263 / 604
トレジャーハントに挑む、三人の公務員
PHASE-05
しおりを挟む
「ピート君」
「はいぃぃぃぃ」
太った体でなんとか付いてきながら僕に話しかけるゴートさん。
「魔石!」
「それですよ!」
ポシェットを探る。手に当たる感触でそれを取り出す。
目で確認して、お目当ての魔石を手にするまで同じ動作を繰り返す――――。
当たりを引いて前方に投擲。
――――からの、
「インパクト!」
かけ声で発動。
地面に転がった魔石が光り輝き、周囲の土や岩、木を纏っていきながら現れるゴーレム。
身体の側面を見せての佇み具合。サイドリラックスだ。
サイドリラックスにて登場する勤労君といえば、
「肆號君か!?」
僕の方に側面を向けてくるあのスタイルでの登場は、間違いなく肆號君だ。
ちなみに、前回使用した壱號君の登場はサイド・チェスト。
弐號君はアブドミナル・アンド・サイ。
一体一体で、登場ポージングが違うというこだわりって、必要ですか。タモンさん?
ポージングで何號かってのは理解できるけども。
「いいよ、仕上がってるよ。障害が来るよ! 堰き止めて!」
ポージングに声援を送ってからの、指示。
生き物に対しては、安全面から傷つけるような力の行使は出来ないけども、堰き止める事は可能だ。
「はい! よろこんでぇ!!」
勤労君シリーズ共通の返答を行いつつ、肆號君、迫ってくる脅威に向かって走り出す。
僕たちの横を駆けてから、迫るバーン・ワイバーンさんの翼を諸手で掴んで動きを制止。
「よし! いまです!!」
全身全霊で駆け抜けて、この場を去りましょう。
木の根に足を取られないようにしながら、重い荷物を背負いつつ、上がったり下がったりの道無き道を懸命に走る僕たち。
「ぬるい!」
背後から快活で野太い声が聞こえると、肆號君の体が横に真っ二つ。強靱な前脚の爪によって引き裂かれていた。
「赤が似合ってるよ!」
いや、それ違う意味だろう。なぜにやられ際で追撃者の鱗の色を褒めるのか……。
そして、どこまでいっても、ボディビルによって占められた思考を、勤労君たちに植え付けてるんですね。タモンさん……。
あんな事を言えるくらいだから、核である魔石は無事だな。
マップにチェック入れて、やられた場所を記憶する。後で回収しないと。
再び追われる立場だ。
「まだあるでしょ」
ありますけどね。先ほど以上に足場が悪くって、走りながら取り出すってかなり難しいんですよ。
距離の差をつけても、速度も落ちずに直進してくるもんだから、あっという間に差が元通りになりつつある。
「ピート君」
「なんでしょう」
「私がこの中で一番足が速いようだ」
「ですから?」
「私が囮になるから、その隙に」
いやいや、なに言ってんですか。そうなったらゲイアードさんだけに危機が訪れるでしょうが。
「駄目ですよ」
「駄目じゃない。このままだと三人とも危険だ。私なら逃げ切れる自信があるから。行きなさい」
そう言って、先を走っていたゲイアードさんが速度を落として僕たちと併走すると、そのまま更にペースを落としてからバーン・ワイバーンさんに接近。
「ゲイアードさん!」
「ピート君、ここは任せるんだ! ゲイアードさんの気概を無駄にしちゃいけない」
怒号にも似たゴートさんの声に背中を押されるようにして、足を前に進める。
「これは僥倖! 手合わせできるとは!!」
バーン・ワイバーンさん、なぜか嬉々とした声を上げて、僕たちから離れていったゲイアードさんを追いかけていく――――。
「はあ……はあ…………」
「もう、走れない」
いや、この悪路を、その体に加えて、重い六角棒や荷物を持って走れたんだもの、凄いもんだよ。
後は、ゲイアードさんだ。
――――。
どのくらい時間が経過したのかな? 鬱蒼とした森の中だと、いまいち時間帯が分かりづらいけど、かろうじて木々の隙間から見える空は薄暮に支配されている。
森の中は闇夜に近い。
明かりを起こしていいものか……。
目立つと襲われそうだし、でも明かりがあれば、ゲイアードさんも気付いてくれるかもしれない。
迷ったけど、
「小さい明かりを灯しますね」
「賛成」
蛍火が封じられた魔石を取り出す。
「インパクト」
ポツリと呟くように言う事で、ほんのりとした明るさ。
お互いの顔が何とか見えるくらいだ。それでも明かりがあるだけで、精神的に不安が軽減される。
「はあ」
安堵の息を漏らすゴートさん。
滝のような汗をかいているのが良く分かる。
やはり、少しは痩せた方がいいですね……。
「はいぃぃぃぃ」
太った体でなんとか付いてきながら僕に話しかけるゴートさん。
「魔石!」
「それですよ!」
ポシェットを探る。手に当たる感触でそれを取り出す。
目で確認して、お目当ての魔石を手にするまで同じ動作を繰り返す――――。
当たりを引いて前方に投擲。
――――からの、
「インパクト!」
かけ声で発動。
地面に転がった魔石が光り輝き、周囲の土や岩、木を纏っていきながら現れるゴーレム。
身体の側面を見せての佇み具合。サイドリラックスだ。
サイドリラックスにて登場する勤労君といえば、
「肆號君か!?」
僕の方に側面を向けてくるあのスタイルでの登場は、間違いなく肆號君だ。
ちなみに、前回使用した壱號君の登場はサイド・チェスト。
弐號君はアブドミナル・アンド・サイ。
一体一体で、登場ポージングが違うというこだわりって、必要ですか。タモンさん?
ポージングで何號かってのは理解できるけども。
「いいよ、仕上がってるよ。障害が来るよ! 堰き止めて!」
ポージングに声援を送ってからの、指示。
生き物に対しては、安全面から傷つけるような力の行使は出来ないけども、堰き止める事は可能だ。
「はい! よろこんでぇ!!」
勤労君シリーズ共通の返答を行いつつ、肆號君、迫ってくる脅威に向かって走り出す。
僕たちの横を駆けてから、迫るバーン・ワイバーンさんの翼を諸手で掴んで動きを制止。
「よし! いまです!!」
全身全霊で駆け抜けて、この場を去りましょう。
木の根に足を取られないようにしながら、重い荷物を背負いつつ、上がったり下がったりの道無き道を懸命に走る僕たち。
「ぬるい!」
背後から快活で野太い声が聞こえると、肆號君の体が横に真っ二つ。強靱な前脚の爪によって引き裂かれていた。
「赤が似合ってるよ!」
いや、それ違う意味だろう。なぜにやられ際で追撃者の鱗の色を褒めるのか……。
そして、どこまでいっても、ボディビルによって占められた思考を、勤労君たちに植え付けてるんですね。タモンさん……。
あんな事を言えるくらいだから、核である魔石は無事だな。
マップにチェック入れて、やられた場所を記憶する。後で回収しないと。
再び追われる立場だ。
「まだあるでしょ」
ありますけどね。先ほど以上に足場が悪くって、走りながら取り出すってかなり難しいんですよ。
距離の差をつけても、速度も落ちずに直進してくるもんだから、あっという間に差が元通りになりつつある。
「ピート君」
「なんでしょう」
「私がこの中で一番足が速いようだ」
「ですから?」
「私が囮になるから、その隙に」
いやいや、なに言ってんですか。そうなったらゲイアードさんだけに危機が訪れるでしょうが。
「駄目ですよ」
「駄目じゃない。このままだと三人とも危険だ。私なら逃げ切れる自信があるから。行きなさい」
そう言って、先を走っていたゲイアードさんが速度を落として僕たちと併走すると、そのまま更にペースを落としてからバーン・ワイバーンさんに接近。
「ゲイアードさん!」
「ピート君、ここは任せるんだ! ゲイアードさんの気概を無駄にしちゃいけない」
怒号にも似たゴートさんの声に背中を押されるようにして、足を前に進める。
「これは僥倖! 手合わせできるとは!!」
バーン・ワイバーンさん、なぜか嬉々とした声を上げて、僕たちから離れていったゲイアードさんを追いかけていく――――。
「はあ……はあ…………」
「もう、走れない」
いや、この悪路を、その体に加えて、重い六角棒や荷物を持って走れたんだもの、凄いもんだよ。
後は、ゲイアードさんだ。
――――。
どのくらい時間が経過したのかな? 鬱蒼とした森の中だと、いまいち時間帯が分かりづらいけど、かろうじて木々の隙間から見える空は薄暮に支配されている。
森の中は闇夜に近い。
明かりを起こしていいものか……。
目立つと襲われそうだし、でも明かりがあれば、ゲイアードさんも気付いてくれるかもしれない。
迷ったけど、
「小さい明かりを灯しますね」
「賛成」
蛍火が封じられた魔石を取り出す。
「インパクト」
ポツリと呟くように言う事で、ほんのりとした明るさ。
お互いの顔が何とか見えるくらいだ。それでも明かりがあるだけで、精神的に不安が軽減される。
「はあ」
安堵の息を漏らすゴートさん。
滝のような汗をかいているのが良く分かる。
やはり、少しは痩せた方がいいですね……。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる