拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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変転

PHASE-02

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「お兄さん」
 背後からの野太い声。
 明らかに僕に向けられたものだった。
 聞こえないふりだ。僕は隠遁術の使い手なんだから、見つかっているわけがない! と、思い込ませてください。

「無視しないでよ」
 隠遁術の使い手ではないです。ごめんなさい。なので肩を掴まないでもらえますか。ぐって、掴まないでいただきたい。怖いから……。
 咄嗟にポーチに手を突っ込んでしまう。
 その目的は銃を手にしたいから。
 引き金を引けば、対象者をダウンさせられる素敵なスタン弾の入った銃。
 ヴィン海域から帰って以降は、携帯することが大事と、危機管理能力が自分の中で上がっている。
 グリップに手を触れさせている状態。後はポーチから取り出して撃つだけ。
 意味も無く撃つと不祥事なので、恐る恐る後ろを振り向く。

「寄ってかない?」
 振り返った先では、笑顔が怖いおじさんが、拇指だけを立てて、それを賭博場に向けていた。

「結構です、急いでますんで」

「あ、そう」
 以外と淡泊だ。簡単に解放してくれた。
 てっきりしつこく言い寄って、最終手段として、脅して中に連れて行くもんだと思ってたよ。
 
 局長は――――、うむ、まだ視界に捉えている。
 
 曲がり角の通過を確認。
 でも、直ぐにはそこへと足を踏み入れない。もし角で立ち止まっていたら見つかる可能性があるからね。
 ――――頭だけをひょこりと角の先へと出す。

「――――あれ?」
 馬鹿な。いない……だと…………。
 横道があるわけでもない。一体、何処へ?

「お兄さん」
 またも肩を掴まれる。しつこいな~。でも怖いので、ゆっくりと後方へと顔を向けると――――、総毛立つとは正にこの事。
 肩を掴まれた手には見たことのある乳白色の指輪…………。

「お兄さん」

「局長……」
 笑顔で語りかけてきましたね。二度もお兄さんって――、冗談で言ってるんですか? 先ほどの、僕と怖い人のやり取りには気付いてたって事ですかね?

「私をつけていたのかな? ウィザースプーン君」
 ばれてるね~。

「いや~、局長を僕が住んでる一階の食堂で見かけたんで、気になりまして。そういえば局長ってどこに住んでるのか~なんて思いましてね。つい後を追いかけてしまって……。まさか、こんな治安が悪そうな所に住んでるんですか?」

「いやいやいや――――」
 声が重いよ。全くもって僕の言い訳が通用していないような気がする。怒られるのかな? 正直、怒られるくらいなら問題ないよね。本当にお兄様の言ったように、別の力を有しているとか、そんなのないよね?

「王都に治安の悪いところなんてないよ」

「ですよね~」
 そっちかよ!

「私は整備局、局長だよ。どこかに修復が必要な箇所がないかを見て回っているんだ。特に街灯は暗くならないと分からないからね。君もそうやって公園の街灯の不全に気がついたんだろ」
 どうやら、僕が追跡していた事へのお咎めはないようだ。
 日夜、こうやって見回りをしているんだな~。

「この辺りは明かりがまだ少ないからね。予算に余裕が出来たところで、街灯を設けていかないとね」
 うん……。本当に見回りなんですよね?
 目が変ですよ? 笑顔だけども、僕との焦点があってませんよ。遠くを見るような視線で見られると、怖いんですけど。
 様々な人たちと出会ってる僕の目は肥えていると自負しております。
 いまの局長の目は怖いです……。

「あの~局長」

「帰りなさい」
 もう、これ以上の詮索はやばいと判断。この人はなんか怖い。
 一礼して、百八十度回頭。足早に去ることを選択。
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