける。
担架を手にした男達が闘技場へと踏み入って、始めてここで彼女に対する心配の声が会場の端々から上がり始める。
「サージャ――――」
ピートが闘技場に辿り着くよりも早く、
「サージャス!」
ピートの頭上を飛び越えて倒れた彼女の抱え上げたのはザイオンであった。
「テメー! いくら何でもやり過ぎだ!! コイツを反側にしろ」
ザイオンは食指をムツへと向けるが、モンジは首を横に振るだけ。
闘技場内でもし命を落とす事になったとしても、対戦者も運営も責任を負う事はない。それを覚悟で参加しているのだから、それは聞き入れられない。
それ以上に、
「安静にさせないといけない状況で、体を無理に起こしあげるんじゃない!」
抱き上げた行為に激怒するモンジ。
彼にとって主審、審判として最後の仕事。死者を出したくないのは同じ気持ちであり、だからこそ、考えも無しのザイオンの行動に叱責する。
頭に血が上った状況での行動を反省して、涙を浮かべながらザイオンがゆっくりとサージャスを寝かせる。
――自分と同じくらいに興奮していたザイオンを目にする事で、逆に冷静さを取り戻すピートは、サージャスを運営と共に担架へと乗せる。
「全力を出さねば勝てなかった。知人に対して申し訳ない」
ムツは深々とピート達へと頭を下げる。
「いえ、全力を出さなかったら、かえって失礼ですからね」
意識のないサージャスの気持ちをピートが代弁する。
冷静を取り戻しつつも、やはり頭部の流血と腫れ上がった左手を目にすれば、感情が高ぶってくる。返答する声には――、やはりというべきか、自然と力がこもってしまう。
開いた手が拳を作る。壁を殴ってしまったからか、ズキリとした痛みが拳から体に伝わった。
ピートに遅れてサージャスを目にするロールはその姿に血の気が引く――――、よりも救いたいという意思が上回り、慄然を胆力で振り払い、ポケットからハンカチを取り出し頭部に当てる。
シルクの白が、あっという間に深紅に染まっていった…………。
床に倒れて反応のない少女の姿に、矢庭に立ち上がるピートは、蒼白な表情になりながら闘技場へと足を進めようとする。
「おいおい」
ドレークがむんずと腕を掴み動きを制する。
「放してください!」
「いや、放したらお前――真っ逆さまだぞ。この高さから落ちれば死ぬぞ」
そう言われて、ピートは今自分がどんな状況なのかと、目を足下に向けると、片足が欄干を乗り越えていた。
あと少しドレークの行動が遅れていたら、常人では助からない高さから落下するところであった。
「すみません……」
「落ち着いて、ちゃんとした正規のルートで。急がば回れ」
ロールがふすまを開いてこっちからと、誘導。
二人してサージャスの倒れる場へと足の動きを加速させる。
その間にも――、
「勝者、ムツ・ノリムネ」
モンジが高らかに勝利者の名を告げており、床でピクリとも動かないサージャスを尻目に歓声がどっと上がる。
上がるのは仕方が無い。上がって当然。勝者が決まったのだから。
しかも自国の人間である。喜んで当たり前。
――――分かるが、側に倒れている少女を心配する声が上がってもいいのではないのかという思いの中、歓声を耳朶に入れるピート。
その声に不快感が芽生え、歯を軋らせ、苛立ちも覚える。
だが、それは自分がサージャスの知人だからという思いもあった。
もしこれが赤の他人なら、心配の声を上げる程度だったかもしれない。会場の銘々も単純にそうなのかもしれない。
だが、それで納得出来るほど、ピートの精神は成熟しているわけではない。
通路を走る中で、壁に拳を叩き込む。怒りの感情をその行為で紛らわせようとしていた――――。
ロールはそれを黙って見ながら、先を走るピートの後ろ姿を追いかける。
闘技場に立つムツは賞賛を浴びつつも、起き上がる事のないサージャスを気遣い、横たわる彼女にモンジと共に声をかけていた。
「サージャス殿」
「大事ないかね――――反応がないな。医療班、急いでくれ!」
ムツが首へと手を当て反応を見るが動きはなく、モンジが再度反応を確かめるように声をかける。
担架を手にした男達が闘技場へと踏み入って、始めてここで彼女に対する心配の声が会場の端々から上がり始める。
「サージャ――――」
ピートが闘技場に辿り着くよりも早く、
「サージャス!」
ピートの頭上を飛び越えて倒れた彼女の抱え上げたのはザイオンであった。
「テメー! いくら何でもやり過ぎだ!! コイツを反側にしろ」
ザイオンは食指をムツへと向けるが、モンジは首を横に振るだけ。
闘技場内でもし命を落とす事になったとしても、対戦者も運営も責任を負う事はない。それを覚悟で参加しているのだから、それは聞き入れられない。
それ以上に、
「安静にさせないといけない状況で、体を無理に起こしあげるんじゃない!」
抱き上げた行為に激怒するモンジ。
彼にとって主審、審判として最後の仕事。死者を出したくないのは同じ気持ちであり、だからこそ、考えも無しのザイオンの行動に叱責する。
頭に血が上った状況での行動を反省して、涙を浮かべながらザイオンがゆっくりとサージャスを寝かせる。
――自分と同じくらいに興奮していたザイオンを目にする事で、逆に冷静さを取り戻すピートは、サージャスを運営と共に担架へと乗せる。
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「いえ、全力を出さなかったら、かえって失礼ですからね」
意識のないサージャスの気持ちをピートが代弁する。
冷静を取り戻しつつも、やはり頭部の流血と腫れ上がった左手を目にすれば、感情が高ぶってくる。返答する声には――、やはりというべきか、自然と力がこもってしまう。
開いた手が拳を作る。壁を殴ってしまったからか、ズキリとした痛みが拳から体に伝わった。
ピートに遅れてサージャスを目にするロールはその姿に血の気が引く――――、よりも救いたいという意思が上回り、慄然を胆力で振り払い、ポケットからハンカチを取り出し頭部に当てる。
シルクの白が、あっという間に深紅に染まっていった…………。
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