拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
366 / 604
帰任からの休日

PHASE-07

しおりを挟む
「王都にはロールさんに会いにですか?」

「それもあるけど、最近、王都でのクエスト数が減少傾向でね」
 そういう内部情報をここで話していいのかな? 僕の事を信頼してくださってるのかな? だと嬉しいけど。
 
 ――――現在、王都にあるクエストは、探索系や、炎竜王のカグラさんやその配下の討伐。
 後者は形骸化しているものだけど。
 
 貴重な品々の探索、採掘なんかも、現在ギルドでは募集がかかっていないらしく、しかもカグラさん討伐的なものは完全になくなっているそうだ。
 僕としてはありがたいけどね。カグラさんが負けるって事は、シズクさんを見る限りあり得ないけど、怪我をしてほしくないからね。

 現在あるのは、貴族の出してるクエストばかりが占めているとの事。
 剣術の指南、特定危険生物に属するのをペットで飼ってたりもするらしいから、それらを大切に世話するとか、冒険者としては楽しくない雑用にも似たクエストばかり。人気も無いので有って無いような内容ばかりだ。
 勘違いしているお偉いさんの相手をするのは御免こうむるからね。ま、王都の貴族はましな人が多いと思うけどね。王様がしっかりしてるだろうから、周りもしっかり者が多いと思うし。
 それでも、堅苦しいのを相手にするのは、自由を愛する冒険者には不向きだ。
 
 得られる報酬も、冒険者の冒険心をくすぐる採掘、探索に比べれば確実に手には入るだろうけど、うま味は少ないからね~。
 だから今現在。王都には冒険者が少ないそうだ。
 王都を見て回ってたけど、意識して見てないから、そんな事には気付きもしなかった。

「僕がいない間にそんな事が起きてたんですね」

「そうなの。今、冒険者の人たちがいるとするなら、お食事処のバッカスさんで、クシュリナさん御一行が座った席に座ることで、力をあやかりたいと思ってる人たちくらいだよ。その後はギルドでクエストを受けることなく、王都を見て回って、そのまま出て行くの」
 なにそれ? あやかりたいとか、見て回るとか、完全にただの旅行じゃないか。

「俺も、数日前に王都に到着してね。ロールに頼んで各冒険者ギルドに足を運んでるんだけど、どこもクエストがない状況なんだよ」
 ああ、局長が、ロールさんは案内役をしてるって言ってたけど、お兄様のために道案内をしてたんだ。

「このサーモンおいし~」

「あ~ん」

「あ~ん♪」
 おい! いい加減に離れろ。いつまで可愛い声で対応してるんだ!

「シュパーブ君はその声のままなの?」
「この声じゃ嫌なの?」
「可愛さの中にある渋いさ。そのギャップがいいんだよ」
「――――じゃあ、もどす」
「それそれ!」
 チッ、器用な声だな。百八十度ちがう声質だよ。
 クエスト枯渇の話も中断されたし。

「しかし、他の魚はともかく、サーモンは運河がある王都のものに軍配が上がるな。キャビアの塩味をサーモンの脂のあまみがマイルドにし、オリーブオイルがまとめ役になっている」
 なに、この二頭身美食家。

「お腹いっぱい食べてね。好きなだけ頼んでいいから」

「俺ちゃん幸せ~」
 コムリィィィィィィィ――――! ヴィン海域に強制送還するぞ!

「まあまあ、落ち着いて。ペットのようなあつかいだから」
 嫉妬に狂った目で僕が見ていたんだろう。お兄様に諭されてしまった。
 大きな金額を払うことになるであろうお兄様に比べたら、怒ることも出来ないね。
 でも、お兄様。そのちっこいのは、この中で一番金持ってますからね。
 全く、シュパーブ君、お兄様を見るんだ。
 稼ぎがいいからといっても、流石に上質な物ばかり頼みすぎだよ。
 男前が若干引きつった笑みになってるよ。
 引きつっても格好良さは保たれてる。
 シュパーブ君の口と、皿から運ばれるサーモンのカルパッチョを往復して見てるよ。
 清潔感のあるくせ毛のないショートな銀髪が、その度にサラリと動いてら。
 ――……僕の錆色頭とは雲泥の差だね……。

 レモンのスライスが入った冷たい水を飲んで、気分もスッキリさわやか――――、になりたいけれど、目の前の光景でなれやしない。
 楽しそうにしやがってチビドラゴンめ! 今日は僕が主人公として、もてはやされるはずなのに!
 ――――ちゃんとおかえりなさい。って言われたからいいけども。今度からシュパーブ君は留守番担当だな。
 
 収穫としては、お兄様とお知り合いになれたことか。僕に対しても印象いいみたいだし、今後、ロールさんとの仲を深めるためにも、力になってもらわないとね。
 
 おかえりなさいの一言で、明日からは楽しく仕事が出来そうだよ。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...