拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-49

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「騎士団なんかに、僕の亡者たちが倒されるとか!」
 悔しそうに歯を軋らせるヘイター。
 そんなヘイターに騎士団の先頭にいる人物が、馬上から切っ先を向けて見下ろす。

「やめろ。劣等が見下ろすな」
 行為に対して、さらなる怒りの感情に支配されるヘイター。
 グリーに預けたような武装したオーガを使役し、先頭の騎士を襲わせるが、騎士は容易く斬り屠った。

「何者だ!」
 ヘイターが名乗れと告げれば、
「おお! ようやく名乗らせてくれるのか。苛立ってばかりで聞いてこないから、名乗れないかと心配した」
 カラカラとした大笑いにて野太い声で伝える。
 その状況をヘルム達のように、ゲイアードも映像として後方に見せている。

「あの声は…………」
 後陣で、その声に聞き覚えがあるラゼンは、震えた。
 何事かと、シラクサがラゼンを心配する。
 驚きの表情であるラゼンを目にして、騎士が誰なのか分かっているのだと理解した。
 
 兜を取れば、顔を知ることが出来たラゼンの目からは、自然と涙が流れた。

「我が名はマルケル・セイドル。この国一の度し難き謀反人である。そんな謀反人に、後追い自刃まで行い、忠義を尽くしてくれた、同胞の騎士団が後ろに居並んでいる」
 勝ち気に染まる笑みと声。
 自分とは性格が反対と思ったのか、ヘイターは不愉快に舌打ちを行う。



「聞き間違いじゃないですよね。それとも同姓同名?」

「多分、同姓同名だと思うよ」
 と、ピートとロールが言葉を交わす。
 映像に映る人物の名。
 演劇で耳にする人物の名である。
 
 マルケル・セイドル。前王に反抗し、魔王との会談を阻止しようとし、王と対峙して命を落とした人物。
 同一人物であるならば、年齢はラゼン以上であるはずだが、兜を取った男は三十代にしかみえなかった。

「同姓同名か」
 謀反人という台詞がピートは引っかかっていたが、年齢が合わないとしてそう判断した。

「いや、あれは紛う方なきマルケル・セイドルよ。我が兄を守る最強の男にして、我ら兄弟の剣の師でもある」
 と、涙を流しながら、ピートへと語りかけるラゼン。

「ゲイアードめ。よい人選よ」
 人選という発言で、ピートは理解する。
 死霊魔術師ネクロマンサーであるゲイアードは、リューディアと同じような手法で、マルケルを自分の味方としているのだと。

「だれだよマルケル・セイドルって? 知らないね。英雄でもないだろうに」
「狭い世界で生きているから知らないのだ」
「知られていて当然と思っているお前は、過信が強すぎるな」
「確かに。だが、普通は知っているだろう。大罪人として歴史に名を残しているはずだ」
 ヘイターとマルケルが話す最中、割って入るゲイアード。

「大罪人として名は残ってません。皆さん後世では、我が身を挺して王に教えを示した国の忠臣として、伝えられています」

「なんと、それは初耳! 王よ、慈悲の塊のような御方だったが。こんな私達まで許すとは……」
 涙を流し、天を仰げば、後ろに居並ぶ騎士たちも涙を流す。
 彼等もまた、マルケルと共に王に敵対した者たち。
 生き残った者も、マルケルが紹介したように、自刃し、いまに至るのであった。

「この大恩に応えるには、我ら、この命を大いに燃やさねばな」
「「「「おお!!」」」」
「まあ、燃やす命はすでに無いがな」
「「「「ハハハハッ」」」」
 豪快な騎士団の姿。
 演劇などでは、愚直な立ち位置である事から、生真面目な人物たちだと、今を生きる者たちは想像していたが、実際は、竹を割った性格の人物ばかりであった。

「しかし主よ、どうする? 弟殿はかなりのやり手だ」
 膨大な魔力量で召喚していく亡者を、三十ほどの騎士団が加勢したところで、焼け石に水。
 加えてラゴットの勢力は増え続けていく一方である。

 ――――大きく呼気を行い、意を決したようにゲイアードは口を開く。

「少しでも仲間が楽になるように、弟に亡者として囚われた方々を解放していきたいですね」
「となれば、根源である術者を殺めないといかんが」
「ええ」
「そうか……」
 弟の命を奪う覚悟はある。それを理解したマルケルは、それ以上ゲイアードに語ることはなく、剣を握り直し、馬を竿立ちさせれば、雄々しく馬がいななき、それを合図として、ヘイターへと騎士団と共に突撃する。
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