拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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ウィザースプーン、ヴィン海域に行ったてよ

PHASE-32

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「あ~羨ましいっす!」

「ちょっと、近いです」
 ロッケンジーさん。未だに参加できないから、やけ酒にも似たものだ。
 Siegeが狭まってくる。
 
 まったくガチ勢め。変われるなら変わりたいよ。こんな危難。欲しいのは女難なんだよ!
 鬱陶しいな! 酒臭いのがズイズイと距離を詰めてくるから、立ち上がって後退り、それでも追いすがってくる……。

「うわ!?」
 何かに乗り上げて、足を滑らせる。尻餅をついてしまった。

「いたたた……なんだよ」
 踏んだ物を捕捉すれば、篝火で黄金色に輝くタリスマ――――いや、エクスペンダブルズか。
 コロコロと、路傍に転がる石のようにいくつも放置されてる。
 片付けられない駄目人間かよ。
 転がっているソレに目を沿わせれば、箱に山盛りになっているところから、コロコロと転がっていた。

「買いすぎでしょう」

「俺は今日も買い出しですよ……」
 使いっ走りばかりで鬱積してるんだろうけども、僕にそれを向けられてもね。
 しかし――――、使用しても減らないとばかりに買い込んでるな……。
 ゲイアードさんが言うように、正直に事実を述べたラゴットは、行脚での返金と慰謝料でかなりの出費になっただろうけど、この山積みを見たら、出費が余裕で戻ってくるほどの大儲けぶりだというのが分かる。

 どんだけ、ここの方々は使用しているんだ――――。
 興味を抱いた僕は、ポシェットからへの字タイプのハンドヘルドであるチャントカウンターを取りだして、空に向けてみた――――。

「おわ……カウンター壊れてないよね…………?」
 疑って、もう一度、計測するけど、数値は振り切れて、計測不能。
 一般人にはなんの影響もないけど、冒険者さん方、この濃い魔力に当てられてハイになるとかないよね?

「「「「アヒャヒャヒャヒャ」」」」
 ――……普段からハイではあるか…………。
 
 初めて見たな、計測不能って。
 ここは大魔法が使い放題だからね。
 でもって、魔力を暴走させるエクスペンダブルズも原因として大きいな。
 魔力粒子の魔力融合反応を内部で暴走させることで、二倍、三倍の威力に跳ね上がるらしいからね。発動後に飛散する魔力粒子も従来に比べて、二倍、三倍になるって事だな。
 
 ここほどじゃなくても、各地でエクスペンダブルズを使用している冒険者は、駆け出しからベテランまで多くが使用しているって事だから、かなりの粒子が大気中に滞留していると考えられるね。
 ようやく調査らしい、まともな内容が記録できるな。
 帰ったら、この事をレポートにして提出しよう。

「「「「アハハハハハ、ヒャハハハハハハ――――」」」」
 うん……。これは大気中の魔力粒子が関係してるわけじゃない。ここの方々の、そもそもの性格だな……。
 
 ――――。

「どっせい!」

「げひん!?」
 現在、とうとうイスキさんが前線に出るまでに至り、冒険者サイドと戦闘中。
 イスキさんの正拳突きが、一人の方の自慢の鎧に直撃。
 拳は鎧を砕き、そのまま腹から入った拳は、背中から突き出し、青い肌が真っ赤に染まる。

「ぶえ!?」
 背後から迫る、半月斧バルディッシュを手にした方には、拳を引き向いてから迎撃。
 スリットから大いに露出した長い足によるハイキックで、振り下ろされた半月斧バルディッシュの柄ごと、首に蹴撃を打ち込み、両方をへし折る。
 見舞われた方の頭が、三百六十度回転。
 両名の死……。流石にこれはくるね……。吐きそうになる…………。

「はい次!」
 嬉々としているイスキさん。
 四大精霊の一角として、水を司るウンディーネ様なのに、水を使うって事をせずに、迫る冒険者の方々をステゴロで屠る姿は闘神の如し。

「わたくしがいる限り、Yイエローは占拠できませんよ」
 冒険者さんの鮮血が滴る右拳。それをぺろりと舐めながら挑発している。

「くそ! 畳みかけろ!!」

「うん♪ 元気があっていいですね。大魔法といきたいところですが――――」
 僕を見るイスキさん。僕にまで被害が出るというのを考慮してくれたのか、詠唱を唱える事はせず、血のついた拳を、先頭きって攻めてくる方の目に向かって振り浴びせての目つぶし。

「はい、首!」
 左のハイキックが、宣言通りの位置に直撃。がくんと両膝ついて倒れる。
 先頭の方は絶命。

「怯まずに行くぞ!」
 先頭が瞬殺されて、足を止めていた方々が、お互いに鼓舞しあって、固まってイスキさんに向かっていく。
 
 対してイスキさんは、後方に軽く跳躍すると、
「常人とは威力がダンチですよ――――わたくしのは――――、腐毒天水アシッドレイン
 驀地する方々の上空に、見るだけで分かる毒々しい黒紫の雲が現出すると、雲と同色の豪雨が降り注ぐ。
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