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六話 将の育成は体を張って

一方的な結果

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 領主なのに俺の人権は相変わらずないんだな、と密かに嘆いている俺をよそに、才明はさらに話を進めてくれた。

「ではこれより誠人様と出兵の選定を行いますので、皆は今しばらく外でお待ちになられて下さい」

 才明に促されて将たちは立ち上がり、各々の足取りで部屋を出ていく。

 残ったのは今までの将と表涼。
 他の者たちが立ち去ったのを見計らって表涼が俺に近づき、蠱惑の笑みを浮かべた。

「実は……領主様が私に教えてくれている最中、彼らの所を回っていました」

「……っ! 感覚が共有されているんだよな? よ、よく歩き回れたな」

「快感の波がありましたので、浅い時に合わせて動き、深い時はさすがに歩けないので誰かに寄りかかり、身悶える私を支えてもらいました。そうしたら皆がその気になってくれました」

 表涼……恐るべし。
 とんでもない娼夫を作り出してしまったのかもしれないと思っていると、表涼の笑みが優しくなった。

「私は皆に比べれば非力です。こういったことしか能はありませんが、領主様の負担を軽くし、心穏やかでいられるために、私は私の戦いをして参ります」

 領土内の兵から将に引き上げた者は、在野から登用するよりも忠誠心が高くなる。
 表涼は、誰が相手でも体を張ってくれると断言してくれたのだ。本来なら俺がすべて受け入れなければならないことを――。

 淫らな果実の中にある誠実さに、思わず俺は表涼に頭を下げていた。

「ありがとう、表涼……これから辛い思いをさせてしまうが、よろしく頼む」

「そんなに重く考えないで下さい、領主様。私は心置きなく快楽に浸ることができて嬉しいのですから。昨夜も途中で目が覚め、あまりに我慢できなくて自分で解し、領主様に強請ってしまいましたし」

 英正に体を清めてもらった時の、あの異常な感触は表涼のものだったのか!
 托生の腕輪……俺からだけでなく、表涼からの刺激も共有してしまうのか……。

 真夜中の謎が解明されて少し安堵はしたが、その実情に泣きたくなってくる。しかも、

「ふむ。つまりそれを使えば、表涼が受けている快感が誠人様に伝わって乱れてくれるということか」

 ……華候焔が気づかなくていいことに気づいてしまった。

 ニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべながら視線を送られ、隙あらばいつかやってやろうという魂胆が見えてしまう。

 こんな時に白澤がいれば、即座に説教を始めて華候焔の暴走を止めてくれるのだが、肝心な時に居ない。

 どこに行ったんだろうかと気になったが、才明に「では出陣する将を選んでいきましょう」と話を振られ、俺の意識はすべて次の戦へと向いた。



 俺から初めて仕掛けた戦は、一方的に敵を追い払う展開で終わった。

 ほぼ無傷で手に入れた砦で勝利の宴を行い、翌朝は出陣した将のほとんどが疲労困憊でぐったりとしていた、と報告を受けた――表涼を除いては、という説明を受けた時点で、俺はすべてを察して苦笑するしかなかった。

 そして本城を守ったという名目で、いつもの面々に俺は体で褒美を与えた――次の強化合宿の際のプレイは手加減して欲しいという条件を呑む代わりに、今日は好きにしていいという提案をつけて。

 三人三様だったが、行為が始まれば全員手加減はしてくれなかった。華候焔と才明はもちろん、英正までも――。

 唯一、俺の夜の激務に同情してくれている顔鐡は、今回と次回の褒美をまとめて後日に回してくれと情けをかけてくれた。見た目の無骨さとは裏腹の気遣いと優しさに、心から救われた。

 だがこの間、白澤は姿を見せてくれなかった。

 ふと行方不明になってしまった坪田と重なり、不安を覚えてしまう。
 後ろ髪を引かれる思いはしたが、現実を進めなければいけなくて、俺は白澤に会えないままゲームを中断した――。
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