拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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PHASE-05

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「はい、じゃあ呼んでください。ロールさん」
 八つ当たりの魔王さんの姿なんて見てても進展しないので、蹴られる大公様に代わって、僕が伝える。

「ここで私なの!?」
 何を当たり前な事を。召喚できるのロールさんだけでしょ。
 魔王さんからは言質が取れればそれでよかったんですから。
 後は、【助けてくださいお兄様】って言えば直ぐにでも来るでしょう。迎賓館から避難してた方がいいかな。
 天井を破壊してくるだろうから。

「やだな~」
 流石に大勢の前で、大声で発言するのは恥ずかしいようだ。
 それに反して、
「おお! まさか邪神召喚の儀式を目にする事が出来ようとは」
 と、王様が期待する視線をロールさんに向ける。
 最高権力者の期待にたじろぎそうになるロールさん。
 でも、儀式って……。ただ呼ぶだけなんですよ。
 周囲も、この傾城が邪神の召喚者? や、邪教の女神か! など。噂はちゃんと大陸に広がっているようで、透き通る白い肌が、恥ずかしさから真っ赤に染まってしまった。

「ロールさん。世界のためです」
 僕が優しく諭すと、意を決してくれたのか、大きな首肯で返してくれる。
 
 長い吸気を行い――――――、
「助けてください! お兄様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 今日は叫び声をよく聞く日である。
 半ばやけくそとばかりの大音声。
 
 だが――、違和感があった。
 いつもなら、言い切る前に【我参上!】とか言いつつ降臨するのに、今回は言い切ったな。
 天井に目を向ければ――――、何も起こる気配がない。穴も空かないな……。
 ロールさんはロールさんで、言ったのに来ないものだから、更に恥ずかしくなったようで、両手で顔を覆って、ふさぎ込んでしまった。

「どうした? 何も起こらないぞ」
 期待していた某な方の発言に、ビクリと体を震わせてしまっている。
 いまにも恥ずかしさから泣きそうになっている。
 申し訳ない事をしてしまった……。
 邪神め! ロールさんに恥をかかせやがって!
 
 ――――なんて、怒りの感情に支配されていると、不死王さんとは正反対な登場。
 怖ず怖ずと、エントランスに足を踏み入れてくる。
 トボトボとした足取りだ。

「我…………参上……」
 なんだ。いるじゃないか。
 だけども、なんだこの覇気のなさは? いつもみたいに派手に来いよ。
 
 傲岸不遜な姿は見る影もない。
 スーツだって、赤や白の目にうるさい派手なのじゃないし。
 紺色ですよ。
 え? 本当に邪神なの? って疑ってしまう。

「おお……本当に降臨した」
 と、驚く王様をよそに、こめかみを押さえながらの魔王さんは、
「チッ」
 何とも面白くないとばかりに、邪神の耳にはっきりと聞こえる舌打ちを行えば、邪神の体がビクリと震える。
 おいおい邪神。お宅まさか――――、妹にビビってんのかよ……。

「ど、どうしたのだ? 義妹よ」
 体裁を保とうとしているのか、ロールさんに快活良く語りかけるけど、語調から理解できるのは――――、空元気だ。

「お願いですから、人前で義妹発言は恥ずかしいのでやめてください」

「う、うむ……」
 ここでも拒否を受けて、声のトーンがもう一段階さがる。

「チッ! チッチッチッチッ――――――!!」

「魔王さんうるさい」
 グリグリを見舞う所作を見せれば、唇をへの字にしながら静かになった。

「協力していただきたくて」

「うむ、義妹の願いならば叶えよう。大体の事は理解しておる」
 やめてくれと言ってるのに、義妹発言をやめないところはシスコンの本領だろうか。
 でも、表情に余裕がない。

「まずはご挨拶を」
 ロールさんが邪神を誘導するように、王様の元へと足を勧めるように提案する。
 
 なぜ我が、土塊つちくれの王のために足を動かさねばならないのか? 本来なら向こうが神である我の元へと来るべきである。
 と、小声で言っていたのが僕の耳朶に届いた。
 魔王さんがいるのが原因で、堂々と言い切れないところに、邪神のヘタレさを垣間見た。
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