拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-71

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「無駄だぜ」
 そこは火龍の鱗から作られた装備。
 いくらサージャスの火球ファイヤーボールが強力であっても、一切のダメージを負ってはいなかった。

「知ってるよ。氷が邪魔だっただけ」
 言うと願望破壊の乙女ラーズグリーズを片腕だけで構える。
 振り上げられた狂乱の乙女ゲルに対して穂先は届かない。
 急接近されても対処出来る距離だと確信するダイアン。
 だが、サージャスは構え続けるだけ。
 右手でのみ持ち、左手は暇をもてあましている。

 ――――と、もてあましていた左手を小さく動かせば、
「だ!?」
 ダイアンに衝撃が走る。
 何事かと衝撃を受けた方を見れば、自身がサージャスを包囲するために作っていた氷塊が、術者である自分にぶつかってきた。

「なんだよ!?」
 突如として襲ってきた自身が唱えた魔法。
 瞬時に理解したのは、グリーと行動を共にしていたミッシェルという男が、使用していた武器をサージャスに乗っ取られたという報告があった事を思い出す。
 どれだけ実力差が開いているんだと、その時は心底で小馬鹿にしていたダイアン。

「いやはや、あのグリーってのが馬鹿そうだったから、連れも大したことないと思っていたんだがな~」
 まさか、自分の魔法すらもジャックされるとは、ショックだったようである。

「でも、動かすのに結構な魔力を使ったから、貴男の魔法は大したものだよ」

「フィローになってねえよ!」
 結局のところは実力差があるからジャックされる。擁護されれば虚しくなるだけであった。
 フィンガースナップを一つ行い、自身の展開している氷塊をこれ以上ジャックされても困ると解除。
 氷塊に氷の壁、女性像がキラキラと砕け、ダイヤモンドダストとなり、殺伐とした戦場を美しく変える。

「で、こいつもだ」
 奪われた氷塊は双剣で破壊。
 憂いは無くなった――――。とは言いきれない。
 結局のところ、サージャスはこれで自由に動けるようになった。

「やってやるさ!」
 気合いを口から出すダイアン。
 実力差があるからジャックされる。以前、勝てなかった経験もある。
 手に持つ双剣の兵仗に、望みを託すように柄を強く握りしめ、サージャスへと向かって驀地する。
 赤い軌跡を描きながらの愚直な直進。

「そういう真っ直ぐなところは嫌いじゃない」
「じゃあ、付き合おうぜ。子供は三人は欲しいな」
「だからそれはない」
「涙が出てきそうだ……」
 今度こそは狂乱の乙女ゲルの能力を見舞い、その隙に一気に勝負を決めると、最高の間合いにて双剣を振ろうとする。

「それはさっき攻略が済んでるよ」
 左の食指をダイアンへと向け、
雹弾フリーズブレット
 氷結系の使い手に対して挑発的な魔法。
 しかも使用魔法が、こういう達人だらけの場所では些末な魔法とはばかられる、初歩の中の初歩である魔法、雹弾フリーズブレットだった。
 火球フェイヤーボールよりも先に覚える魔法。
 プラムの種サイズからなる氷の球体が、勢いよく指先から放たれる。
 ――――躱すほどでもない。
 無論、生身に当たればただでは済まないが、火龍の鎧の前では意味を成さない魔法。
 頭部さえ守っていれば問題ない程度。

「おら!」
 気にも留めないと、剣を振り下ろそうとすれば、ギンッと音がダイアンの耳に激しく届く。
 同時に振り上げた剣に抵抗を感じれば、次には柄から衝撃が手に伝わってくる。
 自らの意思に逆らって、剣を振る腕が下りてこない。

「クソ!」
 ならばと、もう一振りを振れば、
雹弾フリーズブレット
 サージャスがまたも唱え、ギンッと同様の音が響く。

「マジかよ……」
 振り切ろうとする剣身に向かって、サージャスの魔法が直撃。
 衝撃で剣を完全に振る事が出来ない。
 十代半ばの少女が見せる必中の魔法技量。
 攻略済みなのは、こうやって、自分の動きを制する戦法を思いついたからか。と、感嘆の息を漏らすダイアン。
 大魔法では警戒するが、初歩も初歩ならほぼ警戒をしない。だからこそ、攻撃を止められてしまった。
 初歩だろうと、最大の警戒をすべきだったと猛反のダイアン。
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