拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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トレジャーハントに挑む、三人の公務員

PHASE-03

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「愚かな選択ですね」
 語調からして、優しさも慈悲もないと思っていて――――いいでしょう。

「どうも」
 う……。挨拶したら睨み返された。
 エルンさん達と共に、正座して待機していたスタイルの時の面影はない。
 しかも、挨拶を返してもくれない。挨拶は大事ですよ。なので、そんなに体を斜に構えないでいただきたい。アイムフレンドリーですよ。
 
 僕は戦々恐々。
 ゲイアードさんは普段通り。口一文字で、背筋を伸ばした綺麗な姿勢での佇み。
 ゴートさんはやはり、魔王軍に恐怖しているのか、視線下方四十五度凝視のスタイルで、目を合わせようとはしていない。

「まずはお話から始めましょう」

「話す事などなりませんよ。貴男方がここに来られたのをこの目で直接確認したかっただけなので。話す事があるとするならば、勇敢――いや、蛮勇ですね――――。と、口を開けばいいのでしょうか?」
 勇敢でも蛮勇でもありません。上からの指示で来ただけです。

「死にたいのですか? ここは今ではカグラ様の支配下。進入する者には容赦はしませんよ」

「はい……」
 駄目だこれは……。本気でお怒りのようだ。
 墓荒らし行為だもんね。怒るのは仕方ないね……。

「我々も仕事でして、不本意なんですよ」
 代表してゲイアードさんが口を開くも、炯眼で射返してくる。
 でも、それに対しても涼しい顔が出来るところが凄いよ。ゲイアードさん。

「職務を理由に亡骸を奪うとは、とんでもない職務ですね」
「奪うのではなく、化石を確保です」
「我々にとっては同胞ですよ! 同胞の眠る墓所です」
「声を荒げられても、当方は化石という認識です」
「馬鹿にしてますか?」
「してませんが、貴女方は化石の存在を知っていたのでしょうか? それとも、たまたまでしょうか?」
「地滑りによる偶然です」
「偶然見つかったのでしょう? それを同胞とは、最近まで知り得なかったのに、見つかった途端に同胞やら墓所などと発言するには、理由としては苦しいですね。いや、言い訳と言うべきかな? それまでないがしろにしていたのだから」
「何だと!!」
 たまたま発見された化石を同胞というのに意を唱えるのはいいとしても、かなり挑発的にも思えますよゲイアードさん。
 よろしくないよ。ンダガランさんの眉がつり上がってるし、肩もわなわなと震えてる。

「ちょっとピート君……」
 僕の背中を突きつつ耳打ちしてくるゴートさん。
 顔を合わせれば、目を動かして、周囲を見てと伝えてくる。その表情は真っ青だ。
 
 僕はゴクリと生唾を飲んで見渡す――――。
 なんという事でしょう……。音もなく忍び寄っていた、カグラさん配下の方々に、取り囲まれている状況になっているよ。
 完全に詰んでるんですけど…………。
 以前、僕に、馬鹿にした笑いを向けて立ち去ったヘルハウンドさんがいる。
 でも今回は、牙を見せてこちらに恐怖を与えてくる。
 他にも、ボコボコとお湯が沸騰しているようなイメージで、怒りを体現しているレッドスライムさんもいる。
 周囲の方々が統一して抱いているのは――――、怒りだ……。

「とにかく、同胞の魂を汚すのは――――」
「――魂を汚す?」
「ええ」
「土の中にすっぽかしておいて、汚すなですか」
「やはり馬鹿にしてます?」
「事実を言っているだけですが」
 僕たちの事を気にする事もなく、丁々発止と会話を交わすお二人。
 熱くなっていくンダガランさんに、氷のような応対のゲイアードさん。
 お願いですから刺激しないでください。あめ玉あげるんで、お二人とも糖分を摂取しましょう。

「魂というのは収まるところに収まるもの。現に貴女は亡骸と言っている。亡骸とは、魂の抜けた体に対して使用する言葉だ。化石など所詮は抜け殻。それを尊ぶとは、魔王軍の方々は存外、人に近い感情をお持ちのようだ。死が訪れ、魂がどこへと赴くかは、人以上に理解しているはずなのに」
 ゲイアードさぁぁぁぁぁぁぁぁん! いや、本当に! 落ち着いてもらえませんかね。
 このままだとその魂が赴く先である天界に、今から僕たちが昇天アヴァンティしちゃいますから。
 
 僕はまだ地上で楽しく過ごしたいんです。女性とだって、まだワッショイワッショイした事ないんだから。

「そういう貴男は人であるのに、我々以上に冷徹な考えですね。まるで死者のような冷たい体と心を持ってらっしゃる。流石は高名なネ――――」
 
「――それは違うんじゃないですかね~」
 なんかカチンときた。
 語りを断ってしまったのは申し訳ないけども、我慢できなかったから、無理矢理、会話に入り込んでしまった僕。
 ンダガランさんの発言がどうしても聞き捨てならなかったからね。
 仕方ないね――――。
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