拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-01

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   *    *
 
 ピート達が王城跡へとひた走る頃、白色の鱗に包まれ、鰭部分には金細工が施された装飾品に、自身の鱗の上にスケイルアーマーを纏った大海蛇モーガウルが牽引する船が、北門と運河を結ぶアーチ橋へと接近。
 陽が水面に反射し、橋を輝かせる。
 白を基調とした、弓のように反った曲線でつくられたアーチ橋は光りをよく受け、神々しく輝く。
 その様から、人々から白銀橋と名付けられ、その愛称は、いつの頃からか、真名となって親しまれた。
 そこを目指しつつ、魔法が使えない事から、事前に壌獣王から渡されていた爆弾を使用しつつ、威圧を加えて進行する船団――――。

「間もなく上陸準備です」
 大公であるラゼンが、甥である現王シラクサにそう伝えれば、力強い首肯が返ってくる。
 本来ならば、現在の主である不死王と行動するのだが、甥を思う事から、ラゼンはシラクサの参軍として参加している。

「頼むぞ」
 シラクサが船首から振り返れば、そこにはゲイアードが立っていた。
 先ほどのシラクサ以上に強い首肯で返す。

「接岸」
 一人が、大音声で伝える。
 大海蛇モーガウルが速度を落としていき、橋のたもとへと寄せれば、冒険者たちはそこより橋へと移動する。

 ――。

「ふむ」
 ラゼンが訝しい表情となる。
 各所から響く轟音から、攻撃が実行されているのは確か。
 ならば、北門付近の爆発にも気付いていて当然。
 相手はこちらが侵攻を開始しているのも分かっているはずである。
 橋自体にも眺望のためのタレットが等間隔に配置されているにもかかわらず、そこに人の気配はない。

「ない故に、不気味である」
 周囲を見渡しつつラゼンが呟く。
 次々と上陸する冒険者に兵達。
 先頭の足並みの緩やかさに何かあると気取けどって、周囲を確認し始める。

「偵察に出ましょうか?」
 ここで名乗りを上げたのはエルン一行。

「偵察といっても、ここから北門までは一直線。先頭に立って誰よりも脅威に対面する立ち位置でしかないぞ」

「問題ないです」
 と、強気の笑みにてラゼンへ返すと、ラゼンは小さく頷く。
 下命を受けたと、お供である美女三人を連れてエルンは駆け出す。

「ミリーとリムは無理するな」
 魔法使いのミリー・チャイルドと、僧侶のリム・ワインズへの配慮。
 エルンと、侍職に戻ったフィット・マヘリアが先行する。
 ――――タレットへと目をやるも、やはり人影はない。
 これだけ進行しているのに反応がない。
 しじまに不気味さを覚えるエルン達。

「人影はなくても油断は出来ないよ」
 エルン達に続いてゲイアードが背後についてくる。
 眼鏡を整えつつ語る彼に対して、
「いいんですか? 魔法は使えませんが」
 体術に自信があっても、自分たちと比べるとそこは魔道師だからと、配慮からエルンが口を開く。

「ありがとう。でも、大丈夫だよ」
 聞く人間によっては嫌味にも聞こえるが、純粋に心配していると理解しているゲイアードは、エルンの言葉を厚意として受け取り、言葉を返す。

「本当に何も感じとれませんね」
 横に立つゲイアードにエルンが述べる。
 フィット達も周辺を警戒しているが、やはり何も感じ取れないようだ。

「しかし、ビルギット殿が言うように、本当に魔法が使えなくなるとは難儀だな」
 死霊魔術師ネクロマンサーとしては、致命的な状況。
 加えて相手は魔法を使用出来るのだから、たまったものじゃないと、嘆息を漏らすゲイアード。

「だが、この不快な気配を感じ取れるのはありがたい」
 何のことだろうと、エルンのパーティーは疑問符を浮かべながら首を傾げた。

「出てこい」
 傾げる面子を横に、ゲイアードは中々に大きな声を発する。
 外見から物静かなタイプと考えていたパーティーの女性三人は、その声に目を丸くしていた。
 同時に、何かがいると悟っているゲイアードを信じて、即座に周辺警戒を厳する。
 それは、後方のシラクサ達を守るケーシーや、冒険者に兵達も同様であった。

「もう! もう少し愛嬌のある言い方とかないの?」
「ない」
「淡泊だな~おにいたん」
「気色の悪い」
 タレットの側面より這い出てきたのはヘイターだった。
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