拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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王都潜入

PHASE-28

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「怒りを俺ちゃんにぶつけられるかな? ボーイ共」
 命を奪う事に一切のためらいがないのが、ヴィン海域の住人の怖いところ。
 腐ってもそこは元冒険者であるラゴット勢。眼前の所行に恐怖しつつも、下がろうとしない姿勢だ。

「ほう、怒りをぶつける選択か。俺ちゃんに挑むのか。ハハハハ――――愚かな選択だ」
 後半の笑い方が仄暗くってね……。
 声も相まって、悪の親玉としてのポジションが着々と構築されていくようだ。
 違うからね。向こうが王都を侵攻したんだからね! と、ここから見た第三者に言いたいよね。

「ねえ、見えないよ」

「見なくていいですよ」
 見せられるわけがない。こんなもの。後ろでは卒倒者が現れてるんですよ。ロールさん。

「いくぞ!」
 一人の男性が、なんかいい声で迫る。
 その様は、巨悪を前に屈さない勇者のようだ。

「ああ、逝くがいい」
 氷塊を口から勢いよく吐き出せば、頭に直撃。
 飛び散る肉片。
 流石にシナンさん達も目を背けた。

「ヘ、ヘルムさん……」
 他愛なく命を奪う存在に対して、指示を請う。
 眼前の、慈悲なき愛玩なる存在に、下がろうとしなかった姿勢の心が、へし折れたようだ。
 名を呼ばれたヘルムも、流石に目の前での凄惨な血しぶきは経験が無いようで、表情が引きつっている。

「さあ、ルーキー達。相手は浮き足立っている。今こそ刈り取れ」
 酷薄な笑みを浮かべるシュパーブ君に、愛らしさなんてない。
 三人は恐怖に支配されながらも、首肯で返して前に立ち、狼狽しているラゴット勢に攻撃を行う。
 ロウさん、手にしたナイフで斬りつける。
 首元を斬られると、バタリと倒れ、そこから鮮血が広がる。
 シュパーブ君のような、グロさがないのが救いだ。
 ナイフは独特な形状。片刃のようで、峰部分がノコギリみたいなギザギザだ。
 シナンさんにググタムさんも、同じ物を手にしている。

「お上品な戦い方だな」
 迫力が無いと、シュパーブ君は気に入らないみたいだ。
 皆としては、グロい方が御免こうむる。

「くそ!」
 更に一人が仕掛ける。
 バックラータイプの盾を前に押し出しつつ、振り上げられるショートソードが、シナンさんに振り下ろされる。
 盾を見ずに、剣の軌道だけを目にし、躱して背後に立ち、膝裏に蹴りを一撃。
 体勢がくずれたところで、後ろに引き倒せば、相手は後頭部から床にたたき付けられてダウン。
 出来るだけ命は取らないスタイルだな。

雷矢ライトニングアロー
 ならば遠距離で。と、向こうにアドバンテージがある魔法で対応してくる。

「回避」
 淡々とシュパーブ君が指示を出し、それに従い、僕たちと共に後方に移動する三人。
 迫る魔法に対し、シュパーブ君が愛らしい手で魔法を掴む。

「貧弱、貧弱ぅ。大魔法の一つでも唱えろ」
 いやいや、こんなところでそんなもん唱えられたら、建物がくずれて、僕たちも下敷きだよ。
 にしても強いな~。
 ヘイターの時は不意打ちでダウンしたけど、正面から戦えばこうも強いのか。流石というべきか。恐るべきはヴィン海域の住人だ。

「向こうのトップもいるわけだし、ここでやっちまうか」
 大きな吸気を行って、ヘルムへと体を向けるシュパーブ君。
 ぐぬぬと、歯を軋らせているヘルム。
 あれ? これ本当にここで終わるんじゃないの? 終わってくれれば僥倖ではあるな。

「調子に乗るなよ! 幼龍ドラゴネット!」
 手槍による側面からの突き。
 とても速い一撃だった。

「危ない危ない」
 ヘルムに見舞おうとしていた凍てつく息を使用して、自分の目の前に氷の壁を作り、難を逃れた。
 穂先が氷の壁にざっくりと刺さっている。

「愛らしさとは裏腹の、無駄がなく、俊敏な動きだな」
 槍を引き抜き、オーバーなリアクションで構える、突如として現れた男。
 ――――浅葱色の鎧に、碧眼で眠そうな半眼。
 几帳面な横分けで、スカーフのように絹を首に巻いてる男。記憶にある人物だ。
 
 絹が特産のスルミタの出自――――、
「ここからは、ゲルニオ・ヤニコフがお相手しよう」
 アルコンと、堅物として双璧をなす勇者が現れた。
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