444 / 604
集結
PHASE-07
しおりを挟む
――――兄妹げんかに始まり、兵仗の問題と、まったくやっかいな事を地上でやらかしてくれたよこの兄妹は!
「なんじゃ? そんな目で妾を見るな。一応、反省はしておる」
反省という言葉が口から出ただけでも成長ですね。と、人間が偉そうに思ってみる。
つまりは、前回の反省も活かして、本当に心の清らかな勇者を選定しようと考えているようだ。
だから、慎重になっているみたいだ。
実力で言うなら、クシュリナさん。でも、どこにいるのかが分からない。
次なる候補は文句なしにナイゼルさんと言いたいところだが、あんなサイコパスな連中のトップをこの世界に召喚するのはよくない……。
ヴィン海域は異世界として扱いたいくらいだからね。
エルンさんはメンタルがダメダメ。
となれば――――、やはりここはこの方しかいないだろう。
「サージャス・バレンタイン氏を推薦します。実力と誠実。僕の知る勇者の中ではトップです」
正直な話、実力ではサージャスさんはまだナイゼルさんには及ばないだろう。
でも、力だけでなく、精神の清らかさも含まれるなら、文句なしにサージャスさんだ。
魔王さんの耳元で語れば、地獄耳なのか、
「大きな傷を負わされました。実力は本物です」
と、不死王さんも推挙する。
「ほう、お前にか。超再生をもってしてもか」
「いや~直撃していたら本当に危なかったです」
あれは直撃と言わないのか?
記憶が正しいなら、右半身が吹き飛んで、臓物が垂れ下がってたスプラッターな状況だったような気がするんだけど。
「かなりの手練れじゃな。しかも、女というのが更によい」
おっと、女尊男卑な発言は嫌だよ。ここは平等に扱ってほしいね。
「サージャスとやら、近う」
「あ、はい!」
漆黒の外骨格からなる鎧を身に纏った、亜麻色の髪の美少女が魔王さんに接近。
本来なら、敵として相対する存在だけど、素直に従うところがサージャスさんの純粋さだよね。
「ふむふむ――――」
興味があるかのように、サージャスさんの体を小さな手でペタペタと触り、もう片方の手は顎にあてつつ、ぐるりと一周して吟味する。
「な、なにか……」
勇者にとって魔王は大いなる敵なんだけども、無警戒に、しかも幼女が自分の体を触ってくるものだから、些か困惑している。
――――得心がいったのか、ポンと自分の右拳を残った掌に当てて、
「おぬし、よいな! うむ、ピートにラマンディールの言は正しい」
「お、恐れ入ります。何のことかよく分かりませんが」
サージャスさんの事をお気に召したようだ。
高い身体能力に、魔力。どれをとっても勇者として高い水準にあると判断したようだ。
実力もさることながら、それ以上に気に入ったのは清らかな心。
サージャスさんは謙遜で返してるけど、それは不要と笑みで返す魔王さん。
「うむ、お前じゃな。文句なしにお前じゃ。パルティナを初めて見た時のようじゃ」
「伝説の勇者と比べられるなんて、恐れ多いです」
「しゃっちょこばる事はない。真実じゃ。うん――――その時が来たら、お前に託そう」
「はい?」
もったいぶるね~。ちゃちゃっといま渡せばいいじゃん。
――――魔王さんが託す相手を決め、今後の軍編制、合流を考えての作戦案が大公様の口より伝えられていく。
――。
「では整い次第、行動に移る。各員の奮闘に期待したい。冒険者の代表者たちは、連れの者達にもここでの内容を明確に伝えるように。トレージャーハンターギルドは、悪名高いと耳にしていたが、今回の活躍、ここで礼を言わせてもらう。今後、君たちには相応の褒章を与える」
迷惑ばかりかけているガリンペイロとバラクーダの代表二人もこの場にいる。
大公様が王様に代わって、頭を深く下げれば、悪名高いというレッテルを貼られていても、流石に緊張するようで、大公様の一礼に対して、頭を上げてほしいと訴える。
下げる頭の周囲には、魔王軍のお歴々がいるからね。威圧感は凄い。
両ギルドは普段はいがみ合っているけども、騙したヘイターは共通の敵でもあるし、現状の世界のありようも満足しているとの事で、それをこの場にいる方々に伝えると、全力で協力すると誓った。
悪名高い二大ギルドがそう言うなら、真面目にやってる方々も、このままでは立つ瀬がないと思ったようで、両ギルドに負けないくらいに、これからの戦いに全力を尽くすと、大音声で誓った。
――――それを見た大公様の口角が上がったのを僕は見逃さなかった。
最初に素行の悪いのに賛辞を贈り、もてはやす事で、真面目組を触発し、じゃあ自分たちも! と、奮い立たせた。
出来の悪い子だけを褒めると、普段から頑張ってる出来る子がそれを見れば嫉妬するからね。それと同じだ。
焚き付けの妙技だよ。
本当に、腹黒い御方だよ……。
頭一つ典雅に下げるだけで、場を一つにしたんだから。
頭さげるのは只だからな。下げて動かせるなら、これほど楽で安いものはない。
「なんじゃ? そんな目で妾を見るな。一応、反省はしておる」
反省という言葉が口から出ただけでも成長ですね。と、人間が偉そうに思ってみる。
つまりは、前回の反省も活かして、本当に心の清らかな勇者を選定しようと考えているようだ。
だから、慎重になっているみたいだ。
実力で言うなら、クシュリナさん。でも、どこにいるのかが分からない。
次なる候補は文句なしにナイゼルさんと言いたいところだが、あんなサイコパスな連中のトップをこの世界に召喚するのはよくない……。
ヴィン海域は異世界として扱いたいくらいだからね。
エルンさんはメンタルがダメダメ。
となれば――――、やはりここはこの方しかいないだろう。
「サージャス・バレンタイン氏を推薦します。実力と誠実。僕の知る勇者の中ではトップです」
正直な話、実力ではサージャスさんはまだナイゼルさんには及ばないだろう。
でも、力だけでなく、精神の清らかさも含まれるなら、文句なしにサージャスさんだ。
魔王さんの耳元で語れば、地獄耳なのか、
「大きな傷を負わされました。実力は本物です」
と、不死王さんも推挙する。
「ほう、お前にか。超再生をもってしてもか」
「いや~直撃していたら本当に危なかったです」
あれは直撃と言わないのか?
記憶が正しいなら、右半身が吹き飛んで、臓物が垂れ下がってたスプラッターな状況だったような気がするんだけど。
「かなりの手練れじゃな。しかも、女というのが更によい」
おっと、女尊男卑な発言は嫌だよ。ここは平等に扱ってほしいね。
「サージャスとやら、近う」
「あ、はい!」
漆黒の外骨格からなる鎧を身に纏った、亜麻色の髪の美少女が魔王さんに接近。
本来なら、敵として相対する存在だけど、素直に従うところがサージャスさんの純粋さだよね。
「ふむふむ――――」
興味があるかのように、サージャスさんの体を小さな手でペタペタと触り、もう片方の手は顎にあてつつ、ぐるりと一周して吟味する。
「な、なにか……」
勇者にとって魔王は大いなる敵なんだけども、無警戒に、しかも幼女が自分の体を触ってくるものだから、些か困惑している。
――――得心がいったのか、ポンと自分の右拳を残った掌に当てて、
「おぬし、よいな! うむ、ピートにラマンディールの言は正しい」
「お、恐れ入ります。何のことかよく分かりませんが」
サージャスさんの事をお気に召したようだ。
高い身体能力に、魔力。どれをとっても勇者として高い水準にあると判断したようだ。
実力もさることながら、それ以上に気に入ったのは清らかな心。
サージャスさんは謙遜で返してるけど、それは不要と笑みで返す魔王さん。
「うむ、お前じゃな。文句なしにお前じゃ。パルティナを初めて見た時のようじゃ」
「伝説の勇者と比べられるなんて、恐れ多いです」
「しゃっちょこばる事はない。真実じゃ。うん――――その時が来たら、お前に託そう」
「はい?」
もったいぶるね~。ちゃちゃっといま渡せばいいじゃん。
――――魔王さんが託す相手を決め、今後の軍編制、合流を考えての作戦案が大公様の口より伝えられていく。
――。
「では整い次第、行動に移る。各員の奮闘に期待したい。冒険者の代表者たちは、連れの者達にもここでの内容を明確に伝えるように。トレージャーハンターギルドは、悪名高いと耳にしていたが、今回の活躍、ここで礼を言わせてもらう。今後、君たちには相応の褒章を与える」
迷惑ばかりかけているガリンペイロとバラクーダの代表二人もこの場にいる。
大公様が王様に代わって、頭を深く下げれば、悪名高いというレッテルを貼られていても、流石に緊張するようで、大公様の一礼に対して、頭を上げてほしいと訴える。
下げる頭の周囲には、魔王軍のお歴々がいるからね。威圧感は凄い。
両ギルドは普段はいがみ合っているけども、騙したヘイターは共通の敵でもあるし、現状の世界のありようも満足しているとの事で、それをこの場にいる方々に伝えると、全力で協力すると誓った。
悪名高い二大ギルドがそう言うなら、真面目にやってる方々も、このままでは立つ瀬がないと思ったようで、両ギルドに負けないくらいに、これからの戦いに全力を尽くすと、大音声で誓った。
――――それを見た大公様の口角が上がったのを僕は見逃さなかった。
最初に素行の悪いのに賛辞を贈り、もてはやす事で、真面目組を触発し、じゃあ自分たちも! と、奮い立たせた。
出来の悪い子だけを褒めると、普段から頑張ってる出来る子がそれを見れば嫉妬するからね。それと同じだ。
焚き付けの妙技だよ。
本当に、腹黒い御方だよ……。
頭一つ典雅に下げるだけで、場を一つにしたんだから。
頭さげるのは只だからな。下げて動かせるなら、これほど楽で安いものはない。
0
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる
国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。
持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。
これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる