拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
287 / 604
トレジャーハントに挑む、三人の公務員

PHASE-29

しおりを挟む
「とりあえず、二人になれる宿に行くか」
 ああ……。これがキレるってやつか……。
 頭の中で本当にプチンって音がするんだな。しっかりと聞き取れた。
 ジュラルミンさんとパゼットさんが原因で死にかけた時も憤怒だったけど、その時を遙かに越えてるな。
 アドレナリンって凄いな。体から、たちどころに痛みが吹き飛んだよ。
 しっかりと両足で立ち上がる。一緒に叱責を受けていたゲイアードさんは相変わらず落ち着き払ってるけど、しっかりとゴートさんの腕を掴んでる。
 掴まれてるゴートさんは青筋立てて、今にもノムロのおっさんを殴り殺しそうな勢いになってる。
 
 でもね――――。

「あぁぁぁぁぁぁぁっぁああぁああ゛――――」
 それは僕の役目なんですよ。
 言葉になんてなりゃしない。獣そのものだよ。咆哮とともにただ前に立つ、にやついた才槌頭に向かって、大きく腕を後ろに引っ張るようにして、腰を回してから、拳を前方に打ち込むだけだ――。
 
 ガスンッ!

「ひぎぃぃぃ……」
 なんだそのふざけた声は! たった一発殴っただけで大げさに吹っ飛んでさ!
 偉そうにしといて、すげー弱いじゃないか。
 権力にだけ頭さげる事しか出来ないクズが、ふざけた事ばかり口にしやがって!
 何を、出入り口のドアに倒れ込んでんだよ。そこから逃げるか? 終わらないぞ。徹底的にやってやるからな!
 どうせもう、殴った時点で終わりなんだから。バイバイ、公務員だから。その腹いせも込めて地獄を見せてやる。

「や、やめて……」
 やめるかボケ! 近づくだけでビビりやがって。ヘタレが!

「一緒に地獄に落ちてやるよ」
 無職どころか、下手すりゃ咎人だ。
 しるか! コイツだけでも道連れにしてやる。

「落ち着こう。ね」
 何、僕を止めようとしてんですか? どいてくださいよ、ロールさん。
 そいつは貴女を傷つけようとしたわけですから。そんな存在は許しません。

「ちょ……と」
 立ちふさがるロールさんの腕を掴んでむりやりどかせる。
 掴まれて、痛みで顔が歪んでるけど、知らない。
 申し訳ないですけど、ロールさんにもむかついてるんで、今の僕は――、
「悪かったから、ちょっと調子に乗りすぎた。今なら不問にしてやる」
「その発言内容に、更にむかついたので、更に痛めつける」
「止めろ! 蛆虫野郎! お前、こんな事して――――」
「子爵様が黙ってないか? 更にむかついたので、病院の臥所で長期入院決定」
 口を開かれれば開かれるほど、不快になっていくるよ! こんなクズは――――、

 ――。

「ふぅぅぅぅぅぅ」
 長い呼気を行って落ち着く。
 落ち着いたところで、コイツを痛めつけるのは変わらない。
 だから――――、そんな事しても無駄なんですよ。

「駄目だよ……ピート君」
 しつこい。僕の背中から手を回して、僕の動きを封じようと懸命になってるロールさん。
 でも僕は、お構いなしに足を進める。
 そして、足を止める。
 大きく拳を振り上げて、先ほどのにたついた表情が、未だに脳裏にこびりついている不快な存在の前に立つ。
 僕の表情が相当に恐怖なのか、真っ青になって震えてるよ。
 今すぐ、鼻っ面に思いっ切り叩き込んで、グチャグチャに潰して――――、
 ガシャァァァァァァァン――――。

「あばぁ!?」
 ドアが開いた……。それによって、ノムロのおっさんの頭にドアが直撃。
 僕に殴られた時よりも激しく吹き飛んでいる。
 いや、ソレ外から開ける時は、引き戸なんだけどな……。
 ドアは室内の方に入ってきている。蝶番ヒンジが外れかかってるよ……。

「なんだこれは? 引き戸だったか」
 え~、なんでいるんですか……。
 高ぶった感情が、変に開かれてしまったドアの音と、そのドアを開いた存在が原因で、緩やかに下がっていく。

「何をする! おろ……かも…………の?」
 悶絶しながら拳を高らかに上げたものの、入室した存在をその目で確認すると、ノムロのおっさんは、拳を静々と下ろしていった。
 僕が前に立った時よりも、青ざめた顔だ。

「ああ?」

「た……た、た、大公様!?」

「なんだ? この、蝿にもなれない蛆虫は?」
 ハハ……。蝿にもなれないのか。少なからず蝿になれる分、蛆虫野郎の方がましかな。
  
 まさかの大公様が現れたよ。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...