264 / 604
トレジャーハントに挑む、三人の公務員
PHASE-06
しおりを挟む
ガサ……。
草木に何かが触れる音。
瞬間、身構える僕たち――。
「やあ」
「ゲイアードさん! 無事だったんですね」
「上手くまいてやったよ」
よかった。怪我もないようだ。
三人揃ったから、もう少し明かりを強める。
「少し、場所を移そう」
「ですね」
本当によかった。僕たちより走り回ってるであろうに、やっぱり汗をかいていない。
汗もだけど、緩めで整えたオールバックである艶のある白髪も、全くもって乱れていないのが凄いな。
――。
「しかし、火蛇ンダガランに対して物怖じしないで発言できるって凄いね。そう思いませんかゲイアードさん」
若干の緊張から解放された状態で歩いてる中、僕に対する高評価はありがたいですけども、物怖じしていないは、ないですよゴートさん。
怖かったし、バーン・ワイバーンさんに追いかけられてる時は、生きた心地しなかったですから。
「私に向けられた言葉に対して、反論してくれたのはうれしかったよ」
おう、中々に屈託のない笑顔を返された。
今回の職務中に、こんなにもゲイアードさんの多様な表情を見る事が出来るとは、その笑顔で、サージャスさんの時も応対してくれてたら、あんなにも恐々としなくてよかったのにな~。
「それにこの樹海を逃げながら地図通りに走れたピート君は大したものだよ。少しでも道を違えていたら、二人仲良く彷徨ってたね」
本当だよ。よくもまあ上手い具合に走れたもんだよ。
偶然だよな?
――――ん~。もしかして、あれか? 追跡に手心加えてたのかな? そう考えると、ゲイアードさんも上手い具合にまけたのかもしれない。
現に、
「モンスターと出くわしませんね」
僕たちは地図見て進んでるからね。道なりに従ってるんだから、そこでスタンバイしていれば襲えるはずなんだけど。
それがないよ。
「火蛇殿の付き合えないという発言はこういう事かな」
「ああ~」
ゲイアードさんの言に相槌を入れる。
やっぱり何かしらあったのかな? 焦っているような感じも見て取れたし。何かしら配下の方々が忙しなく活動でもしてるのかな?
手心とかじゃなく、僕たちみたいなしょぼい存在にかまってる暇ないのかも。
それならそれで、ありがたかったりする。襲われないですむから。
油断は出来ないけど……。
気が抜けてるところで襲うって考えも捨てきれないからね。
――。
「今日はこの辺に野営地をかまえようか」
「了解です」
「大賛成で……す……ふぅ、ふぅ……」
ゴートさん…………。
木々の隙間から、空を見上げれば、先ほどの薄暮が闇に支配されている。
――かなり歩いたな。
座るのに適した手頃な石や倒木のある場所で野営の拠点作り。
ゴートさんがバックから鍋と木皿を取り出す。
ゲイアードさんが、広めの空間を探してテントを設営。
僕が自腹をきって購入した食料を出す。分担して持っているとはいえ、よくもこんなに重い荷物を担いでみんな走れたよね。
死ぬ気になれば馬鹿力も出るってもんだね。
取り出した携行食を捕捉すると、魔石から放たれる蛍火にも負けないほどに、ゴートさんは瞳を爛々と光らせてる。
体型通り、よく食べそうだな。大目に買っておいて良かったよ。
後で立て替えた分をお願いしますね。本当に、金欠なので……。
「えっと、水系の魔石は――――あった」
取り出してから鍋の上で〝インパクト〟と口にしてから水を鍋に注いでいく。
魔法が使えなくても、魔石があればちょっとした事は、素人でも出来ちゃうから助かるよ。
でも、魔石に封じられた魔法は有限だからね、無駄には出来ないので、マッチをこすって枯れ草に火をつける。
そして、拾った手頃な枯れ木に火を移したころには、十分な明るさが手に入ったので、光の恩恵を与えてくれていた魔石をポシェットに戻す。
オートミールを鍋に入れて。干し肉を一口大に刻んでから入れる。
「一枚、一枚」
手を合わせてゴートさんが懇願してくるから、一枚干し肉をあげると、喜んで口の中に運んで咀嚼。
「これで酒があればいいんですがね~」
「確かに」
二人ともいける口なのか。うちの整備長みたいな飲み方はしない、大人な飲み方であってほしいね。
――。
「うむ、ドロッとしてきましたよ」
木製のレードルでぐるぐるかき混ぜる。ほんのりといい匂いが鼻孔に届くと、胃袋がいい具合に刺激されてくるよ。
草木に何かが触れる音。
瞬間、身構える僕たち――。
「やあ」
「ゲイアードさん! 無事だったんですね」
「上手くまいてやったよ」
よかった。怪我もないようだ。
三人揃ったから、もう少し明かりを強める。
「少し、場所を移そう」
「ですね」
本当によかった。僕たちより走り回ってるであろうに、やっぱり汗をかいていない。
汗もだけど、緩めで整えたオールバックである艶のある白髪も、全くもって乱れていないのが凄いな。
――。
「しかし、火蛇ンダガランに対して物怖じしないで発言できるって凄いね。そう思いませんかゲイアードさん」
若干の緊張から解放された状態で歩いてる中、僕に対する高評価はありがたいですけども、物怖じしていないは、ないですよゴートさん。
怖かったし、バーン・ワイバーンさんに追いかけられてる時は、生きた心地しなかったですから。
「私に向けられた言葉に対して、反論してくれたのはうれしかったよ」
おう、中々に屈託のない笑顔を返された。
今回の職務中に、こんなにもゲイアードさんの多様な表情を見る事が出来るとは、その笑顔で、サージャスさんの時も応対してくれてたら、あんなにも恐々としなくてよかったのにな~。
「それにこの樹海を逃げながら地図通りに走れたピート君は大したものだよ。少しでも道を違えていたら、二人仲良く彷徨ってたね」
本当だよ。よくもまあ上手い具合に走れたもんだよ。
偶然だよな?
――――ん~。もしかして、あれか? 追跡に手心加えてたのかな? そう考えると、ゲイアードさんも上手い具合にまけたのかもしれない。
現に、
「モンスターと出くわしませんね」
僕たちは地図見て進んでるからね。道なりに従ってるんだから、そこでスタンバイしていれば襲えるはずなんだけど。
それがないよ。
「火蛇殿の付き合えないという発言はこういう事かな」
「ああ~」
ゲイアードさんの言に相槌を入れる。
やっぱり何かしらあったのかな? 焦っているような感じも見て取れたし。何かしら配下の方々が忙しなく活動でもしてるのかな?
手心とかじゃなく、僕たちみたいなしょぼい存在にかまってる暇ないのかも。
それならそれで、ありがたかったりする。襲われないですむから。
油断は出来ないけど……。
気が抜けてるところで襲うって考えも捨てきれないからね。
――。
「今日はこの辺に野営地をかまえようか」
「了解です」
「大賛成で……す……ふぅ、ふぅ……」
ゴートさん…………。
木々の隙間から、空を見上げれば、先ほどの薄暮が闇に支配されている。
――かなり歩いたな。
座るのに適した手頃な石や倒木のある場所で野営の拠点作り。
ゴートさんがバックから鍋と木皿を取り出す。
ゲイアードさんが、広めの空間を探してテントを設営。
僕が自腹をきって購入した食料を出す。分担して持っているとはいえ、よくもこんなに重い荷物を担いでみんな走れたよね。
死ぬ気になれば馬鹿力も出るってもんだね。
取り出した携行食を捕捉すると、魔石から放たれる蛍火にも負けないほどに、ゴートさんは瞳を爛々と光らせてる。
体型通り、よく食べそうだな。大目に買っておいて良かったよ。
後で立て替えた分をお願いしますね。本当に、金欠なので……。
「えっと、水系の魔石は――――あった」
取り出してから鍋の上で〝インパクト〟と口にしてから水を鍋に注いでいく。
魔法が使えなくても、魔石があればちょっとした事は、素人でも出来ちゃうから助かるよ。
でも、魔石に封じられた魔法は有限だからね、無駄には出来ないので、マッチをこすって枯れ草に火をつける。
そして、拾った手頃な枯れ木に火を移したころには、十分な明るさが手に入ったので、光の恩恵を与えてくれていた魔石をポシェットに戻す。
オートミールを鍋に入れて。干し肉を一口大に刻んでから入れる。
「一枚、一枚」
手を合わせてゴートさんが懇願してくるから、一枚干し肉をあげると、喜んで口の中に運んで咀嚼。
「これで酒があればいいんですがね~」
「確かに」
二人ともいける口なのか。うちの整備長みたいな飲み方はしない、大人な飲み方であってほしいね。
――。
「うむ、ドロッとしてきましたよ」
木製のレードルでぐるぐるかき混ぜる。ほんのりといい匂いが鼻孔に届くと、胃袋がいい具合に刺激されてくるよ。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる