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二話 初めての戦

●華候焔という男2

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 鮮やかに俺を組み敷き、体を被せた華候焔が妖しく笑う。

「よく分かっているようで何よりだ。誠人、お前は弱い。俺がいなければ、今頃は敵に捕まって凌辱三昧……悔いすら吐けず、完全な敗者に成り果てていた」

「ああ、そうなっていたと思う……この恩がどれだけ大きいか、分かっている。感謝してもし切れない。それでも……俺は、この勝利を心から喜びながら身を捧げるなんてできない」

 俺は華候焔の目から逃げず、見つめ返す。

「華候焔……好きにやってくれ。何をされても恨みはしない。いっそ手酷いくらいが、今の俺にはありがたい」

 自分の未熟さは分かっているつもりだった。
 なのに実戦を一度味わっただけで、自分の強さの認識が甘かったことを思い知った。

 今からされることは、絶対に忘れない。

 己を過信していた戒めとして、すべてを受け入れてやる。

 色事の艶やかさなど無視し、俺が戦前よりも重い覚悟を秘めていると――。

「ああ……やっぱり、だ。見込んだ甲斐があった」

 ――華候焔の目に熱が宿る。
 今までよりも激しく、貪欲に飢えた眼差し。

 初めてを優しく手解きしようだなんて気が一切ないことを肌で感じた。

「もし誠人が俺に感謝しかなかったら、一回抱いて、寝ている間にさっさと立ち去っていた。完全に屈したヤツなんか相手にしてもつまらんだけだ」

 華候焔の手が俺の顎を掴む。
 そして唇の先が掠り合うほど顔を近づけ、吐息混じりに囁く。

「いいぞ、誠人……弱いことを受け入れるな。足掻け。足掻いて、足掻いて、強くなれ……そんなお前を快楽で悦ばせ、俺なしでいられない体にしてやる……好きなんだよ、強者を俺に堕としてやることがな」

 ペロリ、と華候焔の舌先が俺の唇を舐め上げる。

「手酷くされたいようだが、加減はしない。しかし荒くは抱かんぞ? 丁寧に俺を教えて、慣らし、甘くよがらせてやろう……良い物を持ってきた。今、飲ませてやる」

 軽く体を離し、華候焔が枕元を弄る。
 手に掴んだのは小さな褐色の瓶。

 口で栓を開けると華候焔は中身を口に含む。
 そして俺に唇を重ね、目眩を覚えるほど甘い蜂蜜のような液体を飲ませてきた。

「ん……ぐ……」

 早く飲めと促すように、華候焔の舌が俺の口内をねっとりと舐め回す。

 飲みにくい粘り気が互いの唾液で緩和され、俺の喉へと落ちていく。

 甘くて、熱くて――腰の奥に小さな火がつくのを感じる。

 華候焔の舌先が、ぬるりと俺の舌に絡まる。
 かすかな火が一気に大炎となって、身内を焦がした。

「……ッ!」

 
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