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九話 新たな繋がり

比べ合い

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   ◇ ◇ ◇

 前回落とした城からさらに北上した所に、狙うべき太史翔の持ち城があった。

 規模は俺が拠点とする城と同程度。
 待機している将の数は十数人。前に城を落とされ、次にここを攻められると読んで、将を集めたらしい。

 小高い丘から敵の城を眺めていると、兵士の格好をした才明が馬上にいる俺の足元へ近づき、話しかけてきた。

「恐らくは太史翔が抱える将の中でも、強者が集まっているかと思います。何度も立て続けに負けて、内外の評価がひどく落ちておりますから」

「そんな状態なのにこの人数で、本当に大丈夫なのか……?」

 俺は隣の華候焔をチラリと見やる。俺同様に馬上に乗り、恐れ知らずな笑みを浮かべながら城を眺めている。

 フッ、と華候焔から小さな笑いが零れた。

「大丈夫も何も、直接ぶつからないからな。誠人様、あそこの小さな丘が見えますかな? 我らが今から向かう場所です。そして、それ以上は城に近づきませぬ。落城するまでは」

 華候焔が指さした丘は、なだらかで上りやすそうな、なんの変哲もない丘。そこを超えれば延々と草が茂った地が続いており、障害なく城を臨むことができる。

 本来ならば城から見通しが良く、隠れることができない地。隊を隠すことができなければ、奇襲を仕掛けるのは難しい。正攻法ならば、より武力の高い者が勝者となるだろう。

 しばらく周辺の景色を眺めてから、俺たちは進軍して目的の小丘へ到着する。
 俺たちの動きに気付いて城から兵士たちが出てくる。次々と騎馬隊や歩兵隊が城壁の門から現れ、人の壁となって門の前に並ばんでいく。

 その様子を眺めながら、華候焔は普通の大きな弓を手にし、戯れに弦を弾いた。

「さて、と。まずは比較できるように普通の弓からやろうか」

 近くの兵士から矢を受け取ると、華候焔は軽々と弦を引いて構えを取る。
 無駄のない動きと姿勢。戦国絵巻に描かれそうな姿に、俺は目を奪われてしまう。

「普通ならこの距離で射ったとしても、城どころか手前の兵たちにすら届かん。だが技を使えばこの通り――」

 シュゥゥゥゥッッ、と矢に光が集まっていく。
 全体に光が宿ったかと思えば、そこからさらに矢尻へと光が凝縮されていく。

 そして矢先へすべての光が集まり、点となった瞬間――バシュッ! 矢が華候焔の手から離れた。

 小さな輝きはすぐに見えなくなり、矢は直線の軌跡を描いていく。

 失速する気配はなく、真っ直ぐ、真っ直ぐ――ゴカッ。城の屋根の飾りが崩れたのが見えた。
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