拝啓、あなた方が荒らした大地を修復しているのは……僕たちです!

FOX4

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レコンキスタ

PHASE-82

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「ボクが受け止めるしかない!」
 手にした願望破壊の乙女ラーズグリーズならば、無効化できるかもしれないと考える。

「無茶だよ。威力が違うからね。槍が無事でも貴女が消滅してしまう」

「でも!」

「分かってるから。私に任せなさい。ここに来たのもそのためなんだから。貴女は私の前に。私が支える」
 言うと、一本のダガーを取り出す。
 見るだけでそれが兵仗だという事を理解するサージャス。
 散々見てきた乳白色で作られた兵仗。

「これが私が戦女神であるビルギット様に託された兵仗。名を秘蔵の乙女レギンレイヴ。戦女神のもう一つの切り札」

「それがですか?」
 美しい装飾が施されているが、なんとも頼りない小さなダガーに、サージャスは訝しい表情。

「そんな顔しない。貴女の持つ願望破壊の乙女ラーズグリーズと共に、切り札の存在だよ」
 二人がやり取りをする中、最大魔力を放とうとするヘルムもやり取りを見ており、鼻で笑ってしまう。
 取り出した代物がダガー一本。
 それでどう戦うのか? この巨神に対してあまりにも脆弱。
 
 自身が持つ指輪のような効果を持っていようとも、小さなダガーで巨神に挑むという考えが愚かすぎると、ヘルムは強気になる。
 切り札とされる願望破壊の乙女ラーズグリーズが何度も突き、ようやくヒビ一つ。
 対して更に小型の刃物を出されれば、脅威としての認識は薄れてしまう。

『消し去ってくれる』

「無理!」
 短く返すパルティナ。
 自分が戦女神に認められ、託された兵仗。
 こういう事態がいずれ起こるからこそ、それに備えて自分も眠りについた。
 誰にも知られる事なく、託された兵仗。
 真摯であると、自分を信じてくれた戦女神。
 いまここで、それに応えなければならないと。

「ここで終わらせないとね。こういう馬鹿げた兵仗の使い方は許されないから」
 強い語気にて前にいるサージャスへと言葉を投げかければ、
「その通りです!」
 同様の声音で返してくる。

「とりあえず――――、先に謝っておくわね」

「はい?」
 振り返る前に、背後から腰に刺されるダガー。

「え?」

「先に謝ってはおいたから――――」
 急な状況に、それを目にしていた者たちも、どう反応すればいいのか分からないでいた。
 邪神と魔王幹部を除いて――――。

『なんだそれは』
 誰よりも早く口を開いたのはヘルム。
 相対する者の乱心した行動には、流石に驚きの声であったが、
『僥倖と考えさせてもらう』
 言うと、全てが完了したようで、捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデの胸部分が、今までにない強く禍々しい光に染まる。

『そちらの切り札は、役にもたたんデッドハンド。こちらは正真正銘のワイルドカードだよ』
 巨神が宙に浮かび上がれば、光が放たれる。
 放たれた光は、捷利嚮導の乙女ブリュンヒルデの全長を優に超える光弾。

「よし、いってみようか」

「あ、はい!」
 刺されているが、痛みはない。
 刺した当人は罪悪感もなく、刺した者へと語りかける。
 刺された方は、訳を聞く事もなく返事をすれば、巨大な光弾へと向けて進み、手にした槍の穂先を光弾に定める。
 蟻と太陽のような勝負。
 全くもって勝負にならない光景。
 
 向かい合う戦力は逃げる事も出来ないと判断しているのか、立ち尽くしてただただそれを見ていた。

「信じて全力で突きなさい」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 言われるままに眼界の禍々しい、赤黒い光弾に向かって渾身の一突き――――。
 
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