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変転
PHASE-42
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「叔父上」
「おお! バルよ。無事であったか」
大公様の存在に王様が駆け寄ると、ミドルネームで名を呼び、健在な姿に安堵している。
流石は前王の弟という立場はダテじゃなく、王様が深々と頭を下げて挨拶をしている。
王様、魔王さんにも典雅な挨拶だったし、腰の低い方なのかもね。
でも、頭を下げているのは叔父でしょうが、不死王軍の幹部ですよ。
悪い例えで申し訳ないけども、頭を下げているお相手は、売国奴って言葉が似合うんですよ。口には出さないけどさ。
「面目次第もございません。父が都と定めた地を奪われる形となってしまいました」
「気にせずともよい。人が集まる場所が国となるのだ。王都など見てくれよ。お前が健在ならそこが王都よ」
「叔父上……」
「情けない顔をするな。それに奪われたのならば、奪い返せばよいだけの単純明快な答えよ! 一人で考えて、簡単な答えを難しくするなよ。お前の周囲には共に考えてくれる者達が多くいる」
――――なんだろう――――。大公様が、大公様みたいな事を口にしている。
打倒勇者! って、普段から考えている方からは想像も出来ない、大公然たる姿だよ。
おいおい、実をいうと、そっくりさんなんじゃないのか? こんなの僕の知ってる大公様じゃないよ。影武者だ。間違いないよ。
「なんだ?」
「いえ、別に……」
モノクルがギラリと輝いたので、ここは突っ込まないようにしよう。
「それで、叔父上。ここには?」
まさか、古都でかくまってくれるのだろうか。
あそこは城壁だけでなく、四方を険しい山脈に囲まれた天然の要害からなっているし、いまは不死王さんが統治しているから、疲れも飢えも知らないアンデッドさん達の籠城は、古今最強であるのは間違いないな。
――――問題は、ここから古都までの距離が遠すぎるってことだ。とてもじゃないが現状の皆さんが踏破するのは難しい。
「あ、空間移動魔法」
これなら問題なく古都まで移動出来るな。
「阿呆」
あ! なんだ大公。僕はどちらかというと賢い方だぞ。
「おおかた、今後の事で、古都への避難を頭の中で巡らせていたのだろう」
はたして正にさ! なのになんで阿呆呼ばわりされないといけないのか、忌憚のない意見を聞かせてくれ。
「空間移動魔法は、体に大きな負荷がかかる、それに耐えうるだけの鍛錬を行った者でなければ、空間の狭間で事切れる。もしくは体に防御魔法を使用しなければならない。流石にこの人数に防御魔法を使用するとなると、時間だけが過ぎていく」
あ、そういう事なんだ。
なるほど、僕たちみたいな一般人は耐えられなくて死んじゃうんだな。知らなかったよ。ケルプト山では僕、空間魔法で詰め所まで移動したからね。あの時、僕に防御魔法が使用されていたんだな。
まるで後付けのような設定だな。
そりゃそんな便利な魔法があるなら、物流ももっと楽になってもいいもんな。未だに、馬車や船が活躍するのにはそういう理由があるんだな。
大公様はホーリーさんに防御魔法でも――――、
「私は、鍛えているからな」
掌から火球が現出。空に向かって放つ。
魔法が使えるんだ。流石は打倒勇者とか息巻いてるだけあるよ。
「まったく、阿呆のせいで話が途切れたな」
悪かったな。
「ここより南にはモルドーがあるだろう」
「ええ」
「そこの男爵が全面的に協力したいそうだ。モルドーは領地は狭いが、肥沃な土地からなる穀倉地帯だ。相当に溜め込んでいるだろうな。接収して、兵糧と流民の食料にあてよう」
おいおい恨まれるんじゃないのか、そんな事をすると。
それに、モルドーの男爵って……。
「王都からの流民の数は相当だ。古都からも援助は行う」
元々王都であった古都は、現王都、モルドーが太刀打ち出来ないほどの広大な穀倉地帯でもあるからね。
食べなくていい方々も多いし、古都こそ溜め込んでるだろうな。
「では、私は先にモルドーで待っている。王として、民を無事に連れてくるのだ」
「分かりました」
会話を終えると、ホーリーさんが展開した空間魔法の中に入っていき、ホーリーさんも王様に一礼して大公様の後を追った。
突然に王都に現れるのって、こうやって移動してたからか。
「よし! とりあえず、大公様は王都より五里以内にあるシダール湖での空間移動魔法使用だったから、違反金を取らないと。ですよね、違令管理課のゲイアードさん」
「残念。王族には適応されないよ」
有事の時を考えると当たり前ですからね。知ってます。知ってます。
でも現在、魔王軍だし。元大公ですから。元王族でいいんじゃないんでしょうか?
「おのれ」
と、ここで大公様の現在の主である魔王さんが合流。口の周りにはイチゴジャムがついている。どうやら、バッカスの軽食を食べてたようだ。
レインちゃん同様に、食い意地はあるようだ。
大公様たちが、主である自分に挨拶もせずに去っていったのが気に入らなかったようだ。
背丈と器の大きさは比例するらしい――――。
「おお! バルよ。無事であったか」
大公様の存在に王様が駆け寄ると、ミドルネームで名を呼び、健在な姿に安堵している。
流石は前王の弟という立場はダテじゃなく、王様が深々と頭を下げて挨拶をしている。
王様、魔王さんにも典雅な挨拶だったし、腰の低い方なのかもね。
でも、頭を下げているのは叔父でしょうが、不死王軍の幹部ですよ。
悪い例えで申し訳ないけども、頭を下げているお相手は、売国奴って言葉が似合うんですよ。口には出さないけどさ。
「面目次第もございません。父が都と定めた地を奪われる形となってしまいました」
「気にせずともよい。人が集まる場所が国となるのだ。王都など見てくれよ。お前が健在ならそこが王都よ」
「叔父上……」
「情けない顔をするな。それに奪われたのならば、奪い返せばよいだけの単純明快な答えよ! 一人で考えて、簡単な答えを難しくするなよ。お前の周囲には共に考えてくれる者達が多くいる」
――――なんだろう――――。大公様が、大公様みたいな事を口にしている。
打倒勇者! って、普段から考えている方からは想像も出来ない、大公然たる姿だよ。
おいおい、実をいうと、そっくりさんなんじゃないのか? こんなの僕の知ってる大公様じゃないよ。影武者だ。間違いないよ。
「なんだ?」
「いえ、別に……」
モノクルがギラリと輝いたので、ここは突っ込まないようにしよう。
「それで、叔父上。ここには?」
まさか、古都でかくまってくれるのだろうか。
あそこは城壁だけでなく、四方を険しい山脈に囲まれた天然の要害からなっているし、いまは不死王さんが統治しているから、疲れも飢えも知らないアンデッドさん達の籠城は、古今最強であるのは間違いないな。
――――問題は、ここから古都までの距離が遠すぎるってことだ。とてもじゃないが現状の皆さんが踏破するのは難しい。
「あ、空間移動魔法」
これなら問題なく古都まで移動出来るな。
「阿呆」
あ! なんだ大公。僕はどちらかというと賢い方だぞ。
「おおかた、今後の事で、古都への避難を頭の中で巡らせていたのだろう」
はたして正にさ! なのになんで阿呆呼ばわりされないといけないのか、忌憚のない意見を聞かせてくれ。
「空間移動魔法は、体に大きな負荷がかかる、それに耐えうるだけの鍛錬を行った者でなければ、空間の狭間で事切れる。もしくは体に防御魔法を使用しなければならない。流石にこの人数に防御魔法を使用するとなると、時間だけが過ぎていく」
あ、そういう事なんだ。
なるほど、僕たちみたいな一般人は耐えられなくて死んじゃうんだな。知らなかったよ。ケルプト山では僕、空間魔法で詰め所まで移動したからね。あの時、僕に防御魔法が使用されていたんだな。
まるで後付けのような設定だな。
そりゃそんな便利な魔法があるなら、物流ももっと楽になってもいいもんな。未だに、馬車や船が活躍するのにはそういう理由があるんだな。
大公様はホーリーさんに防御魔法でも――――、
「私は、鍛えているからな」
掌から火球が現出。空に向かって放つ。
魔法が使えるんだ。流石は打倒勇者とか息巻いてるだけあるよ。
「まったく、阿呆のせいで話が途切れたな」
悪かったな。
「ここより南にはモルドーがあるだろう」
「ええ」
「そこの男爵が全面的に協力したいそうだ。モルドーは領地は狭いが、肥沃な土地からなる穀倉地帯だ。相当に溜め込んでいるだろうな。接収して、兵糧と流民の食料にあてよう」
おいおい恨まれるんじゃないのか、そんな事をすると。
それに、モルドーの男爵って……。
「王都からの流民の数は相当だ。古都からも援助は行う」
元々王都であった古都は、現王都、モルドーが太刀打ち出来ないほどの広大な穀倉地帯でもあるからね。
食べなくていい方々も多いし、古都こそ溜め込んでるだろうな。
「では、私は先にモルドーで待っている。王として、民を無事に連れてくるのだ」
「分かりました」
会話を終えると、ホーリーさんが展開した空間魔法の中に入っていき、ホーリーさんも王様に一礼して大公様の後を追った。
突然に王都に現れるのって、こうやって移動してたからか。
「よし! とりあえず、大公様は王都より五里以内にあるシダール湖での空間移動魔法使用だったから、違反金を取らないと。ですよね、違令管理課のゲイアードさん」
「残念。王族には適応されないよ」
有事の時を考えると当たり前ですからね。知ってます。知ってます。
でも現在、魔王軍だし。元大公ですから。元王族でいいんじゃないんでしょうか?
「おのれ」
と、ここで大公様の現在の主である魔王さんが合流。口の周りにはイチゴジャムがついている。どうやら、バッカスの軽食を食べてたようだ。
レインちゃん同様に、食い意地はあるようだ。
大公様たちが、主である自分に挨拶もせずに去っていったのが気に入らなかったようだ。
背丈と器の大きさは比例するらしい――――。
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