そこにワナがあればハマるのが礼儀でしょ!~ビッチ勇者とガチムチ戦士のエロ冒険譚~

天岸 あおい

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VS魔王

エルジュの提案

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 ギュッと魔王を上から抱き締め、インキュバスが顔を伏せる。
 ちょうど唇が魔王の額に当たる角度。想いが溢れ出ているこの二人を瞬殺すれば、むしろこっちが悪党のような気がしてグリオスは顔をしかめる。

 相手は魔王にインキュバス。
 情けをかけて生かせば、拠点を移してまた人間に害を与えることになる。

 哀れだと思っても、トドメを刺さなければ――。

 自分の調子を崩さないエルジュなら、迷わず二人を倒してしまう。
 このままただ見ていれば事は終わる。だが……。

 迷いを滲ませてしまうグリオスの前で、エルジュが動く。

 手が挙がり、剣の柄を――通り過ぎ、ポンッ、と手を叩いた。

「良いこと考えた! 魔王がサキュバスの長の所に行かなくてもいいなら、人に悪さする必要ないんだよね? 本当はとことん二人の世界に入ってイチャつきたいんでしょ?」

「……あ、ああ。まあ、それはそうだが……」

 困惑しながら顔を上げたインキュバスへ、エルジュがビシッと力強く親指を立てて断言した。

「じゃあオレがサキュバスの長を倒しちゃうから! 二人は迷惑にならない所で思いっきりイチャついてればいいから」

 まさかの魔王を倒さないという選択に、グリオスは目を剥き、魔王とインキュバスは息を引いてエルジュを凝視する。

「な、なぜ情けをかける? 俺のような若輩の魔王は倒すに値しないということか?」

「違うよー。だってオレとグリオスがちゃんと結ばれたの見てた証人だから。それにさ、またグリオスが不安がってたら、この日のことを再現する手伝いをしてもらいたいから」

 ま、待て、エルジュ……お前が情けをかけられるまでに成長したのは嬉しいが、再現はやめろ。勘弁してくれ。あれをもう一度やるのは絶対に心が耐えられん……っ。

 顔から血の気を引きながら、グリオスはワナワナと手を伸ばして訴えようとする。

 しかし振り向いたエルジュは、それはもう眩く屈託のない笑顔でグリオスに告げる。

「さあ善は急げ。今からササッと行って、プチッとやりに行こうよグリオス! 先にやったほうが、後で心置きなくヤれるもんね。場所はどうする? 宿をしばらく貸し切りも良いけれど、サキュバスの長の住処を奪って半年くらい籠ろっか。エッチに便利な道具とか薬とかもありそうだし……うん、それがいい! 前にグリオス、節約大事って言ってたしね」

 一人で話しながら、エルジュがどんどん妄想を暴走させていく。

 ……ヤバい。エルジュのせいで人をやめさせられてしまいそうだ。

 めくるめく快楽漬けの日々が迫ってくる足音を、グリオスは聞いてしまう。
 頭は青ざめるばかりなのに体の奥は甘く疼いてしまい、もう一生エルジュから逃れられないことに息をつくばかりだった。
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