拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ

PHASE-13

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「バロニアァァァァァァ」
 大音声のザンデさん。

「はぁ……はぁ」
 目の前がぼやけて見える。足も震えれば、呼吸も動悸も荒くなる。
 僕の眼界で、豆粒みたいな大きさだったバロニアさん。
 振り下ろすと同時に、大きく口を開いたドレッドノートさんに、容易く噛み砕かれた。
 ボリボリという音が聞こえる度に、僕の血の気は引いていき、咀嚼が済むと、ゴクリと嚥下。と、同時に、ブッと吐き出した物が、僕たちの前にザバンと落ちてきて水柱を立てる。

「ぶ!?」
 巨大な水魔龍が吐き出したのは、バロニアさんの大剣と……、それを握っていた前腕が二本…………。
 水柱は赤く、それが僕の顔にかかる……。

「ぶぇ……」
 たまらず僕は戻してしまう。
 沈んでいくバロニアさんの前腕から溢れてくる鮮血と、僕の胃液が、透明度の高い海水を澱ませながら混じり合う……。
 胃液のせいで喉がヒリヒリと痛い。
 これが、ここでは普通の光景なのか……。

「くそ! ウィザースプーンさんはここに」

「え!? ザンデさん!!」
 小島に投げ込まれる僕。
 次に目に映ったのは、ザンデさんが海面を滑るように進み、バロニアさんに唱えた魔風甲ソニックシェル超越力ハーキュリアンって魔法を使用してから、太ももに巻いたベルトにさげられた抜き身のロングナイフ数本を宙に舞わせ、そのロングナイフの群れと共に攻める。
 サージャスさんが不死王さんを攻めてた時に似ている。ソードダンサーって職に恥じない剣の舞だ。
 ――――でも、そんなものが通用するとは思えない巨体が相手だよ……。

「くたばれ! 三枚に下ろしてやる」
 ドレッドノートさんの体に沿うように滑空移動し、胸鰭当たりを、両手に持った弧を描いたサーベルと、舞うロングナイフで襲いかかる――――ところで、
「かはぁ……」
 波の音と、周囲の魔法発動音の中で、ザンデさんの掠れる声が耳朶にしっかりと届いた。
 ドレッドノートさんの前腕と例えるか、前脚と例えるべきか、人間の大人の身長を優に超える爪がザンデさんの腹部を貫いた。
 その一撃で力を失ったのか、宙を舞っていたロングナイフが海面へと落ちる。
 僕は目を反らす事も出来ないでいた。
 本来なら直ぐにでも反らしたいけど、恐怖に支配された体は動かずに、凄惨な光景を目に焼き付けるだけだった。
 
 貫かれた爪から懸命に抜け出そうと、爪先の方へ、叫びながらも諸手で爪を叩きながら移動する。
 人間と同様に五指からなっている。
 貫いた指は食指。
 その食指をゆっくりと折り曲げて、抜け出そうとするザンデさんを、掌に移動させる。
 逃げ場がなく懸命にもがくザンデさんを苦しめて楽しむかのように、残りの指の中指、無名指、小指と順に折り曲げていき、拳を作ると、残った拇指をザンデさんの頭に押し当てて、苦痛を与える中で、体が砕けていく音が僕に届く。
 確実なるとどめとばかりに、更に強く握るドレッドノートさんの拳からは、大量の鮮血が流れ落ち、海面を真っ赤に染め上げていった……。
 拳からかろうじて見えるピンク色のフィッシュボーンも、徐々に深紅へと変色していく……。
 なんとあっけない。かくも人の命とは脆いのか……。

「なん……なんだよ……本当に、なんだよ………………」
 僕の知る魔王軍の行動じゃない。
 確実に、愉悦に浸りながらザンデさんを握りつぶした。楽しんで殺めている……。
 対処しきれないのだろう、僕の思考は焼き切れたようだ、意識が遠のくのが分かる。気を失う一歩前だ。
 強いショックを受けて、精神に大きなダメージをこれ以上受けないように、意識のスイッチを本能で強制的に切ろうとしているみたいだ。

「あ……」
 遠のく前に声が出てしまう。
 ドレッドノートさんと目があってしまった。
 紺碧の鱗に、血のような瞳に縦長の黒目。
 縦長の目を更に細めて、僕を捕捉すると、鎌首を上げた姿勢から、海面にうつ伏せになるような姿勢で、頭を指呼の距離まで近づけてきた。
 手を伸ばせば、僕の身長ほどありそうな鋭利な牙に触れる事が出来そうだ。
 僕を守ってくれる人はいない……。

「なんだ? 戦いを求めるものではないな」
 語りかけてくる。ドラゴンだもんな。しかも最古参位エルダークラスだ。喋れて当然か。
 バーンワイバーンさんも喋ってたからね。
 ドラゴンは昔から、時の番人や賢者、神の代行者と呼ばれる存在。人間なんかよりも遙かに知能の高い存在。

「この様な場に、血の臭いも纏わせていない者が何用か?」
 口を開きたくても、遠のいていく意識を保つのと、先ほどの現実が鮮明に脳内に焼き付いた恐怖から、語る事が出来なくなっている。
 このまま、僕も殺されてしまうのかな……。
 ゲンジ砂漠で、ジュラルミンさんの大魔法で亀裂に落ちていった時の感覚が背後に迫ってる。

「語れないのか。是非もなし。ここはヴィン海域――――死人に口なし」
 ああ……、あっけないもんだな……。
 今までの思い出が蘇ってくる。
 ロールさんや、整備長に、サージャスさん達。楽しく馬鹿やってた時の思い出だ。
 これが走馬燈ってヤツなのか………………。
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