65 / 345
四話 追い駆ける者、待つ者
犠牲ありきの作戦
しおりを挟む戦の場は、昨日まで敵陣が宿営地にしていた所からさほど離れていない平原になった。
先の戦で俺が山を利用して奇襲をかけたことを警戒しての配置だろう。
敵をこちらに追い込むと華候焔は言っていたが、障害が何もない現状で上手くいくのだろうか? と心配していたが――。
「始まりましたねー……あっ、華候焔と顔鐡が先頭を走って、隊を率いてますねー。うわー、二人とも凄いですよー! 敵兵が片っ端から吹っ飛んでますー」
小高い丘で待機する俺と一緒に戦を眺めていた白澤が、耳元で興奮気味に騒ぐ。
言われなくても、土煙から何人も人が飛ばされている光景が視界に入り、二人の猛将ぶりに俺は感嘆の息を吐くしかできなかった。
「あれだけ将に勢いがあると、敵の士気は大きく下がるだろうな」
「でしょうねー。だから早く決着をつけたがって、誠人様を狙い始めるかと――あ、言ってるそばから動き出しましたよー」
言われて目を細めて戦況を見れば、小さな黒い蠢きがこちらを向き、近づいてきているのが見える。
少しずつ俺のところまで、敵兵の怒声や移動からの地響きが届き、大きくなっていく。
間もなく衝突が始まると思い、俺は馬で丘を下りかける。と、
「領主様、急報です! こちらの手紙を、どうぞご覧になられて下さい」
兜を深々と被った一人の騎兵が丘を駆け上がり、俺に厚手の紙で綴られた手紙を運んでくる。
すぐに受け取って中身を確かめれば、そこには『才明より』と最初に書かれていた。
『そちらの作戦を利用し、すべての隊で集中して領主を討つ流れに持っていきました。誠人様のほうではなく、領主を演じている他の将の元へ行くように――』
敵隊は分散されず、俺の元には来ない。
――つまり才明の隊を除いたすべての敵兵が、英正の元へ向かう。
俺の顔から血の気が引いていく。
「どうされましたか、誠人サマー?」
白澤の声に俺は我に返り、戦意を高める。
「……英正が危ない! 今すぐ救援へ向かう」
「危険ですよー! 救援は華候焔たちに任せて、誠人サマは深入りせずに身を守ることに専念――」
「それじゃあ間に合わない。敵は一気に決めるつもりだ。今動かないと英正がやられる!」
俺は白澤の意見を聞かず、勢いよく丘を下りていく。才明からの手紙を握りしめながら――。
『――将を一人犠牲にすることになりますが、彼の分は私の智力で補います。彼らがその者を喰らう隙に、我らで叩きましょう』
最初から犠牲ありきの作戦だったとは。
不利をひっくり返すためには、非情も必要な時があることくらい分かっている。
だが、それは今じゃない。
すべてを言わなかった才明を恨みながら、私は隊を動かした。
23
あなたにおすすめの小説
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
過保護な父の歪んだ愛着。旅立ちを控えた俺の身体は、夜ごとに父の形で塗り潰される
中山(ほ)
BL
「パックの中、僕の形になっちゃったね」
夢か現か。耳元で囁かれる甘い声と、内側を執拗に掻き回す熱。翌朝、自室で目覚めたパックに、昨夜の記憶はない。ただ、疼くような下腹部の熱だけが残っていた。
相談しようと向かった相手こそが、自分を侵食している張本人だとも知らずに、パックは父の部屋の扉を開く。
このお話はムーンライトでも投稿してます〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる