拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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王都潜入

PHASE-13

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「やってくれる」
 ロングナイフが飛翔する。亡者を一掃したサージャスさんに対して、ミッシェルが襲う。
 躱し捌く所に隙を見出したのか、周囲にロングナイフを纏わせたミッシェルが、サージャスさんに接近。
 同時に、腰に帯びたロングソードで斬りかかった。

「大丈夫なんですか? 接近戦は不得意でしょ」

「ここでお前を止めておかないと、面倒だからな」
 魔法が使用出来なくても、チャクラで広範囲の攻撃を平然と行えるのは、やはり脅威のようだ。
 百人長の前から離れていく。
 チャクラの一撃を目の当たりにして惚けていた百人長は、ハタと我に返り、自分の大きな掌を眺めてチャクラを現出させると――――、〝ふん!〟と、力んで、手を前に出してみるが、何も起きる事はなかった……。
 離れていくサージャスさんを眺めて、力の差が違いすぎると思ったのだろう。哀愁を織り交ぜた笑みを浮かべていた。

「どうしましたミッシェルさん。以前よりも動きが鈍いですよ」
「鈍くはない。お前がそれだけ強くなっているだけだ」
「合理主義って、こういう時は素直に賞賛しますね」
「真実を述べないと、言い訳が虚言を使用する、薄っぺらいものになるからな」
 サージャスさんが優勢だな。ミッシェルが流す多量の汗からするに、長時間の戦いは不得意な短期決戦タイプか。

 ――。
 
「凄いよね。ソードダンサーって」
 初めて見たのか、ロールさんが息を呑む。
 数本のロングナイフを自在に操り、多方向から行われる攻撃は確かに凄いし、あまり耳にしない職業だから仕方ないのかな。
 整備長も発言に首肯で返してた。

「そうですか?」
 ただ、僕だけがドライな感想。

「サージャスさんが心配じゃないの?」

「心配するほどの相手じゃないですから」
 魔法が使用出来なくても、あの程度には負けませんよ。

「言うじゃねえか」

「いや、整備長は見たでしょ。不死王さんとサージャスさんの戦い」
 ミッシェルは数本のロングナイフ。対してサージャスさんは、古都の壁上で戦いを見守っていた、不死王軍兵士の鞘に納まった無数の剣を操って、不死王さんを攻撃してたからね。
 数の差が実力の差ですよ。
 そう問うてやると――、
「確かに、あの時に比べたら迫力は無いな」

「でしょ。それに僕はソードダンサーをヴィン海域で見てますから」
 ザンデさんもミッシェル以上に操ってたし、加えて他の魔法も併用しつつ戦ってたからね。
 いま見ている限りでは、ミッシェルはロングナイフを操るだけで、併用はしていない。
 多分、出来ないんだろう。
 複数の利器を魔法で操り、且つ接近攻撃も加えながらだから、同時進行で魔法を使用するほどのスキルは持ち合わせていないようだ。
 これがザンデさんクラスなら、僕だってサージャスさんの心配はするけども、この程度なら問題はない。
 
 というか、やはりヴィン海域ってレベル高いんだな。あそこで長く過ごしていると、あの世界で起こってた超常現象が、日が経つにつれ、普通に見えちゃってたからな。
 ミッシェルやグリーなんかを見てたら、ヴィン海域の方々の強さが別次元だってのが理解できるよ。
 ミッシェルも、この界隈じゃ強い部類なんだろうけどね。
 やっぱりあそこは異世界だな……。

 ――。
 
「やめませんか。これこそ合理的じゃない」

「何が言いたい」

「はっきり言って、ミッシェルさんは進歩がないですね」
 言っちゃったよ。はっきりと口にしたよ。
 ミッシェルって寡黙そうだけど、僕に対しても怒りを簡単に向けてきたからな。そんな事を言えば……、
「生意気だな!」
 淡々としながらも、声音には怒気が混じっているのが分かる。

「大振り」
 呆れたような物言いのサージャスさん。
 宙に舞わせたロングナイフよりも先に、自身が手にしたロングソードでサージャスさんに斬りかかる。
 ロングナイフの脅威がなく、一点だけに集中すればいい状況。
 黒刀で払い、体勢を崩したところに、チャクラを纏った左拳で腹部に一撃。
 腰の入ったいい拳だった――――。
 鎧皮の鎧に拳が沈んでいき、比例してミッシェルの表情が大きく歪んだ。
 優男が台無しである。

「ワンパンかよ」
 くの字になって、足は生まれたての子馬みたいにプルプル。
 宙を舞っていたロングナイフは、高い金属音を奏でながら石畳の上に落ちる。
 僕の隣では、余裕と思ったのか、整備長が一言を口に出すと、紫煙を燻らせ始めた。

「ミッシェルさん。ボクと別れてから今まで何をしてたんです? 合理的なのもいいですけど、それを理由にしてただけの怠惰を貪ってたんじゃないんですか? 明らかに昔より鋭さがないですよ」
 くの字から両膝を突いて見上げる先には、歪んだ優男の顔を見下しているサージャスさん。
 らしからぬ酷薄な言い様と、紫水晶アメジストによるジト目。
 なんら成長していない昔のパーティーに、呆れと腹立たしさを覚えたのかもしれない。
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