拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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王都潜入

PHASE-26

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「こんな場にまで来るなんて、ジャイロスパイク君の胆力は大したものだね」
 眉の位置が戻る。ざわついた心を整えてから、口を開くヘルム。

「直接の上司がこんな事を起こしたんですからね。部下たちは火消しをするのが当然ですよ。なので、絶対に阻止します」
 凛とした姿と声に、冒険者くずれ達も、大したもんだと賞賛を口にする。

「本当に、それが理由なのかな?」

「もちろんです局長――――いえ、ヘルムさん。過ぎた夢は諦めて、大人しく投降する事をおすすめします。周囲を見てください」
 立ちふさがる面々を指差すロールさん。
 食指に沿って、ヘルムも首を動かし、元に戻してロールさんを見る所作は――、傾げる首。

「分からないんですか? そこの皆さんは利で集まっているだけです。対してこちらは、王様の想いに集っています。この差は大きいですよ。不利になれば、貴男の回りからその人達はいなくなります。子爵様の立場がそのまま貴男に移譲するだけです」
 グリーの言で、冒険者くずれは子爵から心が離れている。
 ヘルムの方が旨味があるからだろう。
 でも、その忠誠もかりそめだ。こういう連中は、不利になれば簡単に掌を返すもんだ。
 正鵠を射るロールさんの発言。
 周囲の冒険者くずれは、何とも面白くないといったような表情に変わる。それだけ、ロールさんの言葉が真実だということだろう。

「はっきりした物言いは相変わらずだね。王の想い――――。それに君も賛同したわけだ。まあ、君が動いている理由は別なんだろうが」
 口角を上げるヘルム。
 後者の内容がよく分からないと、今度はロールさんが首を傾げた。

 看破の乙女アルヴィトを見せつつ、
「想いと言うより、思い人なんじゃないかね? 危険な場であってもついて行き――――だい゛!?」

「「「「おお!」」」」
 こちらだけでなく、向こう側からも感嘆の声が上がった。
 素晴らしいコントロールである。
 オーバースローからなる美しいフォームで振り切った腕。
 そこから放たれた飛翔物が、ヘルムの顔面を見事に捉えた。
 食らった方は、鼻を押さえてうずくまる。
 ヘルムの足下を見れば、壊れてしまった勤労君の模型粘土の、頭部だ。

「はぁ、はぁ……」
 息が荒いロールさん。

「指輪の効果の事は耳にしてましたが。本当に! 扱う人物がこんなだと、ろくな結果を生まないですね!」
 こ、怖いよロールさん……。
 どうして急に暴挙に出たのか。

「ぐぬぬぬぬ……おのれ…………」
 痛そうだな。
 鼻から蛇口を捻ったみたいに鼻血が出てるよ。
 感嘆していた冒険者くずれも、雇い主がそういう状況だから、直ぐに回復魔法を唱え、一人がそれを行えば、残った面子が手にした得物や、鞘から剣を抜いてこちらを威圧してくる。

「さっさとその指輪を外して投降してください!」

「なぜに有利な方が投降を? 投降は君たちだろう。現局長殿」

「暫定です」
 これ以上は堂々巡りとばかりに会話をやめると、ヘルムは手だけを僕たちに向けてくる。
 合わせるように、向こうの取り巻きが動き出した。
 以前もあった光景だ。
 あの時と違うのは、近づいてくるのがただのごろつきではないということ。
 魔法なんかも使用出来て、刀剣に秀でた玄人の集団だ。

「多いね……」
 ググタムさんの声音は緊張気味。
 ちょっと前までは訓練生だったからね。

「大丈夫だ、あの程度。俺たちはそれだけの演習を行ってきた」
 リーダー的存在であるロウさんが、ググタムさんの横に立つ。
 勝色の毛並みに覆われていても分かる、しなやかな筋肉を持った狼の獣人ヴィルコラクであるロウさんを目にすれば、冒険者くずれ達にとって、この中で最もモンスターらしい姿だからか、切っ先を向ける数がググタムさんより多くなる。

「一人で十人くらいを蹴散らせばいいだけの簡単なお仕事だニャ」
 快活良く鼓舞するシナンさん。
 でも、笑顔は引きつっていた。

「何を言ってやがる! レディに無理なんかさせられるかよ。俺ちゃんがレディの分まで相手してやら~」
 ここで、声だけは凄みがあるのが口を開く。
 最後に相手をしなければならないような、親玉の中の親玉みたいな声で、格好の良い事を口にする愛玩生物が、ふよふよと宙に浮きつつ、誰よりも前に出る。
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