592 / 604
レコンキスタ
PHASE-105
しおりを挟む
「羨ましいですか?」
殴られた頬を拭いながら、やおら立ち上がり、余裕を見せるように胸を張り、整備長を見下しつつ言ってやる。
「なめやがって! なめやがってぇぇぇぇぇぇ! 英雄は俺だというのに!」
「少なからず僕の眼前には英雄なんていないですね。いるのは煙草臭いペテンの四十代くらいかな~」
「ペテンじゃねえよ! 俺が実際に相手のトップ倒しただろうが!」
「へ~」
嘲笑。嘲笑である。
これで返答してやれば十分だろう。
「ハハ……」
空笑いだけども、この空笑いは、どうしても我慢ならない怒りから来ていると推測できる。
「ニーズィー……」
「へ?」
なんで急に自分の名前を口にするのだろうか?
「……ニーズィー・ブートガイ! テメーを殺す男の名前だ!!」
おうおう、いい歳こいて破天荒なこった。
全速力で僕に向かってくる姿は滑稽だな。
いいだろう。このヴィン海域で胆力を鍛え上げた男が相手をしてやろうじゃないか。
勝てると思わない事だな。
やる気になったので、迎撃してやろうと構えていれば、僕の前にすっと立つ人影――――。
「ピート様の上役とはいえ、お顔を殴ったあげくに殺す発言。死にたいのかしら」
一帯に冷気が走る。
あまりの寒さに両腕をさする。
シズクさんがお怒りである。
「ニーズィー殿。お下がりを」
カグラさんも参加。
姉妹さんが僕の前で僕を守る。そう! 僕をだ! なぜかって? 僕に好意を寄せているからさ。
「な、なんだよ……」
魔王軍の二枚看板が立ちふさがり、妹さんは本気で命を奪おうとしているようで、それを肌で感じる整備長の足はピタリと止まる。
「ひるむでないわ!」
と、ここで怒れる邪神が再度登場。
「戦え! 土塊! あんな普通の錆頭の土塊に妹を預けられるか!」
「鬱陶しい! 妾の行動を妨げるでないわ!」
「なぜだ!」
よう吹っ飛ぶ邪神だな……。
容赦のない右ストレートだ。
まるで邪神の我だけを見ろみたいじゃないか。
流石は兄妹だな。
「整備長さん。暴力は駄目です。折角、相手の首魁を倒したのに、ここでピートさんに怪我をさせたら駄目ですよ」
優しく諭すサージャスさん。
「ピート君は様々な場所で活躍してます。ヴィン海域の方々の参戦もピート君のおかげですし。ここは穏便に」
ロールさんも優しく続く。
後方ではシナンさんとアズナさんが、整備長に嫉妬よくないとか、格好悪いと言いつつ、冷たい視線を向けていた。
「なんだよ……」
あ、ふさぎ込んだよ。
四十代のいい歳したおっさんが地に突っ伏したよ……。
こんな上司の姿を見せられる僕の身になってほしいよ……。
「皆して、なんでそんなのがいいんだよ! ちきしょう」
あんたにだけは、そんなのとか言われたくないよ!
「殺せ! 殺せよぉぉぉぉぉぉぉぉお!! どうせおじさんはこれからも、うだつの上がらないおじさんなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
――……めんどくせえ……。
じたばたと、仰向けで暴れはじめた。
以前もこんな光景を目にしたな……。
さっきまであんたを応援していた冒険者さん達も、その姿に一気に興醒めだよ。
本当に――――、
「無様」
最終戦は、おっさんが落ち込んで暴れる姿によって、幕を下ろすかに見えたが――――、
「うるさい! 子供が起きる!!」
ケーシーさんの親バカが炸裂した大音声にて、周囲を森閑へと導いて幕を下ろすかにみえたが――――、
「いちばんうるさい!」
と、起きたレインちゃんの掌がペチンと、ケーシーさんの頬を叩いた音で幕が下りた――――。
しゃべり方に、髪と瞳の色が元通り。
魔王さんが完全に体から出ていった証拠だな。
レインちゃんがレインちゃんとして活動できるのはいい事だけども、無様なおっさんと、場を締めたレインちゃんのおかげで、美人様たちが本当に、僕に好意を寄せているのかどうかってのが中断させられてしまった……。
しかも、皆さん事後処理に動き始めたし、結局は聞けずじまいだよ……。
レインちゃんはいいとして、おっさんの邪魔だけは一生恨みとして抱いていくことをここに誓います――――。
殴られた頬を拭いながら、やおら立ち上がり、余裕を見せるように胸を張り、整備長を見下しつつ言ってやる。
「なめやがって! なめやがってぇぇぇぇぇぇ! 英雄は俺だというのに!」
「少なからず僕の眼前には英雄なんていないですね。いるのは煙草臭いペテンの四十代くらいかな~」
「ペテンじゃねえよ! 俺が実際に相手のトップ倒しただろうが!」
「へ~」
嘲笑。嘲笑である。
これで返答してやれば十分だろう。
「ハハ……」
空笑いだけども、この空笑いは、どうしても我慢ならない怒りから来ていると推測できる。
「ニーズィー……」
「へ?」
なんで急に自分の名前を口にするのだろうか?
「……ニーズィー・ブートガイ! テメーを殺す男の名前だ!!」
おうおう、いい歳こいて破天荒なこった。
全速力で僕に向かってくる姿は滑稽だな。
いいだろう。このヴィン海域で胆力を鍛え上げた男が相手をしてやろうじゃないか。
勝てると思わない事だな。
やる気になったので、迎撃してやろうと構えていれば、僕の前にすっと立つ人影――――。
「ピート様の上役とはいえ、お顔を殴ったあげくに殺す発言。死にたいのかしら」
一帯に冷気が走る。
あまりの寒さに両腕をさする。
シズクさんがお怒りである。
「ニーズィー殿。お下がりを」
カグラさんも参加。
姉妹さんが僕の前で僕を守る。そう! 僕をだ! なぜかって? 僕に好意を寄せているからさ。
「な、なんだよ……」
魔王軍の二枚看板が立ちふさがり、妹さんは本気で命を奪おうとしているようで、それを肌で感じる整備長の足はピタリと止まる。
「ひるむでないわ!」
と、ここで怒れる邪神が再度登場。
「戦え! 土塊! あんな普通の錆頭の土塊に妹を預けられるか!」
「鬱陶しい! 妾の行動を妨げるでないわ!」
「なぜだ!」
よう吹っ飛ぶ邪神だな……。
容赦のない右ストレートだ。
まるで邪神の我だけを見ろみたいじゃないか。
流石は兄妹だな。
「整備長さん。暴力は駄目です。折角、相手の首魁を倒したのに、ここでピートさんに怪我をさせたら駄目ですよ」
優しく諭すサージャスさん。
「ピート君は様々な場所で活躍してます。ヴィン海域の方々の参戦もピート君のおかげですし。ここは穏便に」
ロールさんも優しく続く。
後方ではシナンさんとアズナさんが、整備長に嫉妬よくないとか、格好悪いと言いつつ、冷たい視線を向けていた。
「なんだよ……」
あ、ふさぎ込んだよ。
四十代のいい歳したおっさんが地に突っ伏したよ……。
こんな上司の姿を見せられる僕の身になってほしいよ……。
「皆して、なんでそんなのがいいんだよ! ちきしょう」
あんたにだけは、そんなのとか言われたくないよ!
「殺せ! 殺せよぉぉぉぉぉぉぉぉお!! どうせおじさんはこれからも、うだつの上がらないおじさんなんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
――……めんどくせえ……。
じたばたと、仰向けで暴れはじめた。
以前もこんな光景を目にしたな……。
さっきまであんたを応援していた冒険者さん達も、その姿に一気に興醒めだよ。
本当に――――、
「無様」
最終戦は、おっさんが落ち込んで暴れる姿によって、幕を下ろすかに見えたが――――、
「うるさい! 子供が起きる!!」
ケーシーさんの親バカが炸裂した大音声にて、周囲を森閑へと導いて幕を下ろすかにみえたが――――、
「いちばんうるさい!」
と、起きたレインちゃんの掌がペチンと、ケーシーさんの頬を叩いた音で幕が下りた――――。
しゃべり方に、髪と瞳の色が元通り。
魔王さんが完全に体から出ていった証拠だな。
レインちゃんがレインちゃんとして活動できるのはいい事だけども、無様なおっさんと、場を締めたレインちゃんのおかげで、美人様たちが本当に、僕に好意を寄せているのかどうかってのが中断させられてしまった……。
しかも、皆さん事後処理に動き始めたし、結局は聞けずじまいだよ……。
レインちゃんはいいとして、おっさんの邪魔だけは一生恨みとして抱いていくことをここに誓います――――。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる