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王都潜入
PHASE-03
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「そして――――サージャス殿」
「ボクですか?」
百人長の呼びかけに、自分を指差している。
「チャクラの使い手だとか」
「はい」
「チャクラは体内の精神エネルギーですからね」
「その通りです。なので魔法が使えなくても戦えます。特にアンデッドである亡者には効果絶大です」
右手にだけ青白いチャクラを纏って、得意げに返答。
「――――なるほど。ボクたちが選出された理由が理解できました」
サージャスさんの言に、笑んで頷く百人長。
ムツ氏の技に、ドレークさんの剛力。ザイオン氏の元気? 魔法が使えなくても対応できる戦いを行ってきた方々からの選出か。
二王さんの所のブートキャンプは魔法が使用禁止だったな。
こういう状況もあると考慮しての演習だったんだな。それを今回、遺憾なく発揮できるわけだ。
「どうでもいいが、でかい音を立てて大丈夫か?」
セイロンさんがまっとうな事を言う。
銃声を立てたからね。いくら王都から一里半離れているからとはいえ、油断は出来ない。
王都周辺に兵を展開しているとも考えられる。
銃声に気付いてこっちにこられたら面倒だ。
「どうだ?」
百人長が空に向かって口を開けば、
「異常なし」
と、返してくるのは、演習中、ちびっ子サイドのリーダー的な存在だった、鳥人のリケルメさん。
猛禽類の頭であるリケルメさんは遙か先まで見通せるんだろう。
人間と比べれば、リケルメさんの目は千里眼と言っても過言じゃないはずだ。
――――。
驚くくらいに容易く地下道の入り口まで来ることが出来た。
ひとえに遠くを見渡して、脅威の回避を可能にした、鳥人さん達のおかげだな。
地下道は脱出のさいに使用したところ――、つまりはシダール湖。
脱出時と違うのは、ここから出てきたのではなく、いまからここに入っていく。
――。
一度は通っているけど、入り組んでいることと、逆からの風景だから、迷う自信しかない。
セイロンさん、ここで大活躍。
と、いうか、活躍の場はここだけなんだろう……。
――――異常なし。
王都に出入り出来るルートはいくつかあるみたいで、脱出時に使用した東門と南門のルートは回避。
今回は、南門と東門の中間辺りに位置するルートを使用。
――――現在、脅威もなく王都地上へと到着。
ほうほう、街商がさかんな目抜き通り付近に出るのか。
周囲を見渡していたら。
「頭を低く」
小声で百人長に頭を押さえつけられる。
僕の頭が林檎なのかと錯覚してしまうくらいの、大きな手だ。
「数は?」
「壁上に立哨が二名」
「少ないな」
側にいる獅子の獣人のジャジャイさんとやりとりをしている。
地下道から出て直ぐに、二王さんの所の方々は、素早く分隊行動にて展開し、建物の角に隠れて周囲を見渡している。
「聞こえるか?」
右耳だけに耳当てのある、演習中にもお世話になった通信機を使用している百人長。
受信先から、胸元の高さで手を左右に振るハンドサインが返ってくる。
聞き取れないとの事だ。
「やはり使えんな。ハンドサインで対応するしかないな」
全員が身をかがめて、音を立てないように注意しつつ動く。
――。
思いの外、見張りはいない。街中を警邏ってのも今のところ目に入ってこない。
立哨を行っているのは、脱出前に見た、瀟洒な装備の子爵の兵たちばかり。
「どう思う?」
忌憚のない意見をとばかりに、側にいる面子に百人長が質問。
いくら何でも警備が雑すぎる。
王都を攻略して日も経つのに、防衛の進捗は明らかに遅いと考えているようだ。
「原因はやっぱりあれですかね」
僕が指をさすのは王城があった場所。
生唾を飲んでしまう。
デカいのが嫌が応にも瞳に飛び込んでくる…………。
美しい白銀の輝きを放つ、ゴーレムみたいなのが鎮座している。
勤労君の大きさが赤ん坊だと思えるくらいにデカい……。
王城がゴーレム的なデザインとして、新たに建築されたと言われても疑わないだろう。
それくらいデカい。
あれが、ちびっ子諸君の思考で魔王さんが造り出した、捷利嚮導の乙女なんだろう。
烏帽子のように縦に長い頭部。巨塔のような腕部に、蜘蛛の足を模したような山形状の四脚からなっている。
遠目からでもはっきりと分かる全体。
捷利嚮導の乙女の周囲には、梯子や欄干が取り付けられて、何かしらの取り付け工事を行っている。
どうやらこの工事が、向こう側の進捗を妨げているようだ。
「ボクですか?」
百人長の呼びかけに、自分を指差している。
「チャクラの使い手だとか」
「はい」
「チャクラは体内の精神エネルギーですからね」
「その通りです。なので魔法が使えなくても戦えます。特にアンデッドである亡者には効果絶大です」
右手にだけ青白いチャクラを纏って、得意げに返答。
「――――なるほど。ボクたちが選出された理由が理解できました」
サージャスさんの言に、笑んで頷く百人長。
ムツ氏の技に、ドレークさんの剛力。ザイオン氏の元気? 魔法が使えなくても対応できる戦いを行ってきた方々からの選出か。
二王さんの所のブートキャンプは魔法が使用禁止だったな。
こういう状況もあると考慮しての演習だったんだな。それを今回、遺憾なく発揮できるわけだ。
「どうでもいいが、でかい音を立てて大丈夫か?」
セイロンさんがまっとうな事を言う。
銃声を立てたからね。いくら王都から一里半離れているからとはいえ、油断は出来ない。
王都周辺に兵を展開しているとも考えられる。
銃声に気付いてこっちにこられたら面倒だ。
「どうだ?」
百人長が空に向かって口を開けば、
「異常なし」
と、返してくるのは、演習中、ちびっ子サイドのリーダー的な存在だった、鳥人のリケルメさん。
猛禽類の頭であるリケルメさんは遙か先まで見通せるんだろう。
人間と比べれば、リケルメさんの目は千里眼と言っても過言じゃないはずだ。
――――。
驚くくらいに容易く地下道の入り口まで来ることが出来た。
ひとえに遠くを見渡して、脅威の回避を可能にした、鳥人さん達のおかげだな。
地下道は脱出のさいに使用したところ――、つまりはシダール湖。
脱出時と違うのは、ここから出てきたのではなく、いまからここに入っていく。
――。
一度は通っているけど、入り組んでいることと、逆からの風景だから、迷う自信しかない。
セイロンさん、ここで大活躍。
と、いうか、活躍の場はここだけなんだろう……。
――――異常なし。
王都に出入り出来るルートはいくつかあるみたいで、脱出時に使用した東門と南門のルートは回避。
今回は、南門と東門の中間辺りに位置するルートを使用。
――――現在、脅威もなく王都地上へと到着。
ほうほう、街商がさかんな目抜き通り付近に出るのか。
周囲を見渡していたら。
「頭を低く」
小声で百人長に頭を押さえつけられる。
僕の頭が林檎なのかと錯覚してしまうくらいの、大きな手だ。
「数は?」
「壁上に立哨が二名」
「少ないな」
側にいる獅子の獣人のジャジャイさんとやりとりをしている。
地下道から出て直ぐに、二王さんの所の方々は、素早く分隊行動にて展開し、建物の角に隠れて周囲を見渡している。
「聞こえるか?」
右耳だけに耳当てのある、演習中にもお世話になった通信機を使用している百人長。
受信先から、胸元の高さで手を左右に振るハンドサインが返ってくる。
聞き取れないとの事だ。
「やはり使えんな。ハンドサインで対応するしかないな」
全員が身をかがめて、音を立てないように注意しつつ動く。
――。
思いの外、見張りはいない。街中を警邏ってのも今のところ目に入ってこない。
立哨を行っているのは、脱出前に見た、瀟洒な装備の子爵の兵たちばかり。
「どう思う?」
忌憚のない意見をとばかりに、側にいる面子に百人長が質問。
いくら何でも警備が雑すぎる。
王都を攻略して日も経つのに、防衛の進捗は明らかに遅いと考えているようだ。
「原因はやっぱりあれですかね」
僕が指をさすのは王城があった場所。
生唾を飲んでしまう。
デカいのが嫌が応にも瞳に飛び込んでくる…………。
美しい白銀の輝きを放つ、ゴーレムみたいなのが鎮座している。
勤労君の大きさが赤ん坊だと思えるくらいにデカい……。
王城がゴーレム的なデザインとして、新たに建築されたと言われても疑わないだろう。
それくらいデカい。
あれが、ちびっ子諸君の思考で魔王さんが造り出した、捷利嚮導の乙女なんだろう。
烏帽子のように縦に長い頭部。巨塔のような腕部に、蜘蛛の足を模したような山形状の四脚からなっている。
遠目からでもはっきりと分かる全体。
捷利嚮導の乙女の周囲には、梯子や欄干が取り付けられて、何かしらの取り付け工事を行っている。
どうやらこの工事が、向こう側の進捗を妨げているようだ。
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