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プロローグ
冒険の始まり
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「おお、勇者エルジュよ、そなたの到着を心待ちにしておったぞよ! 行く先々で悪しき魔を倒し、多くの国と人々を救ってきたという話は聞いておる。この国も遥か北の山に住まう魔王によって苦しめられておるのじゃ。どうか我らのことも、その力で救ってはくれぬか――」
王の長話を聞きながら、エルジュは小さくあくびをする。
腰まで伸びた美しい金髪を後ろで束ねた、端正で涼やかな顔立ちのエルジュは、黙っていれば神々しい。しなやかな四肢を自在に動かし、魔物を瞬殺していく剣さばきは素晴らしく、敵味方から感嘆の息をつかれるほどだった。
実力はある。見た目の華やかさも人々が思い描く勇者像そのもの。しかし――。
「あー、うん、分かったから。そのつもりでここに来たんだし。まあ期待して待っててよ」
あからさまに長話にうんざりした顔で、エルジュが手をヒラヒラと振りながら返事をする。王様相手に不敬もいいところだ。
そう。勇者の資質はあるが中身はこの調子。我が道を突き進む無礼上等な唯我独尊青年だった。
王はもちろんのこと、謁見室に控える兵や宰相も呆気に取られる。そしてエルジュの後ろで跪いていた彼も、首を垂れながら開いた口が塞がらなかった。
(エルジュ……っ、お前、王様相手になんて態度を!)
あまりの怒りと込み上げてくる非難で彼の体が震え、焦げ茶色の短髪が小さく揺れる。
ギリリと凛々しい顔をしかめながら歯を食いしばり、赤みのある瞳を上向かせながら睨みつける彼は、勇者とともに旅をする戦士グリオス。同じ村で生まれ育った幼馴染でもあった。
背後からぶつけられる怒りの気配に気づき、エルジュはわずかに振り向いて肩をすくめる。そして改めて王へ顔を向け直すと、恭しく跪いて厳かに告げる。
「この勇者エルジュ、必ずやこの地に平和をもたらしましょう。皆が心から笑い、安心できる時を必ずや取り戻して参ります」
「う、うむ。頼んだぞよ、勇者エルジュ」
王の声から安堵の気配が滲んだことに気づいたグリオスは密かに息をつき、それを察したエルジュは目だけを隣に向け、クスリと笑った。
王の長話を聞きながら、エルジュは小さくあくびをする。
腰まで伸びた美しい金髪を後ろで束ねた、端正で涼やかな顔立ちのエルジュは、黙っていれば神々しい。しなやかな四肢を自在に動かし、魔物を瞬殺していく剣さばきは素晴らしく、敵味方から感嘆の息をつかれるほどだった。
実力はある。見た目の華やかさも人々が思い描く勇者像そのもの。しかし――。
「あー、うん、分かったから。そのつもりでここに来たんだし。まあ期待して待っててよ」
あからさまに長話にうんざりした顔で、エルジュが手をヒラヒラと振りながら返事をする。王様相手に不敬もいいところだ。
そう。勇者の資質はあるが中身はこの調子。我が道を突き進む無礼上等な唯我独尊青年だった。
王はもちろんのこと、謁見室に控える兵や宰相も呆気に取られる。そしてエルジュの後ろで跪いていた彼も、首を垂れながら開いた口が塞がらなかった。
(エルジュ……っ、お前、王様相手になんて態度を!)
あまりの怒りと込み上げてくる非難で彼の体が震え、焦げ茶色の短髪が小さく揺れる。
ギリリと凛々しい顔をしかめながら歯を食いしばり、赤みのある瞳を上向かせながら睨みつける彼は、勇者とともに旅をする戦士グリオス。同じ村で生まれ育った幼馴染でもあった。
背後からぶつけられる怒りの気配に気づき、エルジュはわずかに振り向いて肩をすくめる。そして改めて王へ顔を向け直すと、恭しく跪いて厳かに告げる。
「この勇者エルジュ、必ずやこの地に平和をもたらしましょう。皆が心から笑い、安心できる時を必ずや取り戻して参ります」
「う、うむ。頼んだぞよ、勇者エルジュ」
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