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変転
PHASE-43
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「しかし、信頼できますか?」
ブールさんの不安な語調。僕も同意見だ。
モルドー領の男爵といえば、なんたらハワード男爵様。
馬鹿な子爵の甥っ子だったな。
双方が繋がっているんじゃないかと心配のご様子。
「心配いらない」
堂々と言い切ったな。王様。
「――……叔父上が、先行しているのだ……」
語末が暗いよ。
これは、男爵様の事を心配しているんだろうな。
接収するってのは例えとかじゃなくて、ガチの発言だな。あの大公。乗っ取る気が満々だな……。
「でしたら、王様も行かれればよかったのでは? 空間魔法に耐えうるだけの修練は積んでいるのでしょう」
これで、修練を積んでいないとなると、侮辱にもとられる発言だ……。発言した後に後悔してしまう。
「可能だが、民を残しては行けない。我が父が最も悔やんだ事でもある。それを知っているからこそ、叔父上も誘わなかったんだろうね」
ああ、都――、いまの古都。そこからの脱出時には、民を置いていって、配下の方々と脱出したんだったな。
前王様と同じ轍は踏まないといったところか。
それに、未だに男爵様が信頼に値するとも思えないからね。
そんなところに甥であり、現王をいきなり赴かせるわけにもいかないとも考えてるんだろうな。
だから【民を無事に連れてくるのだ】なのか。
で、全面的に協力とか言ってたけど、今ごろモルドーでは、男爵様に対して、子爵の国家転覆や騒乱罪なんかを理由にして追い込んでるんだろうな。大公様は……。
自分だって、人類に敵対している存在の幹部なのにな……。
いまは人類も魔王軍もないけども。魔王さんは僕の横にいるわけだし。
――――。
モルドーに向けて歩きだして三日目。
食料は少ないけども、水はシタール湖で十分に補給できた。
あの湖の水はそのまま飲んでも大丈夫なくらいに澄んだ水。
ありがたかったのは、東門から脱出したバッカスの方々が、馬車と、エードの入っていた空の樽を処分せずに積んでいた事だった。
ホルテン君が言うには、移動時の水分確保には必要になる物だと、経営者の方に言われたからだそうだ。
避難中のゴタゴタの中でも、冷静に先を見通せる優秀な人物である。
そりゃ一等地に家を構えられるわけだ。
馬車に王様を乗せようともしたが、自分が乗る分のスペースに水の入った樽を。と言って、徒での移動を選択。
で、三日も経てば、貴族の奥様方もたくましくなるもんで、長いスカートは邪魔になると、膝部分までを破り捨てて、自分の足で歩き続ける。人生でここまで長距離を歩いたのは初めてだろうな――――。
「いてえよ~。足の裏に水がいっぱい溜まってるよ~」
誰よりも、情けない声を上げるのが我らが整備長。
「情けない」
「うるさい! 俺の体はお前のと違ってデリケートなんだよ」
こんなむさいのがデリケートとか。
「ロールさんは大丈夫ですか」
「うん、ちょっと痛いかな……。水ぶくれが潰れちゃって」
それはいかん! 僕が見てあげましょうか。
「はい、私が治してあげる」
リューディアさんが僕を押しのけて、回復魔法を唱えれば、あっという間に完治。
便利であるな。でも、いまのは邪魔でしかありませんよ。折角、僕がマッサージをしようとしたのに。
「ピート君は大丈夫なの」
「はい、足の裏が分厚くなってしまって」
ブートキャンプ初日では、足の裏の水ぶくれが潰れてグッショリ。その後も完治しない状態で動き回ったし、ケルプト山にヴィン海域の経験を踏んで、このくらいの歩きなんて、いまでは散歩です。
「へっ、野蛮人が」
「おっと、こんな所にスライムが」
てい! と、おっさんのプニプニの足の裏に、その辺に落ちてた先の尖った枝をプスリと刺してやる。
「お前! 不潔なもんで刺すなや! ここは消毒をした針だろ」
「そもそも不潔な足なんですから、不潔と不潔がぶつかり合って、相殺されますよ」
「どんな理論だよ!」
「ウィザースプーン相互の法則というのが、たったいま生まれました。ありがとうございます」
「お前、今回のヘルムに対しての落とし前がすんだら、覚悟しとけよ」
「は~い」
ものすっごく馬鹿にした感じで返事をしたあげた。
ま、このやり取りで、周囲に笑いが生まれたから、整備長も存外、役に立ったな。
「前方より砂塵!」
物見の発言に、和やかさが消え去り、一気に緊張が走る。
ブールさんの不安な語調。僕も同意見だ。
モルドー領の男爵といえば、なんたらハワード男爵様。
馬鹿な子爵の甥っ子だったな。
双方が繋がっているんじゃないかと心配のご様子。
「心配いらない」
堂々と言い切ったな。王様。
「――……叔父上が、先行しているのだ……」
語末が暗いよ。
これは、男爵様の事を心配しているんだろうな。
接収するってのは例えとかじゃなくて、ガチの発言だな。あの大公。乗っ取る気が満々だな……。
「でしたら、王様も行かれればよかったのでは? 空間魔法に耐えうるだけの修練は積んでいるのでしょう」
これで、修練を積んでいないとなると、侮辱にもとられる発言だ……。発言した後に後悔してしまう。
「可能だが、民を残しては行けない。我が父が最も悔やんだ事でもある。それを知っているからこそ、叔父上も誘わなかったんだろうね」
ああ、都――、いまの古都。そこからの脱出時には、民を置いていって、配下の方々と脱出したんだったな。
前王様と同じ轍は踏まないといったところか。
それに、未だに男爵様が信頼に値するとも思えないからね。
そんなところに甥であり、現王をいきなり赴かせるわけにもいかないとも考えてるんだろうな。
だから【民を無事に連れてくるのだ】なのか。
で、全面的に協力とか言ってたけど、今ごろモルドーでは、男爵様に対して、子爵の国家転覆や騒乱罪なんかを理由にして追い込んでるんだろうな。大公様は……。
自分だって、人類に敵対している存在の幹部なのにな……。
いまは人類も魔王軍もないけども。魔王さんは僕の横にいるわけだし。
――――。
モルドーに向けて歩きだして三日目。
食料は少ないけども、水はシタール湖で十分に補給できた。
あの湖の水はそのまま飲んでも大丈夫なくらいに澄んだ水。
ありがたかったのは、東門から脱出したバッカスの方々が、馬車と、エードの入っていた空の樽を処分せずに積んでいた事だった。
ホルテン君が言うには、移動時の水分確保には必要になる物だと、経営者の方に言われたからだそうだ。
避難中のゴタゴタの中でも、冷静に先を見通せる優秀な人物である。
そりゃ一等地に家を構えられるわけだ。
馬車に王様を乗せようともしたが、自分が乗る分のスペースに水の入った樽を。と言って、徒での移動を選択。
で、三日も経てば、貴族の奥様方もたくましくなるもんで、長いスカートは邪魔になると、膝部分までを破り捨てて、自分の足で歩き続ける。人生でここまで長距離を歩いたのは初めてだろうな――――。
「いてえよ~。足の裏に水がいっぱい溜まってるよ~」
誰よりも、情けない声を上げるのが我らが整備長。
「情けない」
「うるさい! 俺の体はお前のと違ってデリケートなんだよ」
こんなむさいのがデリケートとか。
「ロールさんは大丈夫ですか」
「うん、ちょっと痛いかな……。水ぶくれが潰れちゃって」
それはいかん! 僕が見てあげましょうか。
「はい、私が治してあげる」
リューディアさんが僕を押しのけて、回復魔法を唱えれば、あっという間に完治。
便利であるな。でも、いまのは邪魔でしかありませんよ。折角、僕がマッサージをしようとしたのに。
「ピート君は大丈夫なの」
「はい、足の裏が分厚くなってしまって」
ブートキャンプ初日では、足の裏の水ぶくれが潰れてグッショリ。その後も完治しない状態で動き回ったし、ケルプト山にヴィン海域の経験を踏んで、このくらいの歩きなんて、いまでは散歩です。
「へっ、野蛮人が」
「おっと、こんな所にスライムが」
てい! と、おっさんのプニプニの足の裏に、その辺に落ちてた先の尖った枝をプスリと刺してやる。
「お前! 不潔なもんで刺すなや! ここは消毒をした針だろ」
「そもそも不潔な足なんですから、不潔と不潔がぶつかり合って、相殺されますよ」
「どんな理論だよ!」
「ウィザースプーン相互の法則というのが、たったいま生まれました。ありがとうございます」
「お前、今回のヘルムに対しての落とし前がすんだら、覚悟しとけよ」
「は~い」
ものすっごく馬鹿にした感じで返事をしたあげた。
ま、このやり取りで、周囲に笑いが生まれたから、整備長も存外、役に立ったな。
「前方より砂塵!」
物見の発言に、和やかさが消え去り、一気に緊張が走る。
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