拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

文字の大きさ
420 / 604
変転

PHASE-31

しおりを挟む
「後詰めの兵は?」

「直ぐにでも展開できる」
 ヘルムの問いかけに、髭に触れつつ――――、
「実際に見るがよい」
 継いで語り、子爵の後方に更に大きな黒い空間が広がっていく。
 空間は具現化し、漆黒の門へと姿を変えた。
 開かれれば、そこからは完全装備に身を包んだ兵達が現れる。
 
 出て来る兵の装備はそろって一級品だ。相当に金をかけてるってのが分かる。転進も重要だけども、ここで、こいつらの情報を得ないと。今後の為に。
 距離をとり、転進へと直ぐに移行できる状態で眺める。
 大型の盾であるスクトゥムが外側を守り、バックラーを装備したのが、その内側に配置された陣容。

「本日より、王都を守る――――いや、新たなる王を守護する者たちだ」
 やっぱり話がかみ合っていない。体のいい道化だな。子爵。
 ただ、自分の世界とか、自分が王とか、発言は似たもの同士だな。
 世界と言っている分、ヘルムの方がスケールは大きいな。

「おい、子爵」

「なんだ? 庶民?」
 ゴミを見るような目で誰何。

「ああ!?」
 お、気付いたか、才槌頭。そうだよ僕だよ。ピートだよ。ピートマック・ウィザースプーンだよ。
 
 ――――耳打ちしてる。
 
 才槌頭を持ちしノムロのおっさんは僕が怖いのか、子爵の後ろに隠れながら、ちらちらとこっちを窺っている。
 よし! 気持ち悪いので、殴ろう!

「――――お前か、大公の犬は」

「ハハハ――――大公って。様はつけないんだな。目の前にいたらペコペコするタイプと見た。大体が、火事場泥棒みたいな侵攻を考えてるような薄っぺらい奴みたいだものな」
 全然怖くないんだよな。大公様に比べたら、威厳がこれっぽっちも無いからな。
 だからヘルムに言い様に扱われてるんだろう。哀れな爵位持ちだ。
 歯に衣着せぬ言い方だから、僕の周囲は些か驚いているようだ。
 いやいや、あんなの小者ですよ小者。とるにたりませんよ。

「何ともふざけた奴だ。あれを殺せ」

「自分では手も下せないか」

「逃げに転じているようだが、よくもまあそのような口がきける」
 転進だよ。お前くらいなら余裕じゃい! タイマンはってやろうか。利器の使用を許可してやってもいいぞ。僕は銃を使うけど。

「聞いているぞ。整備局には極上の美人がいるそうだな。お前の前でものにしてやるのも一興だな」

「レベルの低い発想だな。そんなんが王になんかになれるかよ。とりあえずぶっ飛ばす!」
 カグラさんだけでなく、ロールさんを万年発情の初老の毒牙にかけるわけにはいかない。
 ぶっ飛ばすが、気骨ある発言と受け止められたのか、ヘルムとヘイター、アルコンが僕に対して感嘆の息を漏らしていた。
 あいつらも大概だけど、子爵のような小悪党感はないからな。そもそも利用してるみたいだし。

「おい、子爵。あんた利用されてるぞ」
 素直に教えてやる。

「フッ」
 ああ、鼻で笑いやがった。信じてないようだな。まあいいさ。どうせ利用されて終わるんだろうから。ちょっとでも現状の優位性に満足すればいいよ。
 とりあえず、思いっ切り侮蔑した目を向けてやった。

「ノムロの言うように、人の悋気に触れるのが得意なようだな」
 でしょ。お前等みたいなのには評判悪いみたい。
 誇れるね!

「信じてもらえなくてもいいけどさ。横にいる奴ら、城を破壊しようとしてるぞ」

「うん?」
 本当か? とばかりに、ヘルムに目を向けている。

「ええ、新たな城を造るために。あれは象徴としては弱すぎる。この世界のいまを体現しているのでね」
 完全に魔王軍を根絶したいヘルムからすれば、現状を維持するまつりごとを行っている王城は許せないようだ。

「子爵様はグルガルにて落成をお待ちください。中古よりも新品がいいでしょう。城も――――女も」

「で、あるな。だが、ここで崩れゆく愚かな時代と、栄光の新世界へと繋がる状況を見守るのも楽しかろう。ここいらの貴族の屋敷を私の借宿にして見物させてもらう。私物を運んでおけ」
 うわ~。なんて嫌らしい笑み。吐き気がするよ。しかも簡単にのせられてる。
 貴族としての矜持なんだろう。誰の手にも触れられていないものを欲するってのは。
 足跡のない雪道を真っ先に歩いて愉悦に浸りたいタイプだな。
 まあ、歩むのはいいけど、踏み込んだら奈落の穴に続いていたってなるんだろうな。この子爵の未来。
 
 僕の心を覗いているようで、ヘルムがその通りだよ。みたいな笑みを向けてきた。
 子爵はパトロン。悪く例えるなら、体のいいお財布だな。
 まあ、そうだよな。グルガル交易都市がある、クラーク領の主は、この子爵だからな~。
 金はしこたま持ってるよな。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...