拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-62

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「すぐに解放します」

「へ~。兄さん怒らないんだね。てっきりまた怒るかと思ってたのに」
 両親を使役する事で、ゲイアードの心を乱そうと画策したが、相対する兄は、表情を崩す事なく佇んでいた。

「怒ってはいる。腸が煮えくりかえるくらいにな。だが、怒りにまかせて動けば、また怒られるからな」

「そうそう、私に」
 笑顔でリューディアがゲイアードの頭に拳を当てつつヘイターに返せば、
「任せていてください」
 継いで兄弟の両親に体を向け、胸に拳をあてて、力強く告げた。

「た、たのむ……」
 使役されながらも、生前の力が大きかったからこそ、亡者になっても疎通が出来るだけの力を有している。

「ちょっと! 父さん、母さん。頼むじゃないよ。倒すんだよ」
 ヘイターが柏手を一つ打てば、両親は力なく項垂れて無口になる。

「さあ、行って」
 術者である息子の言葉にただ従うだけの傀儡と変われば、ゲイアードへと襲いかかる父と母。

「来るよ」

「ああ」
 リューディアが徒手空拳にて構えれば、その横でゲイアードも同様に構える。

「周囲は我らに」
 マルケルが愛馬を竿立ちさせ、剣を迫る亡者たちに向ければ、残りの騎士団が一斉に動き出す。

「あぁぁぁぁぁぁあぁあああ」
 うめき声を上げつつ、兄弟の父と母が、兄へと向かって攻撃魔法を唱える。
 父親は黒い炎。母親は黒い雷。
 挟撃の状態で唱えれば、
「任せて」
 リューディアがそれを防ぐ。

「……流石……」
 傀儡となっていてもそこは高位の死霊魔術師ネクロマンサー。魔法を止めたリューディアの諸手が大きなダメージを受ける。

「大丈夫か!」

「うん。魔法陣を展開したのに。流石だよ」
 回復魔法を唱え、瞬時に諸手の傷を治療しつつ、ゲイアードとの会話を一つ終える間には回復を終わらせていた。

「父も母も、流石にリューディアの回復の早さには対応できなかったか。次ぎを仕掛けられないでいる」
「当然。もっと褒めてくれてもいいよ」
「この戦いが終わったらな」
「ふふん♪」
 褒めてもらえるのが嬉しいようである。
 やる気を見せようと、リューディアはお返しとばかりに、両手で別々の魔法を唱えた。
 炎と雷。
 先ほど見舞われたお返しとばかりの魔法。
 しかし、それらは他愛なく防がれる。

「邪魔だよリューディア」
 そこにワイバーンの亡龍に騎乗したヘイターが迫る。
 手にはショートソードを持ち、リューディアへと振り下ろす。

「させん」

「知ってるさ。兄さん!」
 側撃により剣の動きを止められるも、体を横へと捻り、振り下ろす剣をゲイアードに変更。

「鋭いな」
「言ったろ。鍛えてるんだよ」
「努力を惜しまないのはよい事だ」
「全ては兄さんにこの思いをぶつけるためさ」
「そうか」
 考えはともかく、努力と才能は本物。
 剣を持つ手に手刀を見舞えば、人骨のデザインからなる剣を落とす。
 同時に、地面より炎を纏った鋭利な岩を打ち出し、ワイバーンの腹部に直撃させ、霧散へと導く。
 体勢を崩すも、立て直し着地すれば、すぐに自らの体から、新たな同デザインの剣を抜き出すヘイター。

「ビックリショーだな」

「僕の体は宇宙だから」
 仮面の下で口角を上げれば、剣だけでなく、腹部から腕まで伸び出て来る。

「本当にビックリショーだ」
 以前にピート達を襲った、触れれば体力に魔力を吸い尽くすドレインタッチ。
 多芸な弟だと感心すらする。
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