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六話 将の育成は体を張って

深夜の献身

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   ◇ ◇ ◇

 ――ぐらり、と。脱力した俺の体が揺れる。

 眠りの底から浮上したばかりの意識は朦朧としていて、何かされていると分かっていても体を動かすことはできない。

 上体を起こされ、背中を濡れた布で拭かれる感触。
 俺を前から抱き留めながら、事後の淫らな汗を拭ってくれる手つきが優しい。安堵を覚えて、このまま再び眠りにつきたくなってしまう。

 ふと、小さなため息が聞こえてくる。
 心配してくれている気配に紛れ、苦しげな色も覗いている。

 前もこんな風に、事後でボロボロになった俺を清めてくれていたのだろうか。

 まぶたが重くて目を開けられないが、姿を見ずとも誰が俺を拭いているのかは分かった。

 早く目を覚まして声をかけなければ……。
 どうにか意識を浮上させようとしている最中、ぴたりと動きが止まる。

 そして素早く俺を横たわらせると、疾風のごとくな勢いで部屋を出てしまう。

 バタバタと乱れた足音。時折ドンッ、と壁に何かがぶつかる音。
 しばらく騒々しさが続き、静けさが戻ってくる。

 再び部屋へ彼が入ってくる頃には、俺は目を開けてその姿を確かめることができた。

「……何かあったのか、英正?」

 まだ辺りは暗い。深夜の真っ只中なのだろう。
 才明に抱き潰されてから時間がさほど経っていないのだろう。体を起こそうにも力が出ず、俺は仰向けになったまま顔だけを英正へと向ける。

 燭台の灯りに照らされた英正は、顔をしかめ、バツが悪そうにしていた。

「起こしてしまいましたか……申し訳ありません。今しがた刺客がこちらへ入り込み、領主さまのお命を狙おうとしておりました。先ほど捕らえましたので、どうかご安心を」

「英正がやってくれたのか。ありがとう。昨夜も俺の世話をした後、寝ずの番をしていたのだろ? 連日気を遣わせて済まない」

「もったいないお言葉、ありがとうございます。まだ清め終えておりませんので、領主さまの御身に触れることをご容赦下さい」

 言い終えて英正は寝台の脚元にしゃがみ、布を濡らして固く絞る音を立てる。

 起きている状態で事後の始末をしてもらう……気恥ずかしさと気まずさが交互に浮かび、なんとも落ち着かない。俺はたまらず英正へ手を差し出した。

「じ、自分でやるから。拭くものを俺に貸してくれ」

「……いえ、領主様の手を煩わせる訳にはいきません。私が最後までやらせて頂きます」

 英正はすぐに立ち上がると、手にした布を俺の下半身へ伸ばしていく。
 太腿の内側へ触れた瞬間、ほのかに冷たい感触に思わずビクンッと俺の体が跳ねた。
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