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六話 将の育成は体を張って

望む褒美は……

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「華候焔殿、今回は新しく登用した者たちに機会を与えることが目的です。今さら貴方が力を示さなくとも良いのでは?」

 この中で白澤を除いて唯一華候焔と対等に語れる才明が、苦笑しながら指摘する。

 返ってきたのはニヤリとした不穏な笑み。素直に話を受け入れる華候焔ではなかった。

「俺も出る。比較が必要だろ? 前から登用されている俺と新参者。どっちが使えるかを誠人様に知って頂こうではないか」

「いえ、貴方の強さは疑いようがありませんので。今回はお休み下さい」

「休める訳がないだろ。そんなことをしたら褒美が貰えない……誠人様からの特別な褒美を、入ったばかりの者たちに簡単に渡したくはない」

 もしかして羽勳に俺が狙われないよう、先に手柄を取って俺を独り占めする気か?
 思わずハッとなってしまった俺に華候焔が気づき、パチリと片目を閉じる。

 ……その気持ちは嬉しいが、公にされると……恥ずかしいんだが……。
 心の中で頭を抱えていると、羽勳が小さく首を横に振った。

「私は――いえ、私たちが求める褒美は、華候焔殿が望まれる褒美とは違います」

「なんだと? じゃあ何を望むんだ?」

 華候焔の問いかけに、羽勳は隣の将へ視線を送る。
 それはもう熱く艶めかしい眼差しで。

「この表涼との一夜を褒美に頂きたい。どんな財宝や領地も、彼の前では霞んでしまう……」

 いつの間に接点を持ったんだ? しかも表涼は将として作ってから一日も経っていない。この短期間でどうやって羽勳を虜にしたんだ?

 よく見れば羽勳だけでなく、新しく登用した将たちの誰もが熱い目で表涼を凝視している。
 だが表涼だけは目に熱を宿さず、色香だけを漂わせていた。

「昨夜、親睦を取ろうと思い、彼らの部屋を回っただけなのですが……」

「よく言うな、表涼。散々人を誘惑して煽ってその気にさせておきながら、何もさせずに帰ってしまいおって……昨夜、どれだけお前が欲しくてたまらなかったと思っている?」

「さあ? 遊び慣れているお方にそう言われましても、ね」

 新規に登用した将たちの空気がにわかにざわつく。
 まさか表涼が彼らを誘惑して、興味を俺から逸らしてくれたのか?

 異様な雰囲気に呑まれそうになっていると、才明が調子を崩さず場を仕切る。

「良かったではないですか華候焔殿。これなら貴殿が参戦せず、誠人様を近くで守るという名目で城に残っていれば、その分の褒美が与えられることになりますね」

「ほう。そういうことなら城に残って勝利の朗報を待ってやろうではないか」

 ……俺の意思を確かめずに勝手に決めないでくれ。

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