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レコンキスタ
PHASE-06
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「防御陣にて様子を見る」
ラゼンが周囲に発すれば、混成部隊とは思えない程に、兵達と冒険者達の動きには無駄というものが無かった。
子爵の兵達とは全くもって違うと、通路の上から見下ろすヘルムは感嘆する。
体をスッポリと隠すほどの重厚な盾であるスクトゥムが橋の上に置かれると、更にその後方にも同じように設置固定され、二重の壁を即席で作り上げた。
「ゲイアード達には悪いな」
と、ラゼンがこぼす。
盾の向こう側には五人が取り残されている状況。
当の本人達は後退しようとは考えていないようで、後方で壁が築かれても焦る動作はない。
「リム、ミリー、後方でサポートを頼む」
「「わかった」」
私兵によってうち捨てられた装備から弓矢を手にして、弦の指をかける美女二人。
「我々も掩護だ。矢をつがえよ」
最前線の女性二人の所作を目にし、手にした剣を空へと掲げ、大音声にてシラクサが下命を発す。
「構えよ!」
キリキリと、弦音が方々から聞こえてくる。
「――――放て!」
剣を振り下ろせば、それを合図に、キリキリとした音から、風を切っていく音へと変わる。
蒼穹を黒い影がおおい、重力に引かれて、黒い影を描いていた矢が落ちてくる。
黒く染まった存在に突き刺さっていけば、ヌプヌプと音を立てる。
泥濘に足を踏み入れた時の音に似ていた。
「なるほど、亡者らしいが、物理攻撃は当たる事は当たるのか」
眼前の降り注ぐ矢を目にしつつ、ゲイアードは考察。
刺さった矢はずるずると自重によって黒い存在から抜け落ちていく。当たるにしても効果が無い。
痛覚も無いようで、刺さってもうめき声などを上げる事はなかった。
矢でこれならば、剣などの接近武器でも同じ結果と推測。
黒い存在の手に触れれば、それだけで触れられた者も向こうの仲間になってしまう。
そもそも接近戦は、防ぐ以外の選択肢を選ぶのは排除したほうが懸命。
「どしがたい。最悪の魔法だな」
術者は唱えれば、それだけでいい。
魔力の消費は発動時だけ。その後は勝手に動き、襲い、勝手に増えていく。
抵抗できるだけの力を持っていない人々にとっては絶望の存在。
これが拡散していけば、世界を終わらせるほどの脅威にもなる。
我が弟ながら、ここまでの術を作り上げたのかと、ゲイアードの心胆が寒さに襲われた。
「お前の兄は驚いているようだ。流石だヘイター。お前は兄を越える才人だ」
「でしょ。僕は圧倒的な才能を持っているんだ」
「ああ、見抜けなかった。もしくは、認めようとしなかった者たちに問題がある」
「ヘルムさんは僕を分かってくれる。最高のパートナーだよ。だから、この世界をヘルムさんにあげるよ」
「ありがたくいただこう」
余裕の二人に対し、下方の橋の上では、ゆっくりと迫ってくる黒い存在への対処をどうすべきかと、考えあぐねている。
「魔法って大事じゃな」
ここで存在感をようやく出す、魔王であるビルギットが苦笑いを浮かべる。
「恐るべきは人類の叡智よ」
捷利嚮導の乙女からヒントを得て勤労君シリーズを作り、眼前では新たに誕生した魔法によって、こちらは気圧されている。
いずれは神にも届くであろう存在になりつつある。
自身の兄が土塊と揶揄する存在だが、この進歩の早さには驚きを隠せない。
「お下がりを。現状ではビルギット様は……その…………」
「はっきり言ってよいぞ」
「は、役に立ちません」
「はっきりと言いすぎじゃ!」
シラクサを蹴る七歳児の姿。
周囲の者たちは、幼女が魔王であるとしても、心臓に悪い光景であった。
これが普通の幼子ならば、首が飛ぶのが当たり前の光景であるからだ。
「お下がりを」
弱々しく口にすれば、〝ふん!〟と、鼻息で返して、強い足踏みで下がっていく。
――――後方でこのようなやり取りが行われる中、
「さて、どうしようか。あの――――黒いのは」
ゆらりゆらりと、徐々に迫ってくる存在の呼称をどうすべきかと、迎撃を考えつつも考えるゲイアード。
「朽無しの体だよ。お兄」
呼称を考えなくてよくなったと、小馬鹿にしつつもヘイターへと礼を述べる。
対する弟は、礼になっていないとご立腹。
ラゼンが周囲に発すれば、混成部隊とは思えない程に、兵達と冒険者達の動きには無駄というものが無かった。
子爵の兵達とは全くもって違うと、通路の上から見下ろすヘルムは感嘆する。
体をスッポリと隠すほどの重厚な盾であるスクトゥムが橋の上に置かれると、更にその後方にも同じように設置固定され、二重の壁を即席で作り上げた。
「ゲイアード達には悪いな」
と、ラゼンがこぼす。
盾の向こう側には五人が取り残されている状況。
当の本人達は後退しようとは考えていないようで、後方で壁が築かれても焦る動作はない。
「リム、ミリー、後方でサポートを頼む」
「「わかった」」
私兵によってうち捨てられた装備から弓矢を手にして、弦の指をかける美女二人。
「我々も掩護だ。矢をつがえよ」
最前線の女性二人の所作を目にし、手にした剣を空へと掲げ、大音声にてシラクサが下命を発す。
「構えよ!」
キリキリと、弦音が方々から聞こえてくる。
「――――放て!」
剣を振り下ろせば、それを合図に、キリキリとした音から、風を切っていく音へと変わる。
蒼穹を黒い影がおおい、重力に引かれて、黒い影を描いていた矢が落ちてくる。
黒く染まった存在に突き刺さっていけば、ヌプヌプと音を立てる。
泥濘に足を踏み入れた時の音に似ていた。
「なるほど、亡者らしいが、物理攻撃は当たる事は当たるのか」
眼前の降り注ぐ矢を目にしつつ、ゲイアードは考察。
刺さった矢はずるずると自重によって黒い存在から抜け落ちていく。当たるにしても効果が無い。
痛覚も無いようで、刺さってもうめき声などを上げる事はなかった。
矢でこれならば、剣などの接近武器でも同じ結果と推測。
黒い存在の手に触れれば、それだけで触れられた者も向こうの仲間になってしまう。
そもそも接近戦は、防ぐ以外の選択肢を選ぶのは排除したほうが懸命。
「どしがたい。最悪の魔法だな」
術者は唱えれば、それだけでいい。
魔力の消費は発動時だけ。その後は勝手に動き、襲い、勝手に増えていく。
抵抗できるだけの力を持っていない人々にとっては絶望の存在。
これが拡散していけば、世界を終わらせるほどの脅威にもなる。
我が弟ながら、ここまでの術を作り上げたのかと、ゲイアードの心胆が寒さに襲われた。
「お前の兄は驚いているようだ。流石だヘイター。お前は兄を越える才人だ」
「でしょ。僕は圧倒的な才能を持っているんだ」
「ああ、見抜けなかった。もしくは、認めようとしなかった者たちに問題がある」
「ヘルムさんは僕を分かってくれる。最高のパートナーだよ。だから、この世界をヘルムさんにあげるよ」
「ありがたくいただこう」
余裕の二人に対し、下方の橋の上では、ゆっくりと迫ってくる黒い存在への対処をどうすべきかと、考えあぐねている。
「魔法って大事じゃな」
ここで存在感をようやく出す、魔王であるビルギットが苦笑いを浮かべる。
「恐るべきは人類の叡智よ」
捷利嚮導の乙女からヒントを得て勤労君シリーズを作り、眼前では新たに誕生した魔法によって、こちらは気圧されている。
いずれは神にも届くであろう存在になりつつある。
自身の兄が土塊と揶揄する存在だが、この進歩の早さには驚きを隠せない。
「お下がりを。現状ではビルギット様は……その…………」
「はっきり言ってよいぞ」
「は、役に立ちません」
「はっきりと言いすぎじゃ!」
シラクサを蹴る七歳児の姿。
周囲の者たちは、幼女が魔王であるとしても、心臓に悪い光景であった。
これが普通の幼子ならば、首が飛ぶのが当たり前の光景であるからだ。
「お下がりを」
弱々しく口にすれば、〝ふん!〟と、鼻息で返して、強い足踏みで下がっていく。
――――後方でこのようなやり取りが行われる中、
「さて、どうしようか。あの――――黒いのは」
ゆらりゆらりと、徐々に迫ってくる存在の呼称をどうすべきかと、迎撃を考えつつも考えるゲイアード。
「朽無しの体だよ。お兄」
呼称を考えなくてよくなったと、小馬鹿にしつつもヘイターへと礼を述べる。
対する弟は、礼になっていないとご立腹。
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